第5話 つむぎ
誘拐事件が、完全に膠着してしまい、どちらかというと、警察内部はおろか、肝心の当主の方も、
「本当に誘拐だったのか?」
と考えていた頃のことだった。
誘拐であなかったのではないかという疑いを警察は感じると、どうしても捜査に穴が出てくる。
それよりも、必死さが見えてこないのがまわりにも見えてきて、執権との間に溝が生まれてくる。
もちろん、
「被害者を救い出すという意味で。溝があるわけではない。温度差が感じられるというのは仕方がない」
ということであった。
それだけ時間が経つと、次第に疑心暗鬼になる警察と、疑いがあっても、当時者である以上、無視できない執権との間で、執権の方では、その距離を感じていたが、警察の方では、距離よりも、温度差であった。
距離の方が温度差よりも遠いと思っている執権とすれば、
「これは、警察は、真剣に考えているわけではないな? 国家権力で動いているだけで、しょせん、お役所仕事で動いているだけなんだ」
と考えるようになった。
もっとも、それも仕方のないこと。逆にこれが上からの命令でなければ、まったく対応していなかったに違いない。
ただ、変に対応したことで、却って警察への不信感につながったのは、後味が悪い感じもした。
執権とすれば、警察を最初から信用していたわけではないが、思ったよりも、その力が頼りないものであると思うと、失望もあった。
しかし、民主主義の警察というのも、結局はそれくらいの力しかないということも分かっていたので、
「まあ、しょうがないか」
という思いに至ったとしても、無理もないことだろう。
何しろ、相手の自由を奪ってはいけないというのが、民主主義。拘束力も、強制力もない。
さらには、プライバシーを尊重しなければいけないということもあると、それこそ、警察の力もかなり制限されるというものだ。
しかし、それでも、民間の探偵などに比べれば、捜査という意味での力はある。ただ、その力が、本当に資質と相まっているかということになると難しいのだろうと、執権は感じるのだった。
しかも、膠着状態の中では、どうすることもできない。相手に動きがないと、こちらも動けないというところがあるのか、捜査能力の限界が、膠着状態ではあらわになっているのだろう。
それを考えると、次第に焦りに繋がってきて、警察は、その焦りのピークが切れると、急に我に返り、緊張の糸が切れてしまうのではないだろうか?
ただ、そのために、警察側も、ジレンマのようなものができてしまったり、後味が悪いという思いがあったりするだろう。
しかし、今回は、誘拐されたと目される人が、行方不明のままというのは、いかにも後味の悪いことだった。
だが、執権から見て、
「これは警察もやる気がなくなっているな」
と感じてしまったことで、一度切れてしまった緊張の糸を、再度結びなおすというのは結構難しいことだと思っている。
警察の方も、何とか切らずにいられればいいと思っていたのだろうが、なかなかそうもいかないようだった。
そんなことを考えているうちに、事件はいきなり動き出した。
というのも、事件が動いたのは、犯人側からのアクションではなく、普通の民間人が、つぐみを見つけたことでの進展だった。
それを知らせてきたのが、警察でも特殊班からではなく、普通の所轄からであった。
「昨日、お嬢さんの死体が発見されました」
というショッキングな内容のものだったのだ。
それを聞かされた時の、社長の悔やみようというとなかった。
何しろ、頬を伝って流れる涙を止めることができなかったのだ。見ているだけで、警察官も、貰い泣きしそうだった。
そもそも、さっきまで、
「膠着状態で、どうしようもない」
と思っていた自分たちが恥ずかしいと思ったからだ。
「こんなことになるくらいだったら、もっと、真剣に捜査を考えればよかった」
と思ったが、後の祭りだった。
死体が発見されたのは、今は廃墟となった、昔の学校で、いわゆる放置状態だったという。
発見したのは、近所の子供だった。
その廃墟では、中学生がたまり場にしているようで、放課後には結構遊びにきているようだった。
つまりは、発見される、少なくとも2日前には、そこには何もなかったということであり、逆にいえば、死体を遺棄した人からすれば、
