第3話 : 身の清め方

「こちらです」


 ジョナさんに案内された部屋は教会附設の迎賓館にある一室でした。

 教会の中にそんな建物があることなぞ想像したこともありませんでしたし、今までは拝堂の隣にある小さな小屋で雑魚寝の共同生活をしていましたから、個室が与えられる日が来るなんて考えたこともなかったです。


「『祝祭の聖女』様には相応しくないかも知れませんが、今はこちらでお願いします」


 んっ、『祝祭の聖女』ってどういうこと、さっきもそんなことを言われていたような……まあいい、あとでわかるでしょう。

 それよりもこんな凄い部屋を一人で使うなんて──私の中でこれは何かの間違いだろうとか、朝になって目覚めたら誰かと雑魚寝をしているんじゃないだろうとか、明日には背中に翼が生えて、頭に光輪があったらどうしようとか、そんなことを考えてしまいます。


 とりあえず身を清めて欲しいと言われ、入浴を促されますが──部屋の中に専用の浴室があります!


 今まで神父様の部屋にある浴室を週に二度ほど使わせて貰っていたのですが、浴槽は子供二人しか入れませんし、お湯も一人でタライ一杯しか使えませんでした。

 薪は貴重品で、神父様も私達と同じ頻度でしかお風呂には入れませんでしたから贅沢は言えないのです。それがここだと二十四時間風呂だとか! ジョナさんの話だと魔力でお風呂も照明も常に使えるようにしてあるので気にしないで良いと言われました。一生分の贅沢をここでしてしまっている気がします。


 脱衣場まであって、そこには純白のタオルが下げられていました。今までは何時擦り切れてもおかしくないタオルを皆で使い回していたというのに……



 全裸になり、身体を洗おうとしたら、ジョナさんが入ってきました。


「お背中を流します」


 え、そんなことするの?

 そう思い彼女をマジマジと見ればほぼ全裸、正確には胸当てとパンツは穿いていますが、何の意味があるのかと言うほど小さい物しか身に付けていません。

 そして──スイカほどもあろうかという大きな乳房がボヨヨンとあり、下からは縮れた毛が少しはみ出しています。それはさておいて──大人の女性とはこういうものかと見惚れてしまうほど美しいです。


「いかがですか」


 彼女がしているのは、私の身体の「手洗い」です。

 タオルを使わず、掌で身体を撫でながら洗っていきます。ここには石鹸がないので、軽い浄化魔法でも掛けてあるのでしょう。汚れが落ちていく感覚がハッキリありますから、ジョナさんは治療系の魔法が使えるのだとわかります。 


 そして……クニュという柔らかい物が背中に当たり、それが上下に動いていきます。

 あれ、これ、手じゃない。振り返ると、


「いかがです。殿方だと喜んで頂けるのですが」


 顔が近いし、身体が密着しているのが良くわかります。彼女の息遣いだけでなく、背中から鼓動も感じられます。


「えっ、そんなことまでして頂かなくても」


 殿方が喜ぶかどうかは別として、そもそも付属施設とは言え教会に関連する場所でこんなことをしてよいのでしょうか。全力で否定したいところではありますけど、ここにはここのルールがあるのでしょうからそれ以上は言えません。


「それならばもう少し洗わせて下さいませ」


 そう言って彼女は私の前に跪きます。椅子に座っている私と目線の高さが同じなのが悲しい。


「あ、あ、ああっ……そんな」


 両手を背中に回され、巨大な胸が私のペタンコなものと合わさります。

 そして彼女はカラダを上下させ、私の汚れを落として……流石にこれはダメです……そう思いながらも感触は最高なのですけど。


「あの~、もうその辺で充分です」

「私はまだまだ行けますが」



 その後、ジョナさんに聞いたところ、彼女はサキュバスなのだそうです。

 王都にはエルフやドワーフ、人魚など様々な種族が住んでおり、サキュバスも一定数いるそうです。この教会では種族融合の証として雇われているとのことでした。


 迎賓館で彼女に迎えられた殿方は一体何をしているのだろうという疑問が湧き、この先そんな方々と会うことになるのかと思うと少し頭が痛くなる自分がいました。

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