第7話 無視と切ない握力
「うわ、来たよ」
席に着くや否や、挨拶もなくだるそうに高橋は呟いた。
流花の中学校は班ごとに席が割り振られおり、隣同士は席をピタリとくっつけなければいけなかった。
隣に座っている高橋は、流花が席に着くや否やわかりやすく机を離した。
最初から離しておけばいいのに。
高橋が机を離したことに気づいた同じ班の合川と平塚はニヤニヤしながら振り返った。
「おい高橋。木南が可哀想だろ。くっつけてやれよ」
「は?無理だろ。こんなブス」
「ひでえ〜!そう言ってやんなよほら」
「ばか、平塚マジでくっつけんなって!汚えな!」
勝手に「可哀想」と言われ、流花は机の中で拳を強く握った。
それが今の流花にできた精一杯の反感だったのだ。
平塚が机をくっつけようとした衝撃で流花の机が揺れる。
教室入ってたった五分の出来事だ。
五分でどれほど心が抉られただろう。
周りのクラスメイトはただふざけているだけか、
相性が悪いんだなとしか思っていなかっただろう。
漫画のように暴力や水をかけられたりなどはされない。
大事に騒ぐほどのことでもない。
ただ耐えればいいのだ。
いずれ奴らは反応がない事に飽きて別の話題をしだす。
その時までじっと耐えればいい。
だから周りも何も言わないし、助けてはくれなかった。
京子を除いて。
美人 詩 @__uta08
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