第3話 今後その子についてなんだけど
うちの家庭はお父さんが単身赴任で週末に帰ってくるから、平日はぼくとお母さんだけで暮らしている。そのお母さんも基本的には朝7時には仕事なので早くに家を出る。だが、今日に限って仕事が遅くにあるというのだ。
「ん……」
ぼくは起きた。朝7時のようだ。
床には折りたたまれた掛布団が置いてあった。
「あ、そうだ。あの子を泊まらしたんだった。だけど、いないなぁ」
しかし、部屋の向こうリビングだろうか誰かと話している声がする。
電話でもしているんだろうな、顔を洗うか。
ドアを開けた瞬間、はっきりと声が二つした。お母さんと彼女の声である。
え!? まって! お母さんこの時間にいるの?まって?
お母さんがいるか確認するためにぼくはリビングに行った。すると、そこにはテーブルで雑談しているお母さんと彼女がいた。
「あら、和也。おはよう。遅かったわね」
「お、おはよう。お母さん……てか、なんでこの時間にいるの?」
おいおいおい、なんでこんなにも仲良く話しているんだ。
「今日はね仕事が遅くに始まるからね。あと1時間はいるわよ」
「ああ、そうなんだ」
ぼくは彼女の方もみると、平然とリラックスしながら僕たちの会話を頬杖を突きながら聞いていた。
こいつはどんだけこの家に打ち解けてんだよ。
「ところでお母さん、この子とめっちゃ仲良くなってるね」
「ちょっと和也。この子じゃないでしょ。ちゃんと名前で呼びなさい」
「ええっと、まだ彼女の名前を知らないんだよね」
「はぁ? 和也がここに連れてきたんでしょ? 何で知らないの?」
「いや……それは……」
だって知らない間柄だし、昨日初めて会ったしで、それは分かんないよ。
そんな風に自分に言い訳をしていると――
「和也ね、名前は聞きなさい」
「あ、うん」
「女の子を大切に扱わないといけないじゃない。和也--」
「涼子さん、かずやを叱らないであげてください。名前を忘れられているのは気にしていないので」
止めに入ったのは金髪女の彼女だ。
おいおい、まてまて。まったく自己紹介とかしていないからね。なんなら、何にも喋っていなかったからね昨日のぼくたち。なにをこんなダメな男でも許しちゃう私みたいな感じでしゃべっちゃってくれてんの?
自分の名前を一切名乗ってないからね? 自分の頭の中にある記憶をさかのぼって調べてください。と頭の中で言いたいことを言いつけてやった。
もちろん、こんなことが聞こえない二人は
「さすがはルカちゃんだわ、女ができてるじゃない」
「あ、ありがとうございます、涼子さん」
へぇー、ルカって名前なんだ。どうやら、この容姿端麗で金髪ロングの女の子は
お母さん、本当にそう思っているの? その子今しがたうそをついてたぞ。名前なんて名乗ってないから忘れられるのは気にしないとかはないんだぞ。お母さんもうちょっと人を見抜く力を付けた方がいいと思うぞ。
てか、どうしよう……これ、めちゃくちゃやばい状況だ。ルカとお母さんが話し合っている言うことはぼくがルカをこの家に泊まらしたことがバレたということだ。
お母さんになんて説明をすればいいんだ。
とりあえず、昨日会ったことをちゃんと説明して。
「ところで、お母さんさ、その子がいる理由なんだけどさ――」
「知ってるわよ。ルカちゃんからすべて聞いたから」
「ああ、そうなんだ」
昨日の事情をすべて聞いたんだ。
まずは、誤解されないから良かった。ふぅー。
でも、問題なのはこれからの話だ。その子を生活だ。今日はここに泊まらしたけど、これからどうするかだ。
この子の場合、今日の夜にはまた路地裏の薄気味悪い所に居座るんじゃないだろうか。だから、これ真剣に考えなければならない。一番は実家に帰ることだ。
だから、ぼくはお母さんにそのことについて伝えようとしたところ。
「お母さん、話があるだけど。今後その子についてなんだけど」
「ああ、そうだ。和也。ルカちゃんね、今日からこの家に泊まるからちゃんと仲良くしなさいよ」
「……?」
「それでさー、ルカちゃん――」
ぼくの理解ができていないままお母さんはその子と会話を続ける。
「待って待って、お母さんどういうこと?」
「え、何よいきなり」
「いやいや、その子がこの家にこれから泊まることになったってこと」
「そのまんまの意味よ」
「いや、おかしいでしょ」
「何がおかしいの?」
んー、何がおかしいか。そういわれるとなんだろう。そうだ、向こうの親!
「いやいや、相手の親とかいるし」
「ルカちゃんのお母さんからきちんと許可をとったから」
「え、取ったの?」
「取ったわよ、ちゃんとお母さんが」
「取れるもんなんだね……」
「ええ。すんなりとね。今日の朝、ルカちゃんに電話させてね。電話する前まではルカちゃんを家に帰らそうとしていたけど、今は違うわ」
「え、どうして?」
自販機の先の女 シドウ @jpshido
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