「最初から、発見されてもいいと思っていたし、前からそこにあったということが分かる必要もなかったということで、発見させたといってもいいだろう」
というのが、所轄の見解だった。
発見された時、まわりは争ったあともなければ、他に痕跡もほとんどないことから、
「他で殺されて、運ばれてきたようですね」
ということだった。
「死因は?」
と聞くと、
「絞殺されているようです。紐のようなもので首を絞められた跡がありますね」
ということだった。
「じゃあ、死亡推定時刻は?」
と聞かれると、
「死亡から一日は経っているようでした。だけど、犯人が被害者を隠さずに放置したということは、何か意味があるのかも知れませんね」
ということだった。
「確かにそうですね」
と、聞いた方は、警察内部で、誘拐事件というのが極秘だったことから、誘拐の上殺されたということを、今の時点で話すことはできなかった。
だが、誘拐捜査を請け負っていた方とすれば、
「誘拐をほのめかしておいて、最終的にどういう形であれ、最期を警察に見せないといけないと思ったということになるのだろう。結果としては、最悪の形ではあるのだが」
という考えであった。
「誘拐というのは、実にわりに合わない犯罪なのですが、だからこそ、犯人たちも、誘拐はしたが、どうしていいか分からずに、渋っていると、被害者に抵抗されたか何かということでしょうかね?」
と、捜査員の一人がいうと、
「それはないだろう。ここまでの大物の令嬢を誘拐しようというのだ。それなりの大きさの組織が動いているのだから、初めてしまった以上、そんな後戻りするようなことを考えるなど、ありえない気がするんだよな」
と彼の上司はそういった。
「確かにそうですよね。当然、事前調査、事前準備をキチンとしての犯行でしょうから、進んでしまうと、少々の行き違いがあっても、そのまま突き進むしかないわけで、最初からそのあたりの誤差も想定はしているんでしょうね」
と部下がいうと、
「それはそうだろう。向こうだって、警察が動くことは考えているだろうし、何しろ金があるわけだから、金に物を言わせて、いくらでも、捜査してくると思っていたのであれば、当然、それなりに入念な計画を立てるだろうからな。そうでないと、誘拐のようなわりに合わないことをするとは思えないからな」
と上司が言った。
つまり二人の間では、
「わりに合う合わない」
という発想が基準になっていて、それだけに、計画が入念であることが当然のごとく考えられていることだろう。
ただ、まさか結末が、
「死体発見」
ということになろうとは、それが無念なのであろう。
死体が発見されたところに向かったが、首を絞められて死んでいるその姿が、まったくの虚空を見つめていて、この世に何かの恨みを残しているようなその表情は、彼女の本当の顔を知らない警察の人間にも、彼女の変わり果てた姿を見た、よく知っている人間にも、溜まらないものだったに違いない。
「これ、本当に孫なんだろうか?」
と、当主が力のない声で呟いた。
知らない人が見れば、
「孫の顔を忘れたとでもいうのか?」
と言いたいほどであったが、
「それほど、彼女の顔は、知っている人の想定をはるかに超えた顔をしていたということなのであろう」
と思わせるほどだったに違いない。
警察も弘前家の人たちも、悔しさとやるせなさで、歯ぎしりしている中、これまで緊張感で押しつぶされそうだったのを必死で堪えてきたのか、当主の弘前氏が、ガックリとその場で倒れてしまった。
「大丈夫ですか?」
と皆が駆け寄ったが、すでに意識はなく、救急車で病院に搬送された。
とりあえずは、
「命に別状はない」
ということで一安心だったが、これまで気丈に振る舞っていた分、壊れると脆いものだということを思い知らされた気がしたのだ。
「ただ、予断は許されないので、集中治療室に入っていただき、面会謝絶ということにさせていただきます」
ということであった。
犯人の目的が何であったのかは分からないが、人質と目された女の子が死体で発見され、復讐される相手であったはずの弘前氏が、危篤状態ということであれば、さぞかし、犯人たちの目的は達成されたということになるのだろうが、この結果は警察としては、決して許されるものであるはずがなかったのだ。
警察としては、
