対決! 裏切りの果て!

 1


 場面は変わって殺人現場。

 墓標の如く林立した高層マンションの日当たりが悪いフロア。

 日常と異常を隔てる境界キープアウトテープを二人がビル風で揺れる。

「遅かったじゃないすか。NTR発見即射殺課のご両人」

 薄汚れた帽子を目深に被った血色の悪い青年、検分識けんぶんしるすが特別捜査班を迎えた。

「いつもいつも厭味ったらしいガキだなお前」

「だったら現場の検分が終わる前にきてくださいよ課長さん」

「なんだとこのヤロウ!」

「まあまあ落ち着いてくださいよー弾さん」

 剣呑な気配を滲ませる二人。それをすかさず止めに入る奪。

「クソがよ……」

「奪くんがそういうなら矛を納めましょう……」

 奪の対人基礎スキル、折衝者バランサーが二人の対立状況をリセットする。何を隠そう奪もNTRバトラーである。


「これ捜査資料ですガイシャさんは奥に」

「いやに準備が良いなガキ」

 A4のペラ紙に印刷された捜査現場の概要が二人に渡る。

「あー隔離部署おけらのご両人がこの案件に関わるの初めてなんすね。連続殺人事件なんで組織さくらだもんは、上から下に案件の迅速な解決クローズに躍起なんすよ」

「それで一課から俺たちにお鉢が回ってきたと……」

「理解が早くて助かります課長さん」

「行くぞワンこう!」

「邪魔するっす」

 ずんずんと重い足取りで事件現場に踏み入る弾。しるすに敬礼をし軽やかな足取りで弾に続く奪。その二つ背中を識が見送る。


 都市という化物が抱える病巣に二人の狂犬がいま挑む。


 2

「凄惨すね」

「だな星の殺し甲斐かいがあるぜ」

 悪臭芬々。乙女の裂かれた腹から臓物もつが覗く。

「仏さんの名前は周防猫すおうまお大陸あっちの組織のボスの孫みたいたっすよ」

「そりゃ質面倒しちめんどうだな……外事の奴らに獲物を横取りされかねん」

「弾さんやめてくださいよ余所様とドンパチなんてー」

「NTR野郎をばらす邪魔してくるってんなら、俺はやるぜワン公よ」

 醜悪な笑みを浮かべ、奪の頭をグシャグシャと弾は乱暴に撫でる。

「ああセットが」

「手前はモデルか? 色気付いてんじゃねえッ!」

 弾は奪の頭を叩く。


「いてて……ところで弾さん、この現場って資料が本当なら」

「密室って奴だな。ったくよそういうのは小説の中だけにしとけやボケが」

 弾は遺体に渾身の蹴りを叩き込む。

「ああ仏さんがぁー」

「どうせ地獄行きに決まってらぁ粗末に扱っても……ん? ――――おかしいだろ?」

 眉間に皺を寄せる弾。

「なにがです?」

「ワン公……なんで? 普通回収されてんだろうが」

 本来あり得ない異変、それは弾が指摘する通りであった。しかし弾はNTR案件で発狂バチギレを催していたため、現着の段階で一切気付いていなかったのだ。

「弾さん! これNTRバトラーの能力ですよッ!」

「畜生め! おい見てやがるな! おいこのヤロウ!!!!!!!」


 3


「あっちゃあバレちゃいました?」

 しるすが二人の後ろに現れた。

「俺としたことが催眠スキルなんてインチキに騙されるなんてな」

 ズドン。

 振り向きざまにショットガンが火を噴く。


「それはボクの残像ですよ」

 横薙ぎの蹴りが弾の脇腹に入る。

 識は催眠特化型のNTRバトラーである。

 銃で狙いをつけるのは至難。

 無能力者の弾であっては歯が立たない。


「弾さん!」

 壁に叩きつけられた弾がずるりと床に伏す。


「てめえ! 俺の上司に何しやがるッ!」

 奪の怒声がビリリと空気を震わせる。

「何をするって? 復讐に決まってるでしょ裏切者」

「赦せねえ!NTRは人を傷つける道具スキルじゃねえッ! オレとバトルファックで勝負だッ!」


 4


 そのバトルファックは苛烈、熾烈、鮮烈。

 一方的な奪の性技せいぎが悪を砕いた。

 ケツ穴から白く熱い液体を垂らし悶絶する識が床で痙攣をしていた。


「コイツはたまげたな」

 弾が意識を取り戻す。

 ズドン。ジャコン。ズドン。ジャコン。

 容赦ない止めの弾丸が敗北者の命を散らした。


「おめえも俺の獲物だったのか。冗談じゃねえな」

 リトルシガーに火をつける。

「この煙草こんなに不味かったけか? まぁいい俺はなワン公、あの時クソ女を寝取られた時よりも正味ムカついてんよ」

 運命にバディを寝取られた男がショットガンに殺意だんがんを込める。

 コッキングレバーが引かれ弾の人差し指が引き金に添えられる。

「犯してみろよNTR野郎ッ!」


 完








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NTRバトラー奪! 鮎河蛍石 @aomisora

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