妹でもない天才女優は俺をお兄ちゃんと呼ぶ
@cha0so7
プロローグ
第1話
この学校を舞台とした映画をやるらしい。しかも主演は来崎茜。そんな噂が風のように俺の元へと舞い込んできた。
来崎茜。歳は17歳。現役女子高生であり、日本を代表する女優。今や知らない人は居ないとまで言われる来崎茜は10歳という若さで名作級の映画に子役として出てからとういうもの、その人気は留まることを知らない。
以上W〇ki参照。
──1ヶ月後、その噂は現実のものとなった。
◇◇◇
「ほーい、全員せきについてるかー?」
担任の皆瀬先生が教壇の前に立ちながら、俺たちを見渡す。
「うん。全員いるな。今日のホームルームは超超重大発表がある」
普段気だるげに話す先生だからこそ、いつにもない真剣な表情に生徒たちの間に緊張感がでる。
「知っているやつもいると思うが、1ヶ月後この学校に来崎茜が主演となる映画のロケ地に選ばれた」
一瞬クラスの中が静寂に包まれ、その後一気に歓声が爆発的に起こった。
「「まじ!!?」」
「「やばくね!!?」」
「「うおーーーっ!!!!」」
一斉に生徒たちが席を立ち上がり、教室が一瞬でお祭り騒ぎになる。
そんな中俺はと言うと、1人だけ窓側席に座ったみまま、ぼーっとしていた。1ヶ月も後の話だし、何かあったとしても精々エキストラに抜擢されるのが関の山だろう。何がそんなに嬉しいのやら。
なんて事を考えていると、俺の前の席に座っている親友兼悪友、椎名亮が俺に声をかけてきた。
「おいおい、葵。そんなしけた面してどうした?あの来崎茜だぞ?」
「いや、俺からすればなんでそんなに盛り上がっているのか分からない」
「はぁ。あんなに可愛い子がうちの学校に来るんだぞ?しかも同い年だし。ワンチャンがあるかもだし。夢を持てよ」
「はぁ。ワンチャンなんてあるわけないだろ?そもそも近づくチャンスもないと思うんだが」
多分だが、当日はボディーガードとかが配置されることになるだろう。それほど来崎茜は有名なのだから。
「エキストラに選ばれたら、可能性50パーセントくらいはある」
「おいおい、自己評価高ぇな」
俺は亮に苦笑しながら、軽口を言い合う。
その時、
「はいはい、気持ちはわかるけど静かに」
と皆瀬先生がパンパンと手を叩きながら、色めきたつ生徒たちを宥める。
「まだ1ヶ月先だからな。あと、1週間ほど放課後は残れなくなるからそのつもりで。じゃ解散」
その言葉にクラスメイト達は思い思いに席をたち、鞄を持って教室から出たり、友人と談笑に花を咲かせ始める。
俺も鞄を持って教室から出ようとすると若干大きめな声で亮に声をかけられた。
「おいおい。達也。親友に何も言わずに帰る気か?遊びに行こーぜ」
「いやいや、俺はきちんと連絡しただろ?ほら」
そう言って俺はポケットから携帯を取りだし、亮とのトーク履歴を見せる。
そこには晩御飯の食材を買って帰るため、一人で帰ることが書かれていた。
「うっわ。わりぃ。見てなかった。妹ちゃん大好きだもんな。相変わらず妹の頼みが最優先なのかよ」
「それほどでも」
「いや、ほめてねーし」
「まぁ、遊びはまた今度誘ってくれ」
「りょーかい。それといつか妹ちゃんにあわせてくれよ?」
「ま、そのうちな」
亮との会話もそこそこにし、昇降口で靴を履き替え、学校を後にする。その足のまま商店街へと向かう。
俺が住んでいる地域は山奥の自然豊かな田舎にある。歩いて行ける距離にスーパーなんてものは無い。この時間帯は商店街は混み合うし、嫌なんだよなぁ。そんなことを思っていると、いつの間にか商店街が見えてきた。
「……え?」
何か一瞬見えては行けないものが見えた気がする。思わず目をそらす。目を擦りもう一度向き直り、ピントを合わせるとそこには大きな文字で
「歓迎!!来崎茜!!!!」
と書かれていた。いやいや、うそでしょ。気がはや過ぎない?いくら寂れた街だからって下心がすけて見えるんだが。
まぁいいや。気にせず野菜を買っていこう。ってことで商店街の真ん中の方にある八百屋に立ち寄る。野菜を手に取り、どちらが良いか見比べながらカゴに放り込んでいくその途中八百屋のおっちゃんに声をかけられた。
「おっ!達也じゃねーか」
「お久しぶりです」
「相変わらずしけた顔してやがんなぁ」
「そんな顔してます?」
今日のホームルームで亮にも言われたため、思わず顔を触ってしまう。そんな変な顔をしてないと思うんだが。
「ははっ。冗談だ」
「……陰湿な冗談はやめてくださいよ」
「わりぃ、わりぃ。ま、余計なお節介かもしれないが、お前はもっと笑え。髪で隠れてるけどせっかくいい顔してんだから勿体ないぞ」
自分が人一倍容姿に優れているのは理解している。人より優れた容姿は人目を集めるし、僻みや嫉妬が原因で災いも起きやすい。それを妹と共に経験してきたからこそ、自分の顔をひけらかすような行為はしたくない。だから俺の髪は目元までが伸びきっている。そろそろ切るべき頃合だとは分かっているが。世間体から見れば見た目は立派な陰キャと言うやつだ。これに関しては自分の性格から鑑みても、その通りである。学校で馬鹿にされることはあるが、別に何とも思わない。
むしろ目立たないのは嬉しい。目立つなんてことは愚か者のすることだ。
だから俺は───
「おい大丈夫か?」
おっちゃんに話しかけられてようやく我に帰った。思考の沼にハマっていた。
「──あっ。すみません。少し考え事を」
「そうか?ならいいんだが」
少しばかり気分が悪くなった。あれはもう終わったことだ。今更考えたってもう遅い。
俺は思考を中断し、必要なものを詰め込んだカゴをおっちゃんの前に差し出す。おっちゃんは野菜を数え出し、金額を提示する。もちろんレジなんてものは存在しない。
「今日も値引きしとくぜ」
「いつもありがとうございます」
俺がこの街に妹と2人で過ごしていることを知ると、お金をねびいてくれるようになった。お金に関しては俺の高校生活が終わる頃には底をつきかける。そういった気遣いはとてもありがたかった。
野菜を持ってきた袋に詰め込み、肩にぶら下げてから家への帰り道を足早に歩く。早く帰らないと妹にドヤされてしまう。商店街の至る所にある来崎茜のポスターや等身大のパネルを横目に見ながら商店街を後にした。
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後書き!!
タイトル通りの話になるのは4話位からになりそうです。前置きが長くて申し訳ないです。
少しでもこの作品がいいなと思って頂けたのなら星での評価をお願いします!ではでは!
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