第21話 殺傷は容易だが

復讐の鬼は、牢を訪れた。

標的は、やはりここにいた。まあ知ってたけど。

「櫻良さん!冬華さんが元凶だってわかって、すぐに牢に入れたんです!口も封じておきました!」

3人のうち、1人の研究員は口を開く。

思っていた通りだった。

私から"調理"の材料を奪うためにこの牢を拠点としていた。

最近はクッキーをメインにしていたが、牢のすぐ外にたくさん用意がなされている。

もう既に必要ない、ってのも、まあ向こうは知ってんのか。全部見てるんだもんね。

はぁ。ほんとに全部都合がいいよね。

「櫻良さん?どうかしましたか?あぁ、敵討ちならどうぞ!お譲りしますよ!」

「そりゃどうも。」

筋力増加は幸いにもまだ続いてる。速度上昇のポーションは効果時間が短いことは実証済み。だからここまでとっておいた。

速度上昇を飲む。幸運で効果量上げといてよかった。ほんとに。

「"点火"」「"速刃"」

牢の外にある小麦粉に向かって、火を飛ばした。

「…粉塵爆発を食らえよ外道。」

「う、うわぁああああ」

「はぁ。うるさいな。ちょっと黙ってて」

即座に近寄る。「"速刃"」

私は研究員3人の命を奪った。

当然のこと。だってお兄ちゃんを陥れたのはこいつらだから。

色々情報戦になってたから、自分でもこんがらがってきたし、まとめるか。

そもそも火をどう飛ばしたのか。

"速刃"は確かに目の前の物体を切りつける能力。だけどそのとき刃物が急に現れるわけじゃない。だったら何で切れてるのか。それを確信したのは2度目のリンプリザート戦。

本来、事前の作戦内ではある程度私の"速刃"で倒す予定だった。

でもそれはできなかった。それが風だったからだ。

リンプリザートはふにゃふにゃが特徴。それゆえ風で体がなびく。だから"速刃"が当たらなかった。それだけ。

次に、元凶が冬華さんじゃないと気づいたことについて。

これはお兄ちゃんを寝かせたあとの"鑑定"にある。

このとき、お兄ちゃんに"鑑定"したんじゃなくて、その中のアリエボ端末自体を"鑑定"した。

そしたら、冬華さんが見てないことがわかった。だからこれは"別ルート"の流れだと理解した。

その後の演技は、"別ルート"たちに監視されてる可能性があったから。

最後に、"クズ"たちが牢にいたのは、さっきの通り、材料の補給場所から推測できた。

念のためにポーション飲んだけど、"クズ"たちが弱すぎてあんまり意味なかったかも。

「冬華さん、助けに来ましたよ。」

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