第37話
「ねえ、結月」
「ん?」
「ウチら、修学旅行って東京じゃない?」
「そうだな」
「どういうところ回るんだろう? ウチ、部活とかしてないから先輩みたいな人いないし意外と知らないんだよね」
それを言ったら俺も帰宅部だし先輩らしき知り合いはいないので全くわからない。
「先輩はいないけど、それらしき人はいるし、しかも他校のことでいいなら聞いたことはある」
「同じ高校の先輩は知らないのに他校の先輩は知ってるんだ。なんかすごいねー」
「あん? 大したことじゃないよ。バイト先の連中だし」
「あー、なる」
一番上の話だと奥様たちだけど、彼女らも地元出身者なので修学旅行は東京と聞いている。
去年、そんな話で盛り上がってみんなで話したことがあったのだ。
「まず、東京の名を冠してはいるけど千葉の浦安ってところにあるテーマパークは鉄板らしい。全員が行っていた」
後は皇居、その近くにあるという国会議事堂に首相官邸。奥様方が東京タワーだったのに対し、大学生以下はスカイツリーが定番。
「上野恩賜公園周辺も行くって行っていた。なんかその場所って、周りに国立博物館とか科学博物館、美術館それに有名な動物園などなどがたくさんあるらしいんだ」
「すごいね、さすが東京。さすとうだよー」
「さすとう? まあ俺らのまちじゃ、文化施設ったら図書館と郷土資料館くらいしか無いもんな」
後は新大久保、渋谷、原宿あたりか。
他にもいろいろと名前はあがっていたけど、たくさんありすぎて覚えていられなかった。
「お姉さんのお家に泊まりに行くときに、どうせなら修学旅行では行けないようなところにも行ってみたいなと、思うんだけど―」
まあ、修学旅行の制約もないし、引率の教師がいるわけでもないから自由に行動はできるよな。
「東京へは行ったことあるんでしょ? 結月がウチをエスコートしていい所連れて行ってよ」
「いい所? 俺も東京のことは殆ど知らないぞ?」
俺が知っているのは姉ちゃんとそのカレシの和さんに連れて行って貰った何箇所かだけ。
まず姉ちゃんの家の近所にあるスカイツリー。歩いて15分か20分ってところで着いた。隅田川の向こうにあった浅草寺にも朝一の散歩で連れて行かされた。
夜はまたもや歩きで両国国技館の裏手の船着き場から東京湾クルーズに行ったな。あれはきれいで良かった。
後はあの頃はゲームばかりやっていたのもあって、秋葉原にゲームやグッズを買いに連れて行ってもらった。錦糸町の駅まで歩いて電車で二駅ほどだったと思う。案外と近かったのは覚えている。
帰る前日は姉ちゃんの職場がある京橋から銀座を回って最後は築地の場外市場で寿司をたらふく食わせてもらった。
身にしみて良くわかったのは東京の人、めちゃくちゃ歩くわ。というところかな。
こっちじゃ、ちょっとそこまででも自転車で行くし、オトナだったら自動車を出す。駐輪場駐車場が無い、若しくはあっても高額っていうのもあるのだろうけど兎に角歩かされた記憶は鮮明に残っている。
「えーじゃぁウチがリストアップするから一緒に行ってくれる?」
「一緒に行くくらいなら、変なところじゃない限りいいけど……」
「変なところって? 例えば?」
「……提案されてから答えるから」
和さんは姉ちゃんに請われるまま連れ立って銀座のランジェリーショップに入っていったけど、俺には絶対に無理だし。
そんなところに千春が行くとは思えないけど、どこでも着いていくっていうのは危険な約束になりそうなので素直に頷けない。
「ふーん。どーしても行きたくないところはあるんだね。まあ、ウチも余計なことに時間かける余裕はないと思うけど。ねぇ、ところで何日くらい東京に行くの。一泊二日とか?」
「姉ちゃんがお盆休み期間ならずっといてもいいって言っていたから、実際に行く日から三~四泊ぐらいじゃないか。姉ちゃんのお盆休み明けまで居ても問題なさそうだけど」
「そそそ、そんなに泊まってもいいの? お姉さんのお宅ってスカイツリーの近くなんだよね? あの辺りはお安いお宿でも一泊1万円前後するよ?」
「ん~あの辺ってそんなにするんだ。例えば、二人で三泊だとすると6万円前後浮くってことだな」
「そんなに軽く言わないでよー」
そうかな? そんなに気にすることでもないんじゃないかなぁー。
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