第10話 使えるものは使うだけ

少し調べて分かったこととして、そもそも入ることのできる部屋が限られているということだ。

まず最初に、僕らの基本活動場所である牢獄。

ここには基本的な生活用品が置いてあるくらいで、魔敵イニミコスがいるとは考えにくい。

次に、そこから廊下に出て、スカープライノーサウスがいた部屋、それからその隣のモーラボールがいた部屋。

櫻良はその廊下で作業を続けている。ここら辺には魔敵イニミコスの気配はない。

とりあえずはモーラボールの部屋をもう一度見てみよう。

「あぁ邪魔だなぁ…」

モーラボールを片っ端から切り取る。部屋に残っていたモーラボールは全て写し終えた。

「ざっと100匹前後をこんなに楽に倒せるなんて、相変わらずとんでもない趣味ウェポンだなぁ。」

それは置いておいてという意味を含ませつつ首を振って、「削除。」再び体に衝撃が走る。趣味ウェポン機能拡張完了の合図だろう。

そんなことを思っていると、アリエボに能力の追加の通知が届いた。

えっと_"隠忍能力の無効化","フラッシュの妨害効果追加(有無の指定可)","図鑑登録機能の追加"

なるほど3種類も増えたのか。

…もしかして。と、頭にひとつの考えが浮かんだ。

この指令が最初から全て計画されていたものだとすれば、この能力の追加も予測されていたのではないか。ということだ。

「とすれば、やることはひとつだけだな。」

カメラを手に持ち、この部屋をレンズ越しに覗き込む。

「やっぱり…!!」

この部屋には何かしらの力によって隠忍状態にされたサルトエスカロンがいたのだ。

『才斗、そのサルトエスカロンをずっと中央で写し続けてくれ。』

そうアリエボ越しにチャットが届く。

5秒ほど経っただろうか。サルトエスカロンが実眼で見ることができるようになった。

この状態でシャッターを切る。

…カシャッ。

サルトエスカロンを切り取ることに成功した。

これと櫻良の能力を掛け合わせれば、きっとあの3体を切り取ることができる!

そう思い、廊下に出ると、

「お兄ちゃん!できたよ!」

「櫻良!よくやった!ベストタイミングだ!」

ポーション瓶を華麗にキャッチし、この勢いを殺さないように、スカープライノーサウスの部屋に入る。

せめてここでくらいかっこつけさせてくれよ…!


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隠忍について

ステルス状態のことを指します。

基本的には能力の当事者が解除しない限りは外部から認識されることはありません。

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