「これは、ただの犯罪ではない。警察に対する挑戦だ」
ということであった。
しかも、問題となったのは、警察が、
「いくら、被害者の命に係わることだといっても、秘密裡に捜査を続けてきた」
ということであり、そこに、
「弘前財閥の娘という忖度があったのではないか?」
ということが問題となったのだ。
国家権力の私物化ということの問題は。昔から言われてきたことであったが、そういう意味で大きな社会問題となり、国会でも問題になったほどだった。
国会答弁でも、警察側は、弱い立場であり、ほとんど何も大きなことを言える立場ではなかったではないか。何しろ、被害者が殺され、犯人が逮捕されないどころか、どこの誰なのかも分からない。まったく雲をつかむような話に、国民が納得するはずもなかった。
警察は一気に悪者にされてしまい、面目も丸つぶれだった。
警察のそんな状態をよそに、
「人のウワサも七十五日」
といわれるがまさにその通り。
警察が自分たちのメンツを必死で何とかしようとしていたが、すでに世間では、もう別の話題に移っていて、警察の不祥事の話をしても、
「ああ、そんなこともあったな」
という程度であった。
それが、問題発覚から、七十五日どころか、二か月も経っていないというのだから、
「どんだけのスピードで世の中って進んでいるんだろうか?」
というほどだったのだ。
それこそ、どこかのタレントの口癖ではないか、
「どんだけ~」
とはまさにこのことであった。
「下手をすれば、お宮入りだ」
と警察でも考えていた。
何しろ、事件としての証拠も、事件に絡んだ人物も、表に出ている以外はまったく何も分かっておらず、動くこともできないのであった。
時間は少し前後するが、弘前財閥の事件が、世間で騒がれていた、その少し前くらい、デリヘルに勤めている女の子が、ちょうど人気の絶頂にあり、店でナンバーワンというだけではなく、地域でも、ウワサになりかけるくらいになっていた。
そういう意味で、店に電話で予約しようとしても、すでに埋まってしまっていたり、地域の風俗サイトで予約しようとしても、出勤予定が公開されてから、すぐにすでに埋まってしまったりと、超絶人気の女の子になっていたのだ。
彼女は源氏名と、
「つむぎ」
と言った。
年齢表記は21歳になっていた。宣材写真では、他の風俗嬢と同じように、口元だけを手で隠している様子だったが、目はバッチリ映っていたので、その目が人気のようだった。黒髪に肩まで伸びたロングヘアも似合っていて、最近はギャル系も人気であったが、やはり、黒髪ロングの正統派の美少女とくれば、人気が出るのも不思議ではないというものだ。
彼女がこの店で勤め始めてから、3カ月の経たない間に、人気はうなぎのぼり。入店して間もない頃は、毎日のように、8時間以上の勤務をこなし、いわゆる、
「鬼出勤」
といわれていた。
最初から、それなりに人気があったが、彼女の人気に火がついたのは、風俗の口コミや、レビューなどを書きこむ、SNSのようなサイトであった。
そこで、ほとんどの客が彼女を褒め称え、それが次第に話題になってくることで、最初の鬼出勤の間で、一気に客を獲得したというわけだ。
そのうちに、リピーターが増えてくると、今度は、少しずつ出勤を減らしていって、最近では、他の人に比べても、出勤がレアになってきた。
そうなると、
「伝説の風俗嬢」
とまで言われるようになり、
「現在、予約最困難嬢」
ということを謳うようになると、レア出勤でも、あっという間に客が埋まることになった。
ある程度まで新規の客を獲得し、鬼出勤をこなした彼女とすれば、今度はリピーター獲得を考えるようになった。
実際に、新規で入った人たちは、彼女の魅力に取りつかれたかのようになっていて、
「次は絶対に指名するよ」
といってくれていた。
実は彼女は、風俗歴はこの店が初めてではなかった。デリヘル業界は初めてだったが、それまで、ソープランドにいたのだった。
正直、表記された年齢というのは、ウソで、実際には24歳だった。しかし、ここでの3歳くらいの年齢詐称は、誤差の範囲であり、
「21歳が24歳だって、別に俺たちには関係ない」
と、リピーターのほとんどは思っていることだろう。
そもそも、風俗を利用している愛好家には、それくらいのことは分かり切っていることであり、別に気にもしていないだろう。
