(仮)あの日の僕へ

zuttomayona

序章

「不平等な現実のみが平等に与えられている」


 これはヒロキのお気に入りの漫画に出てくるセリフだ。

 当人はこの言葉をいたく気に入っている。なぜなら、ヒロキ自身がその現実の体現者だからだ。

 現実なんてそんなものだと割り切った。誰かにとって「特別」なんてものは、ヒロキには存在しない。そんなことが続いていた。

 虚しかった。

 そう言えればどれほど楽だっただろう。

 助けて。

 そう言えればどれほど人生に気づきを得られただろう。

 当人は幾度となく悔やんだ。

 実際はそれを言葉に出すことはせず、行動にも表情にも出さず、ただただ心の奥に飼い続けた。不平等な現実から、そして空虚な感情から、目を背けるために。

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