【再掲】第8話 狐顔美人の日独系関西人
◇
入学式が終わり、教室へと案内されたあたしたちは、五十音順で予め決められていたであろう席へとかける。
あたしの後ろの席にかける奴には申し訳ないけど、これは五十音順の出席番号とやらの欠陥だ。
あたしの愛する両親から授かったギフトはさ、あたしからしても想定外なんだぜ? HAHAHA!
入学式の時間が押していたからか、特にこれといった交流をするまでもなく、冴えない担任の先生の話を聞き流しながら、それぞれの自己紹介の時間がやってきた。
同じクラスとなった、あの狐顔美人の関西人がこっちを見ている……ああ、どうも、また会ったな?
お前、えらくご機嫌そうだね? HAHAHA!
で、あいつは出席番号的には"あ行"にあたるのかな?
クラス全員、出席番号順から始まる自己紹介だが、人によっては苦痛でさっさと終わらせたいものでもあるね。
こちらも出来れば巻きで頼みたいけれど、謎の狐顔美人の関西人だけはさ、どうも興味が湧くから刺激的なのを頼むぜ?
出席番号、五十音順よろしく『あ』から始まり、『い』から始まる奴、『う』から始まる人……さて、いよいよ謎の狐顔美人の関西人の出番か。
お前、名前はなんて言うんだい?
壇上に上がった彼女は早速、黒板にアルファベットで自分の名前を書き出し……アルファベット!?
『Willa・Von=Neumann』
………ん?………ウィラ・フォン=ニューマン?
え、さっきと言うか、朝のあれといい、入学式のあれといい、思いっきり関西弁じゃなかった?
そもそも、なんでこいつが"あ行"扱いなんだよ!?
ファーストネームとファミリーネームを間違えているだろ!?
名簿作った奴に一言言いたい……いくらなんでも適当すぎるだろ!?
「Hi, Freut mich! Ich bin Willa・Von=Neumenn. Mein Vorname ist Willa, Mein Nachname Neumenn(やあ、初めまして! うちな、ウィラ・フォン=ノイマン言うんや。ウィラが名前やで。ノイマンは性やからな)」
急にドイツ語?…で自己紹介が始まる、なんて荒唐無稽な想像をした奴はいるかい?
あたしは想像すらしてなかったし、ああ…おかげでさっきまでの眠気が全部ぶっとんだぜ? HAHAHA!
で、謎の狐顔美人の関西人の名前は、ウィラ・フォン=ノイマン…ね。
いや、誰がそんなことになると予想した?
少なくともあたしの中ではさ、彼女の名前がアルファベットの時点で大穴だよ。
ああ、なんだ、あたしのクラスは国際科かなんかだったっけ?
確かカリキュラムは至って普通だったと思うけど、ドイツ語も必修なの?……いやいや、入る教室を間違えたかな?
おかしいな、机にはあたしのフルネーム、『香坂 凪沙』って貼られているし、もしもただのジョークだったとしたら、あとであいつの机を調べてみよう。
謎の狐顔美人の関西人(日系ドイツ人?)の自己紹介は、こちらを置いてけぼりにしながら進行し、ようやく一息ついたタイミングで……。
「…なんてな? うち、日本語大丈夫やからみんな安心して話してな?」
「HAHAHA!」
最後の最後で日本語、この不意打ちにあたしが大笑いしたのは言うまでもない。
刺激的な自己紹介に期待したけど、これは予想以上で最高だったぜ?
ウィラ・フォン=ノイマン、お前をどう呼べばいいか、それは後のお楽しみだけどさ、ますます興味が湧いてきたぜ?
他の奴の自己紹介はどうでもいい、聞き流しながらますます謎の深まる、関西弁をしゃべる狐顔美人の日系ドイツ人が気になって仕方ない。
ずっと彼女を注視すれば、再び目が合い……笑ったのだ。
ああ、なんかかわいいな? HAHAHA!
あ? 次はあたしの番だって?
はいはい、壇上に立てばさ、あたしは2m越えるぜ? HAHAHA!
「香坂 凪沙(コウサカ ナギサ)だ。あたしのことはナギって呼んでくれ。以上!」
「早っ!?」
ああ、関西人らしい突っ込みだぜ。
スカートとスピーチは短い方がいいって、さっきのお前だったらわかるだろ? HAHAHA!───。
◇
───登場人物紹介。
Name / ウィラ・フォン=ノイマン
Age / 15歳
Date of birth / 19XX年12月23日生まれ
The zodiac / 山羊座
Gender / 女
Blood type / O型
Birthplace / 日本国
Height / 168cm
Hobby / お散歩、読書(特に絵本)、寝ること
Favorite food / きつねうどん、麺類全般
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