第7話 信頼の耐久戦

動き出したはいいものの、この趣味を意図的に使うのは、あのリンプリザードを切り撮ったときのみだ。

切り抜く条件すら把握していない。

そして、先ほどは大して気にしていなかったが、この部屋はとてつもなく広い。

教場でいうところの、実技館をさらに広げたサイズ感なのだ。

その中に、あのスカープライノーサウスが3体もいる。

スカープライノーサウスは平均体長30m,体重2トンを誇る超級魔敵イニミコスだ。

おそらく、この部屋は壊されないように設計されているだろうが、僕はかすれただけで跡形もなくなるだろう。

ただ、幸いなことに、どの個体からも認識はされていない。

であれば、やることは決まっている。

できることをただひたすらにやる決意を固め、僕はレンズを覗き込む。

前足くらいしか収まりきらない巨体だが、

…カシャッ。

あーぁ…やっぱりだめか。

予想はついていたが、この趣味ウェポンは対象の姿全体を収めなければ、切り抜くことができないのだ。

だって、写真を撮るとき、対象物を全部写真に入れてしまうだろう?

そういうところまで細かいのがこの趣味ウェポンシステムだ。

ヤツを切り取られなかった代わりに、別の部分で成果を得た。

この部屋の隣の部屋に、モーラボールがたくさんいることに気づいた。

それを見つけた瞬間、僕はこの指令の本当の目的を悟った。

それは、僕の趣味ウェポンであるカメラの能力を引き出させること。

だから、今やるべきことはあのモーラボールを倒しまくって経験値を稼ぐことだ。

しかし、このカメラに写すと、倒した判定にならず、経験値が上がらないということを前回学んでいる。

だったら_

決意を固め、櫻良のいる扉の向こうに向かった。

スカープライノーサウスたちに気づかれないように、足音と息を殺しながら。

「…櫻良、今からこっちの部屋に入る。カメラのフラッシュが見えたら、回復料理を扉から入れてほしい。」

「な、なにをするの…?」

「経験値を稼ぎにいく。危ないかもしれないから、顔は中にいれちゃだめだよ。」

「わかった…!気を付けてね?」

「ありがとな」

そう言って、僕は自分に言い聞かせるように、

…やってやる

そう思い、扉をくぐった。


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実技館について

学校で言うところの体育館に近しいものです。


モーラボールについて

"やわらかいボール"のような形状の魔敵イニミコスです。

まあいわゆるスライムのような扱いの魔敵イニミコスですね。

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