第6話

テラside


部屋の扉を開け中に入ると、男は私を椅子に座らせ、縄で私を縛り付けヨナをベッドへと投げ捨てた。


そして、その男はニヤニヤとしながら私の前にしゃがみ込んだ。


*「今からお楽しみだからな?お前もあとで十分楽しませやるからそこで待ってろ。」


T「はぁ?離してよ!その子に触ったら殺すから!!」


*「金よりも身体で払った方が早いだろ?減るもんじゃあるまいし!値打ちこくなよ!?」


その男は私に威嚇しながら怒鳴り散らし、横にあるテーブルを思いっきり蹴り飛ばした。


「おいおい騒がしいな…何事?」


何者かが部屋の中に入って来ると部屋中にいる男たちはその声と同時に顔色を変え、姿勢を正し身なりを整えるが……


なぜか私にはその声に聞き覚えがあった。


*「ジ…ジニさん!!いつの間に戻ってらしたんですか…今日はここに戻らないはずじゃ…」


J「ん?俺が戻ったらダメなの…?」


ジ…ジニ…さん?


その名を聞いて私は恐る恐るチラッと視線を向けると、そこにいたのは紛れもなくいつも私たちに優しい笑顔を向けてくれ楽しませてくれるジニさんで、私は驚きのあまり思わず開いた口が塞がらないまま静かに視線を逸らす。


ジニさんはまだ私の存在に気付いていないのか、男たちと話を続けていて私は視線を逸らしたまま聞き耳を立てた。


*「いえ…そう言う意味では………」


J「俺のいない間に女を連れ込んでお楽しみタイムでもするつもりだった?」


いつもの明るくて楽しいジニさんはそこにはいなくて、落ち着いた声で淡々とそう話すと、男たちの目の前に立ちとんでもない震えるような威圧感を放っていた。


*「い…いえそう言うわけでは……ウチの車にキズを付けたんで…その弁償を……」


J「身体で払わせるつもりだったんだね?へぇ〜俺のいない時に俺に報告もせず勝手に身体で弁償させるつまりだったんだ。お前いい根性してるね?」


そう言うとジニさんはカツンカツンと革靴を鳴らし、意識を失ってベッドに横たわるヨナに近づき顔を覗く。


すると、今まで無表情だったジニさんの顔は急に険しくなった。


J「誰だ…彼女を殴って気絶させたのは…」


*「そ…それは…」


ここにいる全員の視線により明確となったその犯人が下を向くと、ジニさんはゆっくりとその男の前に立つ。


J「誰が彼女を殴ったのかって聞いてるんだけど?」


その声が今までと明らかに違うことが私にも伝わり、部屋中の空気がピーンと張り詰める。


ジニさんに睨みつけられている男は恐怖からなのか、汗が噴き出しプルプルと震えていた。


J「よりよって彼女に手出すとは…お前…俺に殺されてぇのか?」


その静かな声はまるで蛇が獲物を絞め殺していくような息苦しさを覚えさせ、私の身体まで震えあがらせる。


J「命が欲しかったら…今すぐここから消えろ。」


ジニさんの言葉を聞くとその男は震えながら逃げるように部屋を出て行き、ジニさんはヨナの元に戻り、優しくヨナの頬を撫でて意識のないヨナを抱きかかえた。


J「ほら、彼女の縄を外せ。」


まだ、私のことに気付いてないジニさんの言葉により私の縄も外されると、ジニさんはゆっくりと私の方を振り向いてその目が大きく見開く。


J「テラちゃん…だったのか…?と…とりあえず行こう。」


T「え…はい…」


縄を外された私はヨナを抱きかかえたジニさんの背中について行き、大きな廊下を歩いて部屋の中に入ると、そこはまるで高級ホテルのスイートルームのようで私は思わず顎が外れそうになった。


J「テラちゃんは?怪我してない?」


ジニさんはふかふかの天蓋付きベッドにヨナを寝かせると、そっと優しく布団をかぶせながら私に言った。


T「あ…はい…なんか私が…あの人たちの車を傷つけちゃったみたいで…すいません。」


J「あいつらの車なんて大した事ないから気にしなくていいよ。こっちこそ怖い思いさせてごめんね。ヨナちゃんが目を覚ましたら帰っていいから……」


ジニさんはそう話しながら私にアイスミルクティーをそっと前に出してくれた。


J「よかったらどうぞ…」


T「ありがとうございます…」


ヨナがまだ意識を取り戻さないせいでジニさんと2人っきりで気まずい空気を過ごす私…


普段、店に来てもジニさんはヨナと話してるだけだから私とはまともな会話をした事がなくて、私はだだっ広い部屋の中をキョロキョロと見ることしかできない。


気まずい沈黙のなかジニさんにこの状況を聞くべきなのか、聞かないべきなのか1人悩みながら私がミルクティーをチューっとストローで飲んでいると…


トントン


扉をノックする音が聞こえた。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る