【再掲】第12話 サービス精神
◇
食券機を前にして、ウィラのなんともかわいい行動を目の当たりとすれば、自然とフォローしたくなるのは狐顔美人よろしく、動物的な可愛さからか?
少し申し訳なさそうにシュンとしている様は、思わず撫でてしまうぐらいにかわいいものだ。
「よしよし、ウィラ、これでひとつ賢くなったな?」
「ナギ、ごめんな……せやけどうち、犬とちゃうで?……いや、あんた撫でるの上手いから嫌とちゃうんやけどな」
「あれ、お前さっき狐の化身って言ってなかったっけ?」
「いや、おケツネ様はこうもいかへんやろ?」
「「HAHAHA!」」
そんなやり取りをしながら、食券機を後にして食堂の中へと入れば、受け渡しカウンターの奥の調理場から漂う、食欲を誘う香りがたまらなく、腹時計は殊更にくるくると踊り出すのさ。
食券を握りしめ、お昼時の賑わいを見せる学食の行列に加わったあたしとウィラは、お行儀よく順番を待つ間、再び会話に花を咲かせた。
「ナギ、さっきはありがとな……せやけどあんた、どんだけ育ち盛りなんや? 二杯で足りるんかいな?」
「ああ、おかげ様で制服のサイズが合わなくなったぜ?」
「「HAHAHA!」」
お行儀よく順番を待って並んではいるものの、ウィラと会話すればこの通り……内容については、遠慮なんてありやしない。
全く、これじゃあ前言撤回かな?
「ナギ、そろそろうちらの番やで?」
時間が経つのもあっという間で、気が付けば受け渡し口を目の前にすれば、対面の向こう側、厨房で忙しなく動いていたおっちゃん、おばちゃん達はあたしの大きさに驚き、ほんの一瞬だけ時空が歪んだ。
「ナギ、これ渡せばええんか?」
振り返ったウィラがあたしを見上げ、上目遣いをしながら食券を見せつける様が面白く、ここはあたしが手本を見せないとね?
ちょっと順番が前後するけど、あたしはウィラを差し置き二枚の食券を受け渡し口においた。
一匙のジョークを添えてね?
「ああ、あたしはきつねうどんを二つ……見ての通りで育ち盛りだからね?」
「「「「「HAHAHA!」」」」」
「うちもケツネうどんで……あ、うちはひとつでええからな?」
「「「「「HAHAHA!」」」」」
もう一匙おまけ付き、食堂のおっちゃん、おばちゃん達が大笑いすれば歪んだ時空は元通り。
再び昼時の戦場さながらの賑わいを見せ、提供されたきつねうどんは……おい、あたしは確かに「見ての通りで育ち盛り……」って言ったけどさ、わざわざ大盛りにサービスしてくれるなんて太っ腹だな?───。
◇
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