【再掲】第2話 Where are you from?







  偶然が重なり、交差して描き続いていくように、またしてもあたしに転機が訪れた。


 あたしは他県から越境してきたものだから、前日には観光も兼ねて家族と一緒に過ごし、ちょっといいホテルのディナーを囲み、一家団欒の時を楽しんだ。


 面接の練習にも最後まで付き合ってもらったし、家族の温かさ包まれながら十分な睡眠時間を得られたことで、入試当日の朝を迎えて少し緊張するものの、コンディションそのものは悪くない。


 朝食もしっかり食べれたことで、準備は万端だ。


 家族に見送られて会場入りしたそのあとは、ただ順番を待つだけだ。


 待っている間、退屈しのぎに色とりどりの制服を身に纏った、あたしよりもおチビさんな奴らが緊張しているようだったから、ジョークで場を和ませれば、笑いと共にジョークの通じない数人に睨まれたぜ? HAHAHA!


 おいおい、アメリカンジョークがよくわからないからって、"オチ"でも教えて欲しいって?


 オチなんてねえよ、あったら縁起悪いだろ? HAHAHA!


 ウケなかったから滑っているって訳でもねえし、アメリカンジョークなんてさ、よくわからなくても笑えばいいんだよ? OK? HAHAHA!


 さ、あたしの緊張はほぐれたことだし、あとは面接試験をささっと終わらせてくるだけだから、簡単だろ?


 ……なんてね、推薦だからと楽観視していたらさ、肝心の面接で躓いたんだ。


 あたしの名前が呼ばれて入室する際、国際ルールは遵守した。


 ノックは4回、少し音が大きいのはご愛嬌だぜ?


「……どうぞ」


 入室の許可がおり、扉を開けて入った広々とした教室の真ん中にポツンと用意された、チープであたしのサイズに合わなそうな椅子まで歩みを進めた。


 ああ、ここで早速、あたしは躓いたんだ。


 距離感を測り損ない、椅子を脚にぶつければ勢いよく転げた……やべぇ、やっちまった……。


 当然のように軽くパニックになり、急に頭の中が真っ白になってさ、さっきまでのお気楽ムードはどこへやら?


 いざ改めて緊張するとまるで役に立たねえって訳さ。


 そんなあたしを落ち着かせようとした面接官の一人が……ああ、これまたあたしのタイプだったからさ、尚更落ち着かなくなってしまったんだぜ? HAHAHA!


 全く、あたしがこんなにも乙女だったなんてさ、恥ずかしすぎて面接中であることを忘れてさ、思わず英語で悪態つきまくった訳さ?


 そしたらさ……。


「Hey,Easy easy…All right,Let's recover from this. You can do it,stunning Japanes American?(おい、落ち着けよ…心配するな、ここから挽回しようぜ。お前なら出来るだろ、美しき日系アメリカ人さん?)」


「What? Umm…ah…I can speak a little japanese. But…ah…I trip over speak little japanes?(なんだって? うーむ…ああ…日本語なら少々話せるぜ? だけど…ああ…日本語を少ししか話せなくて躓いたんだけどね?)」


「「HAHAHA!」」


「You just crawl up, right? You'll be fine. Keep going! I'll always be by your side?(お前はいま立ち上がっただろ? お前なら大丈夫。困難なこともあるかもしれないけど頑張れよ! 辛いときは俺を当てにしてもいいぜ?)」


「No kidding? As if. I pass the exam?(冗談だろ? まるであたしが受験に合格したかのようだな?)」


「Yup, you pass. Congratulations on admission to TK high school. I welcam you(そうだよ、お前は合格だ。東方共栄学園高等学校への入学おめでとう。俺はお前を歓迎するよ)」


「Wow wow wow!? It's look surreal!?(ワオワオワオ!? 夢でも見ているのか!?)」


「Not a dream but reality, face the fact(これは現実だ、受け入れろ)」


「Crazy about(イカれてるぜ)」


「You too(お前もな)」


「「HAHAHA!」」


「Hey teacher, what's your name?(おい先生、あんたの名前は?)」


「I'm Ina(伊那)」


「Enough? or japanese No?(十分足りてるのか? それとも日本語の否?)」


「This is homework until admission(入学までの宿題だ)」


「Go f**k your self(勝手にしやがれ)」


「I'm looking forward to it, little bitch(俺は待ってるぜ、メスガキ)」


「「HAHAHA!」」───。



 ……うん、覚えている範囲だけでも思い返せばさ、あれはかなりひどい会話だったな? hahaha……。


 本当に推薦入試の面接だったのか、未だに信じられねえってもんだぜ?


 だが、イナと名乗った先生は、あたしの好みのタイプで、思わず舞い上がったものだったけど、英語が通じるようでお互いに軽口を叩いて笑い合えたし、お世辞や嘘を言ってるような感じでもなかったから……ちょっと期待しちゃうだろ?


 全く、リトルビッチなあたしを期待させておいたからにはさ、手のひら返しなんてものは勘弁してくれよな?


 梯子を外されて時代錯誤なお礼参り、って訳にもいかないだろ?


 だからさ、本当に合格だったら……あたしは絶対ここに入るからな!───。






  ───人物紹介。



 Name / 香坂 凪沙(コウサカ ナギサ)


 Age / 15歳


 Date of birth / 19XX年4月19日生まれ


 The zodiac / 牡羊座


 Gender / 女


 Blood type / B型


 Birthplace / アメリカ合衆国


 Hometown / 茨城県


 Height / 183cm


 Job / 中学三年生


 Favorite subject / 家庭科、体育、英語







 

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