第19話 想定外の発現

「そんなの…そんなの、伝承上の神様とか、御伽噺おとぎばなしみたいじゃん…」

今にも泣きそうな、掠れたかすれた声で。

どこか物寂しそうな、表情かおで。

奥底には煮えたぎるような、憤怒《ふんど》も感じられて。

だからではないが、僕は櫻良を抱きしめた。

ただ自分がそうしたかったという我儘でもある。

御託を並べているようで頭が上がらない。

いや、それが理由ではないのかもしれない。

なぜか瞼が重くなってきた。

「(冬華…さん…)」

意識を手放した。


「お兄ちゃん!?」

身体の力が抜けきってる。息はある。でも衰弱しきってる。

趣味ウェポンの力でどうにかできないかな…

正直、冬華さんは信用しきってない。

向こうが隠してること、多すぎるんだもん。

にーには人を簡単に信じすぎなんだ。

…やっぱり、あのとき見たにーには、にーにじゃない。絶対。

私が間違えるはずないもん。たぶん今の衰弱はその影響。

今のにーにを助けるためには、"調理"での体力回復が必要。これには液体が適してる。

でも手持ちには携帯用のクッキーのみ。材料を取りにいく時間も惜しい。今の私にできることは…

…"精製"?

"精製"は、無から有を作り出す力だってわかってる。これだったら…

「"精製"!」 幸運のポーションを作った。

「"鑑定"」 このポーションの効果量は+5。

やっぱり思った通り、目に見えないステータスの強化もできる!

これを飲んで…っと。この状態で

「"精製"」 幸運のポーションができたけど、この効果量はっと…

「"鑑定"」 効果量+20!

運が上がると効果量が上がるってのは推論通り!

こっそり入手してた能力、にーにが色々してた間に発現したこの"鑑定"。

まだ完全には分かってないけど、少なくとも趣味ウェポンでできたものの効果量が見えることは実証済み。

この状態で、「"精製""精製""精製""精製"…」

幸運のポーション10本、これを

「"調理"!」

"調理"はそれまでにかかった労力分回復量が上がる。

「"鑑定"!」 回復量16280!?

私自身の運がちょっと上がったのと、幸運+20を10本でこんなオーバーヒールになっちゃうのか…

とりあえずにーにに飲ませて…っと。

「ん…」

「お兄ちゃん、まだ寝てていいよ。」

そう冗談で言ったつもりだった。

「たぶん、そうなる、と思う。」

ん?あれだけオーバーヒールな回復があっても回復しきれてない?

ものは試しだよね、「"鑑定"」

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