ソープ時代には、それほど人気があったわけではない。店でも出勤日の半分は待機時間だったくらいで、どちらかというと目立たないタイプの彼女は、固定のファンはいたが、ある程度、偏ったファンがいるくらいで、大衆ウケというわけではなかった。
だから、ソープに限界を感じ、デリヘルに転向したのだ。
ソープに通ってくれていた、一定のファンのうち、一部はデリヘルに変わった彼女についてきてくれたが、半分以上は、お店で、他のお気に入りを見つけて、そちらに移ったようだ。
彼女がソープをやめたのも、同じ店のキャストからの嫌がらせのような、誹謗中傷があったからだ。それも、相手が勝手に、
「自分の客を取った」
と思い込んだ勘違いから起こったことであり、相手が自分よりも先輩だったということもあって、つむぎの味方はいなかったのだ。
「あんな子に、誰が味方になんかなるもんですか」
といわれたものだが、それでも、自分の味方をしてくれる人は少数だがいた。
そんな人たちが、
「ここにいても、いいことはないので、他のお店に移った方がいいんじゃない?」
というので、急に身体の力が抜けた彼女は、他の人と争うことをやめ、店を退店していったのだった。
そもそも、お店を移りたいという意識はあった。だから、誹謗中傷を受けなくても、店は変わっていただろう。
しかし、移るとしても、どこかのソープだったと思う。それがデリヘルを選んだのは、はやり誹謗中傷ということが、それほど大きかったからなのかも知れない。
デリヘルというと、一番気になったのが、
「身バレの危険性」
と、
「相手がいるところに行く」
ということであり、理由は共通していた。
やはり、デリバリーで相手がいるところに行くというのは、今までは、ホームグラウンドだったが、今度は相手の城に乗り込むようなものであり、大いなる危険性があった。
まず一つは、
「身バレ」
であった。
客の中に自分の知り合いや、近親者などがいれば、店を辞めさせられる危険性がある。それは、女の子にとっても店にとっても厄介なことで、その後も問題のタネになりかねない。
だから、ソープなどの、店舗型であれば、待合室などに、モニターやマジックミラーを仕掛けることによって、自分を指名した客をそこで確認し、まずい人であれば、何とでも言って、接触を避けることができる。
しかし、デリヘルのように、相手のところに行くのであれば、完全なご対面の場面でしか、相手を確認することも、自分を確認されることもなく、すべてが手遅れになる。
「デリヘルを呼んだら、娘だった」
あるいは、まさかとは思うが、
「嫁だった」
ということもありえなくもない。
呼んだ方も、利用しているのだから、聖人君子のような説教が通用するわけはないのだが、立場的には圧倒的に、見つかった方が悪い。店を辞めさせられるくらいは仕方のないことではないだろうか?
さらに、相手がいるところに行く危険性は他にもある。
悪意のある客で、いくつかある禁止事項を女の子に強要しようとすれば、店舗型であれば、ベッドわきにある、緊急ボタンで、スタッフを呼ぶこともできる。
相手に強制退店を言い渡すこともできるし、出禁にだってできるだろう。ひどい時には警察につき出すこともできる。
しかし、相手のところに行くのであれば、相手が豹変しても、誰も来てはくれない。ひどい時に、ドラマなどで見たことがあるが、呼ばれて行ってみると、そこには複数の男がいて、もてあそばれているところを動画に取られ、脅迫を受けるなどという事件もあったりしている。
いくら、禁止事項と言っても、相手に動画まで取られてしまっては、言いなりになるしかなかったりする。
こうなってしまうと悲惨で、相手も組織ぐるみでやっていることだろうから、下手に警察に通報しても、警察は、実際に被害にあった証拠を提出しないと、動いてはくれない。
もし、恥を忍んで。
「動画に取られた」
と訴えても、その証拠の動画がなければ、警察は動いてはくれない。
それを思うと、女の子側はどうすることもできず、相手の言いなりになるばかりだったのだ。
そんな悲惨なことが起こりかねないデリヘルは、危険だと思うのに、これだけ世の中にデリヘルの店が多いというのは、どういうことなのだろう?
