第15話 動く理由は何処へ
モーラボールのいた部屋、すなわち会議室。
僕らが到着したときにはもう重苦しい雰囲気に包まれていた。
「才斗、櫻良、よく来てくれた。今回の指令内容は主に2つある。
まず1つ目、ヴィエロクスマウスの確保。アリエボ端末の実験に使っていたヴィエロクスマウス全個体が何者かによって消されてしまった。その確保をお願いしたい。
2つ目、アリエボ端末1台の捜索。製造されていたアリエボ端末が一つ無くなってしまっている。まずこの場所には外部の者が入ることはできないため、この中にいるだけかがなんらかの理由で隠し持っている可能性が高い。これを共に探すということを指令のうちとする。」
「なるほど。まずはヴィエロクスマウスを確保してくることにします。」
冬華さんが真剣な眼差しで近づいてくる。そして小声で、
「(あぁ。常に警戒を怠ってはならない。これはシナリオ通りではない。)」
「(…それって、今現在計画とは違う方向に進んでいる可能性があるということですか?)」
「(そういう認識でいいだろう。内通者,スパイ,裏切者がいる可能性だってある。)」
そんな不安に駆られるような言葉を聞いて緊張感が巡ってくる。
今までなら、"これは計画通りに物事が進んでいる"という安心感に頼っていた部分が多々ある。
具体的に言えばスカープライノーサウスのときなどだ。
今までのような無防備な心意気では切り抜けられない場面が今後来ると考えると、少々戦慄する。だが今はどうしようもできない、と自分を奮い立たせた。
さて、ヴィエロクスマウスの確保問題だが、冬華さんがログを確認したところ、実験室から突然姿を消したらしい。おかげでなんとなくこいつらの居場所が分かった気がした。
櫻良を連れて資料室の隣にある実験室に向かう。
「おそらく隠忍状態になっているのではないかと思うんだけど、櫻良はどう思う?」
「私も考えたんだけど、もしそれだったら話が上手すぎるんじゃないかなって思ったの。
だって、この場にいる人間だったらお兄ちゃんの能力は知ってるはずで、簡単に見つけられるってわかるじゃん?
それで、もしその通りだったとして、簡単に見つけられることすら相手に利用されてる可能性まで出てくると思うの。」
「流石だな…そこまで頭が回っていなかったよ。」
「_今一つ考えた仮説なんだけど、冬華さんのルートではなく、別のルートで計画通りに進んでる可能性はないかな…?」
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ヴィエロクスマウスについて
"素早いねずみ"です
マウスが実験に使われるのはこの世界でも同じようです。皮肉なことに。
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