第3話 出陣と眩暈
会場は立食スタイルになっており、既に到着した面々によって賑わっていた。
中学以来に会う者もいれば、高校まで頻繁にあっていたが会わなくなった者もいた。
勝手に気まずさを感じながらもドアマンに招待状を渡し、中に入っていく。
会場に足を踏み入れたその瞬間、耳鳴りとともに全ての音が濁ったような感覚に陥った。頭から血の気が引くように、サッと聴覚が遮断される。
聞こえるのは荒々しい自分の呼吸だけ。
キーンという耳鳴りによって駆け寄ってくる同窓生の声がかき消されていく。
この人誰だっけ。何を話してるんだ。何か言わないと。
何やら嬉しそうに手を叩きながら小さくジャンプする小柄な同窓生を、流花はとにかく笑って相槌した。
耳鳴りが酷くなる。呼吸の声が益々深くなる。
鎖骨から汗が滲み出てきていた。
耳鳴りは頭の中で暴れ回っていく。
まずいとわかっていても張り付けた笑顔を取ることはできそうにない。
何か、何か言わなければ─────…。
瞬きさえも感情的になり始めていた時、優しく肩に手を置かれた。振り返るとそこには親友の
「久しぶりじゃーん。流花が来るとは思わなかった」
京子の顔を見ると耳鳴りが収まり、徐々に周りの賑やかな声もはっきり聞こえるようになった。よく見ると目の前にいる小柄な同窓生が、心配そうに流花を見ていた。
「木南さん、大丈夫?」
心配そうに見つめる優しい瞳に耐えられず、流花は慌てて声を作った。
「ごめんごめん。遅刻してたからここまでダッシュで来たせいで顔死んでた」
「なあんだ〜!本当に体調悪いのかと思ったあ。でも無理しないでね」
自分よりも十センチほど高い流花に背伸びして頭を撫でると、同窓生は別のグループへ向かっていった。
「京子、まじで助かった」
「無理してくることなかったのに。てかあの子誰だっけ?」
結局はっきり会話しても彼女の名前は思い出せなかった。
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