第2話 文芸同好会発足!
高校生活にも慣れ、部活をどうするかをクラスメートと話すことが多くなった。佳苗は「わたしはもちろん美術部。」、そして最近仲良くなった才賀美月ちゃんは「中学校では水泳部だったから、そのまま続けるつもり。」、そして美月ちゃんの友達の八代千晶ちゃんは「わたしはまだ考え中。中学校時代はやりたい部活無かったから帰宅部だったの。」と。皆それぞれ考えてるんだ。私は…と言うと何も考えて無かった。運動はあまり得意ではない。中学校時代は家庭科クラブで手芸や調理実習をやっていた。でも今の高校には家庭科クラブは無い。どうしようかと悩んでいると、佳苗が「花ちゃん、同好会を立ち上げてみたら?花ちゃんみたいな文学好きが他のクラスにもいるかもしれないし。図書委員になればキッカケができるかもよ。」と言った。そうか、図書委員!今日は委員会決めがある。私は「何としても図書委員になる!」と心に決めてロングホームルームにのぞんだ。クラス委員、生活委員、保健委員と次々と副担任の先生が板書していき、担任の先生が「希望する委員会がある人は?」と言ったので、私は真っ先に手を上げ、「図書委員希望です!」と言った。すると「私は生活委員希望で。」、「保健委員希望で。」「ボランティア委員希望します。」「放送委員希望で。」と次々に決まっていった。残るのはやはり学級委員長。責任重大だからあまりやりたがる人がいないのは中学校時代も同じだった。最後は推薦で学級一の優等生、金井光君に決まった。そして男子の図書委員は相川貴紀君。彼のお父さんは出版社の編集の仕事しているんだそうで、本が身近にいつもある生活なんだそうだ。彼も将来は作家を目指していて、作品を書き溜めているとか。そうして話をしているうちに、彼が「学校に文芸部があればなあ。でも後輩の勧誘難しいしな。」と言った。私も「私も部活悩んでて。それで、部じゃなくて同好会と言う形を取れば良いんじゃないかなって友達がアドバイスくれてね。他のクラスに私達みたいな文学好きが集まれば良いかなって。」言うと、相川君は「俺達でやってみないか。」と言ってくれた。「そうしたらまずは他のクラスの図書委員と会ってからになるね。」「そうだな。小説に限らず、詩や俳句、短歌やるのもいるだろうしな。俳句や短歌の甲子園あるから隠れた才能持っているヤツもいるかもな。」「そうだね。私は今童話書いてる。先島さんが絵を描くから、2人で絵本作って子供達に読み聞かせして感想聞いてみようって話しているの。」「へー。そいつは面白そうだな。出来たら俺の親父に見せてやってくれよ。編集の仕事してるからアドバイスくれるかもだし。」「本当!?その時はよろしくお願いします。」と話が盛り上がっていった。相川君とも連絡先を交換して、お互いの作品の話をするようになった。でも、彼とはあくまでも文学仲間の友達だ。佳苗や美月、千晶から「何かすごく良いカンジに見えたんだけど〜。」と冷やかされたけど「違うよ~。文学仲間が集まる同好会を立ち上げる話をしていたの。」と話すと佳苗が「マジ?良かったじゃん。部活悩まなくて済むよ。あとは顧問の先生だね。」「その前に人を集めないと。同好会もある程度は人数必要なはずだし。」と千晶。「そう。それが問題。だから他のクラスの図書委員にも声かけてみるつもり。」と私が言うと、美月ちゃんは「図書委員だからといって書く人がいるとは限らないけど、まずは一歩前進だね。賛同して応援してくれる人が出てくると良いね。」と言ってくれたので何かすごく力が湧いてきた。帰ってから相川君に友達とのやり取りを伝えると、美月ちゃんの意見に賛同していた。確かに図書委員だからといって書くことが好きだとか作家を目指しているとは限らない。ただ読むのが好きだというのが大多数だろう。少し不安になりながらも初委員会の日を迎えた。そう言えば高校の図書室は初めて入るな。図書委員長は3年生の羽瀬龍二さん。いかにも真面目そうな男子で、ちょっと厳しそうな雰囲気をしている。副委員長は橘優奈さん。名前の通り、優しそうな先輩だった。「物語に出てくるお姫様ってあんな感じだよね~。」なんて考えながら、委員会の仕事についての説明を聞いていた。委員の仕事は、まず図書の貸出、返却された本の整理、おすすめ図書の紹介、沢山本を借りている人の表彰もするんだって。「やはり読むのが大好きな生徒が圧倒的大多数で、書く方はなかなかいないよね…。」とぽつりと呟くと、相川君が「まあ、まだ初日だし。他のクラスの委員と仕事していればキッカケが掴めるかも知れないだろ。」と言ってくれた。私はそうだねと返事はしたけど、内心不安だらけだった。
