19

 しずくはのぞみと同じように子供のころから絵ばかり描いていてあまり学校で真面目に勉強していないはずなのにすごく頭が良くて成績も良かった。なんでも一度見たものは写真のように頭の中で記憶を再生することがでいるらしい。だからテストは簡単だったし、数学のような抽象的な思考もとくに気にすることなく生まれたときからできたといった。(その話を聞いてずるいとのぞみは思った)

 のぞみは語学なら自信があって母国語以外に数か国語の外国語を話したり読んだり書いたりできたが、それはしずくもできた。(やっぱりずるいと思った)

「しずくさんは天才さんなんですね」と洗い物をしながらのぞみは言った。

 その質問の答えは決まっている。「僕は天才じゃないよ」だ。実際にしずくはそう言って笑った。その笑顔を見てのぞみは胸がきゅんとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る