第一章 連行先は研究所

第5話 アリエボ

「ん…。」

たった今、意識がこの体に戻ってきた。

目を薄く開けて目のみを動かし、周囲を確認する。

ここはどこだろうか。

何かしらの施設のようにも見えるが、今いるのは間違いなく牢屋であろう。

ただ幸いなことに、監視は見当たらない。

それを確認し、すかさず櫻良を揺する。

「起きろ櫻良…!なんかやばい気がするんだ…。」

「お、兄ちゃん…?その服、どうしたの…?」

「…服?」

僕は今の今まで気が付かなかったが、見たこともないような豪勢な服を着せられていた。

これが何の服なのか、なぜ着せられていたのか。そんなことを考えていたちょうどその時、脳に何かがうごめく感覚を覚えた。

「うっ!!?」

「お兄ちゃん!?」

「誰かの声…?」

その声は、威厳を保ちながらこう語る。

「突然乱暴な手段を使ってしまったこと、申し訳なく思う。

が、今はそれについてよりも、話さなければならないことが何点かある。一度で覚えてくれ。

まず、君の頭に電子チップを埋めさせてもらった。

君はもうすでに、電子端末化している。

メニュー画面が見えているだろう?

それはアリエボという。

使い方についてはのちのち必要なときに必要な分だけしていくつもりだ。

まあ…今のところ、体には何の影響もないものであるので、安心してほしい。

次に。これからそのチップ経由で様々な指令を流すことになるが、実行する意思が見られなくなった瞬間、電流を流し行動を制限もしくは心身を制御する。

それでもなお、君が動かないのならば、君の生命活動を停止させることになる。

自分の趣味ウェポンは好きなだけ使うといい。

伝えておかなければならないのはこの2点だ。

チップを利用し、こちらと通信することは可能だ。

質問があれば聞いてやるが、すべて答えるとは限らない。

以上だ。特に何もなければ一旦通信を終了する。」

質問といわれても、情報量が多すぎてまだまだ整理が追い付いていない。しかし、これだけは聞いておかなければならない。

「色々と言いたいこと、聞きたいことがあるが、大半は答えてくれないんだろ?

でも、一つだけ教えてほしい。人間を殺さなければならない機会は訪れるか?」

「…そうだな、一概には言えないが、やり方次第だ。君の趣味ウェポンなら、そうしないこともできるだろう?」

「どうだろうな。…あ、あと一つ、この脳に流れる声を櫻良にも聞こえるようにはできないか?」

「アリエボを見てくれ。右下にスピーカーっていうボタンがあるだろう?」

「あっ…ありがとう。」

…できるなら最初から言ってほしかった。

「…もう十分か?」

「あぁ。もう大丈夫。ありがとう。」

「それでは、通信を切る。(_やって見せてくれ…)」

何か聞こえた気がするが、まあ今はそれどころじゃない。

僕は櫻良に、先ほどの通信の内容を伝えた。

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