17

「森に来る前はどんな絵をしずくさんは描いていたんですか?」とパンをかじりながらのぞみは言った。

「人物画がほとんどだった。あとは静物画のデッサン。でも昔から風景画も描いていた。街の風景ばかりだったけど」パンにバターを塗りながらしずくは言った。

「君はどんな歌を歌っていたの? アイドルになる前のころはさ。どんな歌を歌い、どんな歌を聞いていたの?」

「そうですね。基本的には練習曲ばかりでした。比較的早い年齢でデビューはできたし、本当にありがたいことに応援してくれるファンのかたもいてくれました。その期待に応えるために練習ばかりしてました。好きな音楽と言うよりは必要な音楽ばかりを歌っていましたし、聞いていました」真っ赤なトマトを食べてからのぞみは言う。

「グルーではなくてソロというのは珍しいの?」しずくは言う。

「珍しいと思います。基本的にはアイドルはグループです。私にもグループを組むお話はありましたけど、事務所とマネージャーさんがお断りをしました。理由はそのほうが私のためになるとそう会議で判断をしたからだと思います」

「君はアイドルと言うよりはシンガーだと僕は思う」としずくはとても嬉しいことを言った。

「ありがとうございます。すごく嬉しいです。でも私の歌はシンガーと言えるほど力はありません。曲も自分では作れませんし、私はやっぱりアイドルなんです」

「君の声は天使の声だと思う」とのぞみをじっと見つめてしずくは言った。

「どうしたんですか? きゅうにたくさん褒めてくれて。なんにも出ませんよ」と顔を真っ赤にしながらのぞみは言う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る