第1話 ギャンブル依存症の母と、娘。_5

「何が悪いんでしょうか」

カウンセラーが受話器越しに言った。

競馬を毎日続けている母についてだ。

10年程前のことだ。


JRAには競馬の依存症についての相談窓口がある。※今もある

ここは競馬をする本人が電話をして

カウンセリングを受ける先なので、

家族が電話をして

母ないしの依存を解いて欲しいと言っても、

あまり効果的なアドバイスは得られない。


ただ、わたしは

文字どおり藁にもすがる思いで、

JRA のカウンセリングセンターに電話をした。


ここでカウンセリングを受けるには

事前に予約が必要で、

電話をかけてすぐに話を聞いてもらえる訳ではない。

また、年間に相談回数が決まっている。

 ※当時5〜6回/年だったと記憶している

即対応ができないことと、

予約日時に電話をしなければいけないこと。

このふたつはかなり不便に感じられた。


病院の心療内科や、精神科にゆくことを考えれば

こうした手続きはあたりまえのことだが、

予約時間に電話をかけるというのが、

守れないときもある。


また、手続きを経て

カウンセラーに話ができたとしても、

本人からの電話でないと

競馬にお金を使うこと自体は、

本人の自由であり

問題行動ではないので、

やめさせる根拠に乏しく、

なにかアドバイスをもらうことは難しかった。


母の競馬依存症を疑い始めてから、

ネットで相談できる公の場所を探し、

JRAなどの主催者側の相談窓口に電話をかけた。

しかし、本人が自ら治療に向かわないと、

状況を動かすことはできなかった。


そこから、しばらくの期間できることがなかった。


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