第22話 327星間連盟

「うわー面倒くさいやつが乗り込んで来た。まあ遅かれ早かれ来るとは思っていたけれど。」


ピータンがモニターを見ている。


分割したもう一方のモニターでもキミちゃん帝王様が腕組みをして苦虫を噛み潰したような表情をしている。


「あんた達、自分達だけで楽しいことを好き勝手にやっちゃっているじゃない。」


連合とは反対側の星域で勢力を伸ばしている第327星間連盟の代表 文明レベル第4種知性体ウェクイ惑星人ルキルカだ。


見た目はやはり高度知性体の特徴でもあるネオテニー(幼形成熟)で見た目はペコ人の12歳前後の子供と同じだ。


「まぜろ。」


簡単に言う。


大まかには連合と連盟の間でテリトリー協定が取り交わされている。

とはいえ惑星ペコは辺境の小星で協定の範囲外だ。


早いもの勝ちと言うと帝国に最大の権利がある。


しかし無視出来るような弱小の連盟でもない。


ルキルカはピータンの航行器に転移してきた。


「ピータン、久しぶりじゃない?」


「2万年ぶりだね。忙しそうじゃないの。」


「ふん、あなた方第2種知性体と違って第4種の私達はまだいろいろすることがあるのよ。」


「いろいろね。また弱っちぃ人種や文明で遊んでいるんじゃないの。」


「人聞きの悪いことを言わないで、あなた達と同じよ。保護と指導ってところ。」


連盟とは言っても元は宙族、侵攻と掠奪がちょっとお上品になったぐらいで力任せなのは何も変わらない。


とはいえ連合も帝国もやっている事に違いがあるわけではない。


基本的にはどこの団体でも実務は人造人間(Artificial Human)アーフが最適な方法で行うのだから。


だからいったん条約が結ばれてしまえばアーフの行動理念は相手が誰であろうと人間第一なので弾圧や差別、虐待などとはほど遠い。


ただし条約の締結に至るまではどうだか?


敵対する相手に優しい人種はあまりいない。


「あなたが指名された惑星ペコの代表でしょ。」


ルキルカはサロンにいるシンをモニター越しに見て話しかける。


サロンの1グループのテーブルを囲んでソファにラドを膝に乗せて座っていたシンがモニターを見上げる。


「げっ!なんなのあの子「それ」を抱えているじゃないの。そんなことありえるの?」


ルキルカはラドを見ると少したじろいだ。


「「それ」はラドと言う名なの?」


「ラドは我々がシンと交渉する事に異論はないの?」


キミちゃん帝王様がはっとして言う。


「よせ、ラドやシンと直接交渉をするな。わし達と交渉する事が先じゃろうが。」


「僕は貴方達がシンと交渉をする事には干渉しない。」


ラドは機械の様に淡々と答える。


ルキルカは納得しない。


「「それ」は観察者っていうこと?でも伝説では全てを改変する力って言われているわ。」


ピータンが言う。


「具体的なことは何もわかっていないけれど。」


「だから誰も積極的に関わって来なかったはずよ。」


ルキルカには理解できない。


「それが第5種知性体の膝の上ってどういうこと?」


そう言っているとモニターの画面は連盟の艦隊を映した。


月に並ぶほど巨大な球形の宇宙船が無数に視界の及ぶ全てを覆い尽くしている。


そしてこの状況に何も脅威を感じないピータンやキミちゃん帝王様。


知性だとか文化だとか言ってもやはり武力が世界を制するのだろうか?






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