第1話 ギャンブル依存症の母と、娘。_4

「暗号」「競馬」でWeb検索をすると、

馬の走る力を予測する以外の方法で、

勝ち馬を当てるための書籍や、情報が出てくる。


30年前に、母が買った2冊の競馬本も、

「競馬は作られている」とうたわれたものだった。


例えば、JRAなどの組織や、厩舎、騎手などが

赤字にならずに運営できるように、

「仕組まれている」ということがあったとして、

それを一部の人が分かるように暗号を仕込んだり、

決められた馬が勝つように走らせることについて、

必然性があるだろうか。

技術的にできるだろうか。


そう、疑うものだと思う。


また、ひとつずつ、是非を整理してゆけば、

実際にはありえないと判断できる。

 ※個人的には


競馬に限らず、宗教や、陰謀論などもそうだが、

論理的に判断できることと、

それを信じる/信じないはイコールにならない。


母についても、

論理的に説明をして「仕組まれている」ことを否定しても、

それが理解されることはなかった。


自身の理論を構築して、

実際に馬券を購入して、

少額にしても当たるという「成功体験」があれば、

それを信じるに足る実績になる。


 *


例えば、枠連でいくつもの馬券を、

何回も買い続ければいずれは当たる。

そうした実績が、喜びとともに記憶される。


すると、当たった理由は、

「仕組まれている」からだと理解する。


読んでくださっている人は、

まさか、そんな。

わたしなら、信じない。

そう、思われると思う。

わたしもそう思う。


でも、ある種の性格や、環境や、タイミング、

もちろん、家族のあり様によっても、

人が、およそありえないことを信じてしまう状況が

成立するということはあるのだ。




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