「前述の犯罪も、あくまでもドラマだけのことで、そんなことをする非道な人間などいない」
ということであろうか?
だが、いつ起こっても不思議のないことであるこんな犯罪は、起こってしまえばいかに発見し、解決できるのか、正直泣き寝入りしかない。肝心の警察が動いてくれないのだから、しょうがないことだろう。
そんなひどいと思える業界に、ソープからわざわざ移動するというのは、これらの危険性を分かっていないということなのか、それとも、
「風俗でしか生きられないが、ソープが無理だったので、一縷の望みをかけての生き残りをかけた勝負だ」
という思いでいるのだろうか?
だが、人生何がどうなるのか、分かったものではない。
彼女は売れっ子になった。源氏名を、
「つむぎ」
と変えたのもよかったのかも知れない。
お客さんのほとんど皆から、
「いい名前だね」
といわれたり、
「名前で選んだら、想像通りの、いや、想像以上の子が来たので、ビックリしたよ」
などとお客さんから言われて、嬉しくなった。
本人は分かっていなかったが、喜びの表現を表す時、
「悦び」
と同じくらいに、相手が大満足する反応に男は萌えるのだった。
そして、彼女は少しずつ、
「リピーター:
を増やしていく。
リピーターがついてくると、今度は、なかなか予約困難になってくる。最初は、それほどでもなかったのだが、正規のルートで出勤を上げるだけでは、1時間もしないうちに予約が埋まるなどというほどの大人気にはなっていないだろう。
そこには、
「姫予約」
という裏の方法があった。
いわゆる、リピーターや常連には、先に予約を入れさせるということだった。
前だったら、メールとかなのだろうが、今では、SNSというものがある、
ツイッターなどでは、普通なら、他の人、つまり不特定多数の人が見るところにしか書き込めないのだが、相互フォローをしていると、DMという機能があり、そこで1対1のやり取りができる。いわゆる、
「ダイレクトメッセージ」
と呼ばれるもので、たとえば、
「自分がいついつ出勤予定を上げるから、その時間になったら、すぐに予約して」
というように、入れておけば、相手が本人の都合に合わせて予約してくれるというわけだ。
そうでなければ、一人一人を相手にしてしまうことになり、時間がいくらあっても足りなくなってしまう。
そうやってあっという間にリピーターや常連さんに予定を埋められると、新規の客が、入り込む隙がないということになる。
新規を獲得したいときは、敢えて、姫予約をできないようにしておけば、誰もが公平に予約ができる。そうやって常連も大切にしながら、新規を獲得もしていけるというわけなのだ。
しかも、そういういつも、
「完売御礼」
の女の子は、黙っていても、店側が推してくれる。
店の宣材写真のトップい自分の写真を載せてくれ、店のロゴのトップにはいつも自分がいて、
「まるで自分が店の看板を背負っている」
ということになると、当然初めての客の目は自分に集中し、
「トップと、普通の女の子との差が、さらに激しくなる」
というものだ。
しかも、店が推している女の子に対しては、スタッフもいろいろ優先したりもするだろう。
ただでさえ、客からも推されているのに、スタッフからも推されるとなると、人気は最高潮だといってもいいだろう。
下手をすると、図に乗る子も出てくるだろうが、そうなると、店側も、
「女の子は他にいくらでもいる」
とばかりに、鼻につけば、すぐに追われる立場になってしまう。
キャバクラなどと同じで、生存競争、いや、ナンバーワンを目指す子はキリがない。本当であれば、
「ナンバーワンよりも、オンリーワン」
ということで、客に対してを考える女の子であってほしいと、スタッフは思っていることだろう。
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