図書委員になって一週間が経ち、ある日、私は一年C組の図書委員の女の子と昼休みの図書当番をしていた。貸出受付待ちをしながら童話のあらすじをノートに書いていた。すると、「何書いているの?」と彼女―原美千香ちゃんが小声で聞いてきたので私は「童話よ。同じクラスに絵が上手な子がいて、その子と絵本作ろうって言っているの。」と言うと、美千香ちゃんは「すごいね。私は演劇部なんだけど、劇の台本とか書いてみたいなって思っているんだ。でも、何か身構えちゃって。」と言った。私は今がチャンスかもと一か八かで彼女に「確かに書くとなると何か敷居が高く感じると思う。でも、自分の思う事をそのまま文章で著せばできると思う。ありのままの自分の考えをノートに一度書いてみたら良いかもよ。実は私のクラスの図書委員の男子と文芸同好会を立ち上げようかと思っているの。ジャンルに関わらず、読んだ本の感想を話し合ったり、小説やエッセイや詩や短歌、俳句、童話…。何でも書きたいなら書いたり。もし良かったら演劇部無い時に活動してみない?」と誘ってみた。彼女はしばらく沈黙したあと「そう、そうだね。ざっくりだけど何かできそうな気がする。私、やってみるよ。自分のオリジナル演劇になりそうなストーリー書いてみたい。同好会入るよ。」と言ってくれた。私は内心「やった!やった!」と大はしゃぎでいた。美千香ちゃんにもし文学好きな友達がいたら自由に連れて来ても大丈夫と伝え、彼女と分かれてクラスに戻った。帰りに佳苗や美月、千晶に話すと3人とも「良かったね!一歩前に進んだじゃん!」と喜んでくれた。帰ってから相川君にも美千香ちゃんの事をLINEすると、相川君も「マジか!俺も勧誘負けてらんねえな。」と返事がきた。男子も入ってくれれば何か考えの幅が出そうな気はするね。なんて考えながら私は童話のストーリーを書き始めた。構想が浮かんだらストーリーが次々と湧いてきて書くのが止められなくなった。ラストまで書き上げて、時計を見たら夜の10時を回っていた。さすがに疲れ、私はベッドに入ってぐっすり眠った。翌朝、学校で佳苗に書き上げたストーリーを見せた。佳苗は読み進めると「花ちゃん、すごい!子供達が聞いたら何度でもせがみそう。じゃあ私もイラスト考えるよ。」と言った。私は「美術部の活動あるでしょう。無理しないで大丈夫だよ。」と言うと、佳苗は「美術部の活動の間に描くのよ。上手いことやるから心配しないで。こんな楽しい事無いんだから。」と笑った。お昼休みになって、相川君が図書当番で出ていった。わたしは学校の図書室をゆっくり見ようと思い、お昼を済ませると図書室へ行った。どんな本があるかな。ママの本はさすがに無いだろうけど。本棚をゆっくり見て回って、好きな小説を数冊借りることにした。受付カウンターに持っていき、当番の先輩が手続きをしてくれた。本を持って教室に戻ろうとした時、先輩が「何か文芸同好会を立ち上げる計画してるんだって?実は俺、俳句や短歌作ってるんだよ。あとは詩も少し書いててさ。一年生だけじゃ心許ないだろ?俺も一年生の時に活動したかったけど、人が集まらなくて結局挫折した。でも、今年の一年生は中々やると見ていてな。俺も同好会入るよ。あ、まだ名前言ってなかったな。2年B組の牧野修一郎だ。活動するなら図書室押さえてやるから、活動する曜日や時間の話し合いしないとな。」と言った。「先輩が入ってくれれば頼もしいだろうな。」と思い、牧野先輩に是非と言って教室に戻った。こんな幸せ続いて良いのかな。わたしは帰る前、相川君に話をし、先輩が入ってくれることを伝えると「よし、まずはこのメンバーで活動しよう。まずは第一回目の同好会の活動の日取りだな。金曜日の必修クラブの時間を充てたら良いんじゃないか?かけ持ちの生徒はそうしているらしいし。」と言うと「そうだね。一番ベストだね。じゃあ美千香ちゃんと先輩に伝えよう。」と言って相川君と別れた。
週明けの月曜日に美千香ちゃんには私が、牧野先輩には相川君が金曜日の必修クラブの時間に文芸同好会の第一回目をやることを伝えた。先輩が金曜日の必修クラブの時間に図書室の使用許可を押さえてくれ、いよいよ金曜日の必修クラブは時間―私、相川君、美千香ちゃん、牧野先輩、そしてなんと橘先輩と羽瀬先輩まで同好会に入って下さった。最初の挨拶ではないけど、私が簡単に「文芸同好会の活動に賛同、参加して下さり、ありがとうございます。基本は書く活動がメインですが、書いている作品の感想やおすすめ図書の紹介などは委員会の活動にも繋がると思いますので、アイデア等がありましたら皆で遠慮なく話し合いたいと思いますので、よろしくお願いします。」と言うとささやかな拍手が起こった。活動に入ると羽瀬先輩が仕切って下さり、私は今書いている童話を取り上げた。牧野先輩は書き溜めていた短歌や詩、俳句を、相川君は書き溜めていた小説、美千香ちゃんは考えている劇のあらすじを話してくれた。色々話をしているとあっという間に時間はあっという間に過ぎた。羽瀬先輩が「図書委員だけでなく、他の部活や委員でも本好きがいるだろうし、図書室の掲示板に文芸同好会のポスターを貼っておいても良いかもしれないな。」と言ってくれた。「良いんですか?」「ああ。生徒会長は俺と幼なじみだしな。ポスター貼る許可は任せておけ。」「ありがとうございます!」頼もしい先輩も巻き込んでこうして文芸同好会はスタートしたのだった。
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