八十八星戦譚
伊佐稜威
2025年:春
序章
2015年 3月某日
その日、星河市はかつてない危機に
美しい自然と近未来的科学の融合した都市、
連続的な隕石の落下、地盤の異常な
「大口叩いといてこれとかもう死ンだ方がいンじゃないのォ?ンなぁ【ブラック】」
「まぁまぁ、彼奴はよくやったと褒めてやろうぞ【ノヴァ】」
「……」
破壊されてゆく星河市の上空では、人型の生命体たちが浮遊していた。その姿は一目見ただけで危険だと理解させる輝きを放ち、異常すぎるこの惨状は彼らが引き起こしたものだと誰もが直観するだろう。
「でぇええええええりぃぁあああああ!!!」
そんな中、彼らに立ち向かう一人の男がいた。
彼は、燃え盛る街から上空へと駆けのぼり不敵に微笑む生命体たちへと突撃する。彼もまた尋常ではない輝きを放っていたが、彼の光は見たもの全て安堵させる、そんな優しい光だった。
生命体たちは迎撃の為各々の能力を発動させる。あるものは光が抜け出すことのできない超重力のブラックホールを発生させ、押し潰しそうとする。あるものは人間の観測出来ないエネルギーを広げていく。あるものは両手を広げるだけで、仁王立ちの態勢で男を迎え撃とうとする。
余談だが、ブラックホールの内部には密度無限大の領域が存在すると言われている。その領域は特異点と呼ばれ、吸い込まれてしまえば情報の観測すら
それ故に天体の仲間でありながら、漆黒の
だが、彼はそんなものに興味はないとばかりに突撃する。そのままブラックホールに吸い込まれた彼を押し潰し捻り殺そうとする…直後に彼はブラックホールを破壊して現れる。時空間が歪み、驚愕の表情を浮かべるブラックへと蹴りを叩きこむ。
「なにっ」
「コレはさっき殴られた分の500億倍の仕返しだっ、吹き飛べッ!」
「ぐはっっ」
蹴りを入れられ吹き飛ばされるのと同時に、残った二体の生命体も攻撃を仕掛ける。無口なものは観測する事の出来ないエネルギーで辺り全体を取り囲む。両手を広げたノヴァはその手を振るうことで目の眩むほどの爆発を引き起こし直撃させる。その破壊力は、地球上のどの兵器を使用しようと算出できないレベルの破壊力を秘めていた。
だがしかし。それでもなお。
「ここにて急に強くなるとか、そンなンあり?」
「・・・・・・!」
彼は無傷のままにそこに浮いていた。彼の周りには、88もの光が浮いており彼はその内の一つに触れると、巨大な獅子が現れる。その獅子は一吠えするとともに彼に向かい鎧となって同化する。
「これで仕舞だッ、二度と地球にやってくんじゃあねぇぞ、この迷惑な野郎どもッ!」
大きく拳を握りこむと、光を置いて行く速さで振り抜く。相対する二人は避ける間も無く、そのまま殴り抜けられる。その瞬間、大爆発が起こったかと思うと瞬時にその爆発は消え、残ったのは雲一つない綺麗な星空のみだった。
街の住人達は、街を救った恩人を探し出そうとしたが結局見つけることは出来なかった。
人類を襲い脅威をもたらした生命体たちが何故襲ってきたのか、そしてそれらから街を、地球を救ったヒーローの名前すら人々はその情報を得ることは出来なかったが、後に彼のことをこう称するようになる。
『星の英雄』と。
八十八星戦譚 伊佐稜威 @isaitu1312
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