【再掲】第8話 狐顔美人の日独系関西人








  入学式が終わり、教室へと案内されたあたしたちは、五十音順で予め決められていたであろう席へとかける。


 あたしの後ろの席にかける奴には申し訳ないけど、これは五十音順の出席番号とやらの欠陥だ。


 あたしの愛する両親から授かったギフトはさ、あたしからしても想定外なんだぜ? HAHAHA!


 入学式の時間が押していたからか、特にこれといった交流をするまでもなく、冴えない担任の先生の話を聞き流しながら、それぞれの自己紹介の時間がやってきた。


 同じクラスとなった、あの狐顔美人の関西人がこっちを見ている……ああ、どうも、また会ったな?


 お前、えらくご機嫌そうだね? HAHAHA!


 で、あいつは出席番号的には"あ行"にあたるのかな?


 クラス全員、出席番号順から始まる自己紹介だが、人によっては苦痛でさっさと終わらせたいものでもあるね。


 こちらも出来れば巻きで頼みたいけれど、謎の狐顔美人の関西人だけはさ、どうも興味が湧くから刺激的なのを頼むぜ?


 出席番号、五十音順よろしく『あ』から始まり、『い』から始まる奴、『う』から始まる人……さて、いよいよ謎の狐顔美人の関西人の出番か。


 お前、名前はなんて言うんだい?

壇上に上がった彼女は早速、黒板にアルファベットで自分の名前を書き出し……アルファベット!?


『Willa・Von=Neumann』


 ………ん?………ウィラ・フォン=ニューマン?


 え、さっきと言うか、朝のあれといい、入学式のあれといい、思いっきり関西弁じゃなかった?


 そもそも、なんでこいつが"あ行"扱いなんだよ!?


 ファーストネームとファミリーネームを間違えているだろ!?


 名簿作った奴に一言言いたい……いくらなんでも適当すぎるだろ!?


「Hi, Freut mich! Ich bin Willa・Von=Neumenn. Mein Vorname ist Willa, Mein Nachname Neumenn(やあ、初めまして! うちな、ウィラ・フォン=ノイマン言うんや。ウィラが名前やで。ノイマンは性やからな)」


 急にドイツ語?…で自己紹介が始まる、なんて荒唐無稽な想像をした奴はいるかい?


 あたしは想像すらしてなかったし、ああ…おかげでさっきまでの眠気が全部ぶっとんだぜ? HAHAHA!


 で、謎の狐顔美人の関西人の名前は、ウィラ・フォン=ノイマン…ね。


 いや、誰がそんなことになると予想した?


 少なくともあたしの中ではさ、彼女の名前がアルファベットの時点で大穴だよ。


 ああ、なんだ、あたしのクラスは国際科かなんかだったっけ?


 確かカリキュラムは至って普通だったと思うけど、ドイツ語も必修なの?……いやいや、入る教室を間違えたかな?


 おかしいな、机にはあたしのフルネーム、『香坂 凪沙』って貼られているし、もしもただのジョークだったとしたら、あとであいつの机を調べてみよう。


 謎の狐顔美人の関西人(日系ドイツ人?)の自己紹介は、こちらを置いてけぼりにしながら進行し、ようやく一息ついたタイミングで……。


「…なんてな? うち、日本語大丈夫やからみんな安心して話してな?」


「HAHAHA!」


 最後の最後で日本語、この不意打ちにあたしが大笑いしたのは言うまでもない。


 刺激的な自己紹介に期待したけど、これは予想以上で最高だったぜ?


 ウィラ・フォン=ノイマン、お前をどう呼べばいいか、それは後のお楽しみだけどさ、ますます興味が湧いてきたぜ?


 他の奴の自己紹介はどうでもいい、聞き流しながらますます謎の深まる、関西弁をしゃべる狐顔美人の日系ドイツ人が気になって仕方ない。


 ずっと彼女を注視すれば、再び目が合い……笑ったのだ。


 ああ、なんかかわいいな? HAHAHA!


 あ? 次はあたしの番だって?

はいはい、壇上に立てばさ、あたしは2m越えるぜ? HAHAHA!


「香坂 凪沙(コウサカ ナギサ)だ。あたしのことはナギって呼んでくれ。以上!」


「早っ!?」


 ああ、関西人らしい突っ込みだぜ。


 スカートとスピーチは短い方がいいって、さっきのお前だったらわかるだろ? HAHAHA!───。







  ───登場人物紹介。



 Name / ウィラ・フォン=ノイマン


 Age / 15歳


 Date of birth / 19XX年12月23日生まれ


 The zodiac / 山羊座


 Gender / 女


 Blood type / O型


 Birthplace / 日本国


 Height / 168cm


 Hobby / お散歩、読書(特に絵本)、寝ること


 Favorite food / きつねうどん、麺類全般




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