第5話
「おっ、いるねぇ。呼びにきたよ」
監督が俺の元へ迎えにきた。監督の容姿といい、嫌でも注目を集めてしまう。周りにいたクラスメイト達から好奇の視線を向けられる。撮影が終わったら質問攻めにされるんだろうなぁ。なんか嫌だなぁ。
「じゃあ、いってくるわ」
「じゃあ、また」
亮に別れを告げ、監督と共に歩き出す。話す内容がなくて気まずかったので、監督に俺が疑問に思っていた事をぶつける。
「俺以外にエキストラって何人いるんですか?」
「え?君以外にはいないよ?」
え?初耳だ。なんで俺なんかをエキストラとして呼んだのだろう?
「っていうか、君をエキストラで呼んだのも私と彼女の我儘だからね。上が知ったら激怒するんじゃないかな?来崎茜に知らない奴を近づけるなって」
こっわ。ってかこれいいの?俺怒られたりしない?まぁ怒られたら監督のせいって言い張ろう
そんなこんなで話をしていると撮影現場に着いたらしい。今は学校は授業中だ。撮影を観にこようとする者は誰もいない。それでもボディーガード達が突っ立っていた。
なんていうかウォール=マ◯アくらい厳重だった。
「はーい通らしてねー」
その中を監督は緩い感じでボディーガードの合間を通って行った。俺は軽いボディーチェックを受ける必要があるらしい。ボディーガードにボディーチェックをやってもらおうと思ったら不意に声をかけられた。
「Yo! It happened again. Well, it was mostly as I expected(またあったな!大方俺の予想通りといったところか)」
昨日の外人だった。今やフランクに話しかけてくれる。
「What do you mean?(どういう意味だ?)」
「I'll understand eventually(いずれわかる)」
外人は言葉を濁した後、俺のボディーチェックを始める。と言っても簡単なものだ。体をほんの少し触られ、直ぐに解放された。
「It's okay. You can go(行ってもいいぞ)」
外人から許可がもらえたので、ウォール=マ◯アの中に入る。ここが内地か。って違う。違う
監督が中で待ってくれていたので、横並びになって歩く。俺たちの横をスタッフと思わしき人物が小走りで走り抜ける。そこら中に高そうなカメラなどが置いてあり、若干緊張するな。
歩を進めていくと、そこには何人かの女優や、俳優と思わしき人物達が談笑している姿が目に入った。だがどうやら来崎茜はその中にはいない様だった。俺の心を知ってか、監督が説明を加える。
「来崎ちゃんは今は別の部屋にいるよ。あの子の身に何かあればうちの首が冗談抜きで飛ぶからね」
と監督が笑いながら話す。いや、全然笑い事じゃないんだけど。クビにされるとかじゃなくて、首チョンパのニュアンスだったよね?
閑話休題。
「それでなんだけど、エキストラの君の仕事っていうのはクラスの後ろの方の席に座ってるだけで大丈夫だよ。今時イケメン枠がないと売れないからねぇ。ロケ地に君の様なダイヤの原石がいたのが救いではあるかな。ほんと世知辛い世の中だよ」
「で、君の髪型なんだけどどうしようかな?オールバック?いや、微妙だねん」
監督は俺の髪を許可もなく弄り始める。
「うーん、なかなか決まらないなぁ。」
かれこれ5分ほど俺の髪型と格闘していた。いくらなんでも決まらなすぎじゃない?いや、こんなに髪ボサボサの人が髪のセットなんて出来るわけないか。なんてひとりでに納得していた。
その時、スタッフの1人が
「来崎茜様入りまーす!」
と大きめの声でみんなに知らせる。その場にいた全員が声の方を向く。釣られて俺も声の方を向く。そこには制服姿に身を包んだ来崎茜が立っていた。制服姿。しかもその制服は俺が通う高校と同じもので。やっぱり纏う雰囲気というのは1人だけ格別に違った。そこらのアイドルと比べるのも烏滸がましい。
「監督ー!ちょっと相談が!」
来崎茜が監督を呼び付ける。監督とは随分と親しい様子だ。
「ちょっと待ってね。これが終わったらー」
「ちょっと。ちょっと!監督!行かないんですか?」
「あとちょっとなんだよ」
監督曰く今良いところらしい。俺からすれば何処が?と言いたくなる様なものなんだが。なんせ。髪型の一部を手に取って巻いてるんだから。なに?俺をネタ枠にしたいの?監督は?そう思いたくなる出来だった。
不意に俺と監督の目の前に来崎茜が近づいてきて、呆れた様に言う。
「なにやってるんですか?監督。ちょっとどいててください」
来崎茜が俺に急接近する。シャンプーと思われる良い匂いが鼻腔をくすぐる。心臓がドキドキしすぎて、目の前の来崎茜に聞こえてないか心配だった。
来崎茜は俺の顔をまじまじとみた後、自分の腕にあったヘアゴムを手に取り、俺の髪を束ね始める。そのまままとめた髪を手に取り、ヘアゴムで縛る。
「うん似あってる。やっぱりお兄ちゃんはこれじゃなきゃね」
「え!?お兄ちゃん?」
来崎茜にお兄ちゃんと呼ばれた!!?どう言う事だ!?接点なんか全くないと思うんだが。
「もしかして何処かで会ったことがあるか?」
驚きすぎて敬語を忘れていた俺を悲しそうな目で見た後、首を振った。憂いた雰囲気は一瞬で霧散したため、俺は気づかなかった。
「なんでもない。今度演じる役と被って見えちゃっただけ」
その後来崎茜は俺の肩に手を置き、小さな声で
「絶対に思い出させてやるんだからっ!」
と意気込んだ。その瞳が決意に満ちていたことは知る由もない。
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後書き!!
この作品はカクヨムコンに応募しようと思い描き始めた作品ですが、応募要項をみて唖然としました。10万字必要ということに。(白目)
えっーと今一万文字ですので、これを後10回繰り返せばってことですよね?五十話まで行けと?やってるやるってばよ!
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