第2話 自販機
夜の10時頃の繁華街。
「のど渇いたな~、コンビニは……」
すぐそこにはコンビニはなさそう。と思いかけたところ路地裏に自販機のじわっとしたうす気味悪い光が見えた。
「気味が悪いな……この路地」
コツコツコツコツと自分の靴音がすんごく響く。誰もいないところって怖いんだよな。
自販機の光のせいか先の方が全く見えない。さっさとジュースを買うため、財布をとる手もおぼつかないまま取っていた。自分がちんたらとしている自販機のボタンを押したその時、満月の光が路地裏に差した。
「ん!?」
思わず声を出してしまった。路地裏のちょっと先の方に壁にもたれかかって座っている女がいた。
その子はロン毛の金髪美女で制服を着ていた。
なにしているんだろう、あの人……うわー、めっちゃ美人さんだ。なんか絵になるわー。
あれ?
じーっとその子を見る。
あれってぼくと同じ高校の制服。
ずっと前の壁を見ているけどなにしているんだろう、ここで?
何か話さなければならないような気がした、だけど……。
うん、まぁ、知らない女の子と喋りかける勇気なんてないし、喋ることもないし、さっさと帰るか。
ジュースを持ち、踵を返して家に向かった。
家に帰る途中、あの子が気になって気になって仕方がなかった。
あの子、本当に何をしているんだろう?
だって、あんなところで高校生が一人いるんだよ。気にならないのは普通じゃないよね。
不良なんだろうか?まぁ、偏見ではあるけど、美人な子って不良が多いよね。
そうこうしているうちに家に着いた。
「ただいまー」
お父さんとお母さんはいつも通り寝ているようだ。
自分の部屋に入り、荷物を置く。
家に帰ってもあの子が忘れられないおれ。
しばらく無言のまま椅子に座っている。
「ああ、もう!」
気になって気になって仕方がない。
ぼく、いつのところに行く!
また、うす気味の悪い路地に着いた。
到着したけど本当に何を話せばいいか分からない。こんにちは~とかかな。
でも、そんなこと言ったら、夜にこんにちはってとか言われるだろうし。それともこんばんはって言ったらいいんだろうか? それでも、ナンパしてるとか思われたらどうしよう……。嫌だなー。
とは言っても自動販売機の先が全く見えない。いるのかな? さっきは路地裏に満月の光が差していたからあの子がいたのが分かったけど、今は暗くて分からない。
とりあえず、話しかけよう。
「あの~」
「……」
何も返事がない
「おーい」
「……」
それでも返事がない。
ん? もう帰ったのだろうか? 夜も遅いしそれりゃー、帰るよね。念のために確認してみるか。
ぼくはポケットからスマホを取り出し、ライトボタンをオンにする。
「え?」
ぼくの驚いた声と共にッチと舌打ちをした音が聞こえた。
女の子がまだここにいたのだ。
あの金髪美少女がこっちをめちゃくちゃ睨んでるんだけど、ものすごく機嫌が悪そうで今にも人を殺しそうな目をしているんですけど。
こ、こわい。
「ちょっと眩しいんだけど。アンタ、こっちに光を受けないでくれる?」
「あ、あ、ごめん」
綺麗な声の生徒の言う通りにスマホをしまい、彼女に向かい合う。
え、全然見えない。
「あのー、こんなところでどうしたの?」
「あん? 何もないわよ」
「そ、そう。なら11時回ってるし、帰った方がいいんじゃない?」
「は? なんでアンタに指図されなきゃいけないの?」
ドキ、怖すぎて心臓がドキドキしているんだけど。
これあれだよな、顔は見えないけど人を殺すような目でこっちを見ているんだろうな……。
顔が見れていたらごめんって言ってすぐに帰っただろうな。幸いにも顔が見えてないから逃げかえるまでは怖くない。まぁ怖いものは怖いんだけどね。
「指図じゃないよ。ただの……」
ただのなんだろう? どうやって帰るように説得するか分からん。
とりあえず、考えたことを言うか。
「ただの……何?」
「……おせっかいだよ」
「おせっかいか、それ迷惑だからどっか行って」
なんだ、この頑固な奴は。それになんか今の言葉でイラっときた。ああ、もういい力ずくでも帰らしたくなってきた。
「迷惑だから帰らないといけないってことはないよね」
「いや、キモイから帰って」
イラッ
「キモイから帰る理由にはならないよね。君が帰るまで帰らない」
「はぁ?? うっざ」
「君の方がうざいから」
「アンタ、めちゃくちゃうざいね」
「安心して君の方が何倍もうざいから。え、自覚ない?」
「うっとおしいんだよ!!!」
心臓が張り裂けそうだった。
いきなり怒鳴り上げるから心臓がバクバクだ。
彼女は見えないがその場から立ってこっちに向かってくる音がした。
「うっ!」
自販機の前に立ち止まる金髪少女の顔がはっきりと見える。怒りで満ちた顔になっていた。今更になって怖すぎて何も言えない。
メッチャ怖いんですけど、え、これぼく死んだ?
そう思った時に彼女の手がぼくの襟を掴み、殴る構えでいた。
メッチャ怖いよー。そして、怖すぎて目を見れないぼくは目を思いっきりつむる。
「……」
シーン。しかし、なにも起きない。とっても静かだ。
襟元を握られていた力が離れていく。
え、今何が起きているの?
そー彼女はっと目を開けると、下を向いた彼女の顔は暗い。それは、何かを思い詰めるような顔だった
え、えーっと……
彼女は一息ついて一言つぶやく。
「帰って」
「そのうちね、帰るよ。君は家には帰らないの?」
顔をこっちに向けて彼女は
「帰らないよ。あんな家に帰りたくない」
複雑な家庭事情があるんだな。この話に踏み込み
「そう……じゃー、ずっとここにいるの?」
「……まぁ、そうじゃない」
「他の家に泊まらしてもらわないの?」
「泊まらしてくれる人なんていないよ」
「そうか……ならぼくの家に泊まらない?」
「は?」
「あ、いや、泊るところがないのなら今日はぼくの家に、と思って」
「……」
じーっとぼくの方が見てくる。そうだよね、こんなことを言うのは変なのかな?変じゃないよね?
「で、どうかな?」
「ん、まぁ、アンタがいいって言うんであればいいけど」
「うん、いいよ。じゃ、行こうか」
そうしてぼくたちは親にバレないように自分の部屋に着いて一日を無事に過ごした。だけど、翌日はまぁ当然だけど親にこの金髪ロングさんがバレル。
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