第5話

テラside


カードに書いていた住所付近についた私たちは、こんな煌びやかな街は私には到底無縁な場所だな…と思いながら歩いている。


慣れない居心地の悪い街をキョロキョロと見渡し、ヨナとくっ付いて歩いていると私は思わず人とぶつかってしまった。


T「痛ッ…あ…すいません…。」


吹き飛ばされるように尻餅をついた私はお尻を撫でながらヨナに手をかり立ち上がると、目の前には怖そうなお兄さん達が私とヨナのことをマジマジと見ていた。


「姉ちゃん…どこ見て歩いてんだ?あぁん?」


T「す…すいません…」


私が震える声でそう頭を下げても、怖そうなお兄さんたちは私たちを取り囲むように立ち、私とヨナは身動きが取れなくなった。


「すいませんで済むとでも思ってんのか?姉ちゃんのせいで車に傷が付いただろ?」


そう言って私の後ろにある車を顎でさし、恐る恐る私がその車を見ると、そこには高そうな車が止まっていて、転んだはずみでカバンがぶつかったのか車のボディに薄らと微かに傷が付いていた。


Y「本当にすいません。修理代は出しますので。」


ヨナは私を庇うように私を背中で隠しそういうと1人の男が言った。


「金には困ってねぇんだよな…俺たち。」


そう言ってその男はヤラシイ顔をしてニヤニヤと笑い出し私たちを上から下まで舐めるように見ている。


Y「じゃ、どうしろと?」


「ふんw身体で払ってもらうか。俺たち丁度、色々と溜まってんだよね〜」


男がそういうと後ろにいた仲間たちが私とヨナの両腕を掴み、口を塞いで引きずるようにして私たちはどこかへと連れて行かれる。


どんなにもがいても複数の男に腕を掴まれてしまえばその力には敵うはずもない。


私の目からは恐怖から涙が溢れ、チラッとヨナを見るとヨナは抵抗したせいか、男たちに溝落ちを殴られ気絶し、男の肩に担がれていて私たちはとあるコンクリートの建物の前に連れて行かれた。


1人の男がコンクリートの壁にあるボタンを押すと、近未来的な謎のディスプレイが現れ、緑のレーザービームで男の顔をスキャンするとコンクリートの建物は鈍い音を立てながら開く。


私はその光景に驚きながらキョロキョロと見渡すが、口を押さえられているのでどうしようもない。


半分諦めながら中に引きずられて入るとそこには……


コンクリートの外観からは想像も出来ないほど煌びやかな世界が広がっていた。


ここは…まさか…カジノ?


至る所で高そうなスーツや高そうなドレスに身を包み、目の前にいるスタッフに大量のコインのようなモノを渡している人々。


すると、そのスタッフはトランプに手を掛ける。


数えきれないほどの人数の人たちが所狭しと金を掛け酒と共に遊んでいて、天井をみあげると遥か高くにキラキラとシャンデリアが輝いており、大きな螺旋階段が娯楽を味わう人々の中心で存在感を示している。


すれ違う人々は捕らえられているはずの私なんかが見えないのか、高そうな宝石をギラつかせ賭け事に夢中だ。


私たちは奥にある金色に輝くエレベーターに連れて行かれ、押し込むようにして乗せられると、そこからは酒を飲み歓喜をあげ酒と金に酔っている人たちが一望でき、私の知らない世界があるのだとその時、この光景を見て知った。


*「降りろ。」


チンっと音を鳴らし着いたエレベーターの先がどこなのか私には分からない。


ただ、下で広がっていた煌びやかな世界とは違い、静かな雰囲気が広がっていてさらに私を怯えさせた。


つづく

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