第10話

「はーい。終了です!」



ブフォ恋の主人公を演じ切った。撮影時間は5時間ほど。休憩を挟みつつではあったが、時間を忘れるくらい熱中し、楽しめた。中々体験することのできない時間だった。


「これにて終了でーす!お疲れ様でした!」


なんともう撮影の工程が全て終了したらしい。映画って二週間くらいかかるものじゃないの?


スタッフ達がカメラなどを撤収し始める。この後予定がある芸能人たちはすぐさま早歩きで次の現場へと向かおうとする。


だが、俳優や女優。そのどの顔にも嫉妬や尊敬。達観などの感情が混ざってしまっていた。


何度も何度も見てきた。もう慣れたと思ったが堪えるものがあるな。


なんて事を思っていたら隣にはブルーナイツの西宮奏が立っていた。


「あんた演技出来たのね」

「いや、初めてやった」

「はぁ、あんたがどれだけ凄いのか、もうわかり切ったわよ。監督がなんであんたに目をかけたのかも分かるっていうか。そだ、話しが変わるけど、連絡先交換しない?」


顔を真っ赤にし、もじもじと恥ずかしそうに携帯を差し出す西宮を見て


「いいのか?仮にもアイドルだろ?」

「仮にってなによ?失礼な」


足を弱めに何回か蹴ってくる。なんでだ?西宮と仲良くなるイベントなんてあったか?


まぁ、待たせるのも失礼だと思い俺も携帯を差し出して、連絡先を交換する。


思えば女子と連絡先を交換するのって初めてじゃないか?


浮かれまくる俺を見て


「何浮かれてんのよ」


と西宮は一刀両断。ついでに足も蹴ってくる。


携帯で顔を隠しながら


「これから奏ってよんで。そうしなきゃ怒るから」


照れながらそういう奏に俺はドキドキが止まらなかった。言葉に詰まりながらも何とか返事をする。


「……わかったよ。奏」

「それでよろしい。じゃあ次の現場があるからまたね」

「じゃあな」


そう言って俺に背を向けたまま小走りで歩き出す。たった一回きりの出会いだ。もう会うことはないだろう。


なんて思ってたのに再会は早いものだった。というのは後から分かった話だ。




なんて感傷に浸っていると横には来崎茜が。なんていうかデジャブだな。


「私も連絡先の交換いい?」


世界中のファンがいる来崎茜と連絡先の交換をする。バレたら殺される未来しか見えないぞ。


「嫌だ。殺されたくない」

「奏ちゃんはいいのに私はだめなんだ」


来崎茜の瞳にどす黒いものが写り始める。


「あっー、もうわかったよ交換するよ」

「ありがと!」


俺と来崎の携帯を重ねあわせ、出てくるは交換完了の文字。


「えへへ」


来崎は嬉しそうにしているがなんていうか超人気女優との禁断の果実じゃなくて、俺には地獄への片道切符に見えるんだが


「今日は助かったよお兄ちゃん!」

「そのお兄ちゃんってのやめてくれないか」

「俺のSAN値が今にも減って行ってる」

「やだっ」


拒否されてしまった。はぁ。ファンの人に知られたら鬱なんだが。嫌だなぁ。俺には妹がいるし。


こうやって話しているだけで殺されてもおかしくないのに。




ただ、こんな会話も悪くは無かった。



寧ろ、懐かしいと思ってしまった自分が気持ち悪くて戒めたくて仕方がなかった。






—————————————————————

後書き!!


はいっ!ってことで久びさですね!いやっー、前話や前々話に後書き挟むのは読了感を邪魔するかもと自粛してました!


今日は9話の更新が終わったら寝ようと思っていたのに何故か10話を執筆してました。何故でしょうか?


それとなんですが今日一日で100PV達成しそうです。公開して一日と経ってもいないのにです。星や応援コメントの方でも応援していただきまして誠にありがとうございます!執筆の励みになっております。


この作品が少しでも面白いと思っていただけたのなら、星で評価していただけると泣いて喜びます。頼みます!








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