第2話

「ただいま」


俺が帰宅すると妹が出迎えてきてくれた。


「おかえり。遅かったね」

「晩御飯の食材をかってきてた」


そう言って俺は肩にぶら下げてあった袋をおろし、強調するように上にあげる。


「──!!ってことは期待していいんだね?」

「ああ、今日は冬火が好きなビーフシチューだ」

「やった!!」



冬火がその場で小さく飛び跳ねる。同い年とは思えないほどの喜び方をする冬火を見て、笑みを零しながら、冬火に着替えを済ませてくることを伝え、自分の部屋へと入った。荷物を置き、着替えてからキッチンへとたつ。


俺の家では基本的には俺が料理担当となっている。その理由は主に冬火が料理が壊滅的に出来ないことにある。1回作ってもらったのだが、包丁で手を切るわ、漫画の世界でしか見たことがないダークマターが出来たりと、後始末がとても大変だった。それからというもの俺が料理担当ということになった。


俺がビーフシチューを作っている間冬火は、ビーフシチューを覗き込もうとぴょんぴょんと飛び跳ねる。だが身長が足りず、諦めてリビングに戻っていった。うちの妹が可愛すぎるんだが。こんなに子供っぽいのに俺と同い年の17歳なんて信じられないな。


それからほどなくしてビーフシチューが出来上がった。ビーフシチューを皿に盛り付ける。香りもよく、なかなかいい仕上がりになったんじゃなかろうか。


「「頂きます」」


冬火と共に出来上がったビーフシチューをスプーンを使って口に運ぶ。うん。おいしい。


「冬火、おいしい?」


いつもなら真っ先に美味しいと伝えてくれるはずなのだが、今日は何も言ってくれない。

ま、一心不乱に口に運んでるし、味を心配することは無いか。


冬火は俺の問いに急いで答えようと口の中のもぐもぐさせる。


「ゆっくりでいいよ」

「おいひいよ!お兄ちゃん!」

「そっか。それは良かった。おかわりもあるよ」

「やったっ!」


それから2人だけの家族の時間を有意義に過ごしたのだった。




◆◆◆


──その日の深夜。近隣住民が寝静まった頃。


「まだ茶番を続けるのか?お前だってわかっているだろ?」


謎の声が俺を責め立てる。


「お前は何をした?何のために力を得た?お前が掴むべきは幸せじゃない。万に1つ選び抜いた苦しみだけだ」


……そうだよッ!──クソっ!なんでいつも俺だけが。なんでだよッ!俺が何をしたって言うんだよッッ!!!


「──ハハッ!何を言っているんだ?お前がこうなったのもお前がなにもしなかったからだ」




◆◆◆





──それから3週間後。


来崎茜の映画のスタッフと思われる人達が学校でちらほらと散見されるようになった。使われていなかった教室では着々と撮影の準備が行われていた。


「いやー、この街も随分と栄えましたなぁ」

「なんだよ。その口調。しかも撮影が終わったら直ぐに廃れるぞ」

「いやいや、来崎茜効果を舐めてもらっちゃぁ困るね。聖地巡礼にたくさんの人が押しかけるからな」


それ程までに来崎茜は凄いらしい。うちの家はテレビ自体はあるんだが、全く見ないからな。来崎茜という女優自体は知っていたが、顔つきについては何も知らない。ま、クラス全員が知っているのだからそれなりには凄いのだろう。


俺は本当の完璧な人間というものを知っている。それを超える存在はないとまで言えるほどに。


───しかし、俺の予想はいい意味で裏切られることとなる。


その後も亮と話していると急に校内がざわつき始めた。なんというかピリピリした雰囲気だ。


「おっと。始まったか。俺達も行くぞ?」

「何がだよ?」

「なんも知らねーのかよ。今日は来崎茜が来校する日だぞ?いいか。よく見ろ。俺たちはあの中に突入するんだ」


亮が指で指し示した先を見ると尋常じゃない程の人だかりが出来ていた。


え?あんなに人が集まるもんなの?


例えるならスーパーで夕方から始まる特売のような感じだ。


そこかしこで怒号や来崎茜を称える声が。


「来崎様可愛すぎでしょ!」

「おいっ!どけっ!」

「お前がどけよっ!」

「おいっ!また倒れたぞ!!」


人だかりの中から3人ほどが担架で運ばれていく。来崎茜を凝視してしまったらしい。それ因果関係崩れてない?え?担架?用意が良すぎない?何で担架なんかあるの?


その時亮が俺の心を読んだように説明してくれた。


「来崎茜が可愛すぎて人が倒れてしまうっていう噂があったんだが、本当だったみたいだな」


亮が腕を組みながらうんうんと頷きながら説明してくれる。


「ま、それじゃ突入するぞ!」

「え?」


亮がいきなり俺の手を引きながら人だかりへと突入していく。だが人混みが多すぎて思った通りに行けなかったらしい。いつの間にか手が離れ、亮が見えなくなっていた。


その代わり俺の目の前にはスーツを着こなし、サングラスをかけた難いのいい男が。


真っ黒に日焼けした男にビビりすぎた俺は何故か男に話しかけていた。


「……あー、……Hi?」



—————————————————————

後書き!!


最近鼻詰まりがひどいです。なのでスクリーミングハンドになりたいです(切実)


それと星ください





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