第9話

テラside


広々としたエレベーターに乗り込むとケイトはまた、私の頬に軽くキスをし私はくすぐったくて肩をすくめた。


T「ケイトは…チャラ男なの?」


K「チャラ男かと聞かれるとそれは違いますね…なんでですか?」


ケイトはエレベーターからカジノで遊ぶ人たちを見下ろしながらそう言った。


T「なんでって…付き合ってもない私にあんなこと平気でするから……。」


私がそう言えばケイトの視線は私へと戻り、グイッと私の腰を引き寄せて私の頬にケイトの鼻先がかすめる。


K「告白ってそんな重要ですか?」


T「え…そ…そんなの当たり前じゃん…」


K「なんで?」


T「なんでって…だってそれは…普通は告白をして付き合ってから手を繋いだり抱きしめ合ったりキスをしたりするでしょう?」


K「誰が決めたの?」


T「き…決めたとかじゃなくて世間一般ではそうじゃん…ケイトは私と違ってそういう事には真面目だと思ってたし!」


K「私と違って…って事は…テラさんは俺以外と付き合ってもないのにキスしたり寝たりした経験…あるんですね?」


ケイトにそう問いかけられた私はつい…言葉に困り、ケイトから視線を逸らして自分の腰に回るケイトの手を振り払おうとするが、ケイトの力が強くてさらに腰を引き寄せられ…私とケイトの体が密着する。


K「ねぇ答えなよ。他の男ともこんな経験あるのかって聞いてんの…拒む事だって出来たのにテラさんはいきなり俺にキスされても平気だったじゃん…」


ケイトはニヤッと笑いながら私に問い詰めるようにそういうとエレベーターが階に着いた事を知らせた。


ケイトは私の答えを聞く事なく、ゆっくり私の腰に置いていた手を私の手に繋ぎ合わせ、私を少し引っ張るようにエレベーターを降りるとさっきまでいたジニさんの部屋に向かった。




ケイトside


ある夜


俺は表向きの仕事である高級Club経営者として月に一度、店を訪れ店内を見回り店長たちを集めてミーティングをし、少し遅れてカジノへと向かった。


いつものノリでジニさんの部屋に入り俺は思わず固まった。


そこにはテラさんが身を縮こめて座っていたから。


あぁ…もう俺がこの世界の人間だってテラさんにバレるんだな…そう覚悟したのに焦ったジニさんが「カジノのバイト」なんて言うから、もう余計なこと言わないでいいのに…もう素直に言いたかったのに…そう俺は内心思った。


話を聞けば、俺たちの組の下っ端が調子に乗りテラさんとヨナさんに絡んだと聞いて、俺は怒りのあまりテラさんがいると言うのに若頭としての血が騒いでしまった。


ジニさんが慌ててフォローしてくれたけど…


隠すことが辛くなってしまった俺にしてみればもう…


この気持ちと一緒にテラさんへ全て伝えた方がいいと思い始めていた。


J「そうだ!ヨナちゃんまだ、目を覚ましそうにないしさ!せっかく下にはカジノがあるんだしケイトがテラちゃんを案内してあげなよ!」


ジニさんが気を利かせそう言うと、テラさんは俺の顔色を伺うようにあの綺麗な瞳で見つめるので、俺はテラさんの手に持つグラスを取り上げるとテーブルに置いてテラさんの手をギュッと握った。


テラさんの返事を聞く前に歩き出したのは行きたくないと拒まれるのが怖かったから。


今までどんな状況になっても恐怖なんて感じたことがなかったのに俺はこの時初めて…


親父の言った「愛する人が弱みになる」の意味を少しだけ理解した。


つづく

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