第4話 趣味と連行は突然に

さて、そんな"英雄カップル"が家にようやく帰り着いたというとき。

教場帰りであるというのに、本当に色々と大変だった…

「さくら~ご飯作ろー。」

「何買ってきたのー?」

「昨日ミート系だったから、今日はフィッシュ系かなーと思って、じゃじゃ~ん!ムクスラーフィッシュ!」

「おぉーー!!流石お兄ちゃん!!私の好みちゃんと理解してるね!??」

「当たり前だろ~??何年の付き合いだと思ってんだよ。」

「じゃあ、んー、私経験値稼ぎたいんだけど、いいかな…?」

「あ、ほんと?助かるわ~じゃあお任せするね?」

「任せて~!」

櫻良はそう言って、先ほどリンプリザードから取り返したフライパン含め、色んな料理道具を取り出した。

…そういえばさっきは外で何を調理していたんだろうか?

まあ、そんなこと気にしてたらいくつ頭があったとしても足りないのでやめておこう。

「お兄ちゃんできたよ~!名付けてムクスラーフィッシュのレモンバターソテー!」

「おぉおぉ…流石料理の趣味ウェポンだね…。早いし僕が作るよりおいしそう…。」

櫻良はにこにこ顔でこちらに視線を送ってくる。

料理を並べ、いただきます。のコールで食べ始める。

櫻良の作る料理は体中が満たされるすばらしさなのだ。

実際、櫻良の能力は料理を食べた人の体力回復というものだし、どこをとっても最高だ。

「ふはぁぁぁ~おいしかった~!」

「お粗末様でした。」

「今日もすごいおいしかったよ。ありがと。じゃあ、片づけは僕がやっとくねー。」

「じゃあ私道具の整備先にしとくね~。」


さて、作業がひとまず終わり、休もうだなんて考えていた矢先に、突然ドアが開いた。

「色美祢才斗さんに、源好櫻良さんですね。我々についてきてもらいます。拒否権は与えられません。」

そんな見るからにやばそうな言葉を、見るからにやばそうな黒服の人たちが言ってくるのだから、ただただ恐怖を感じるばかりだ。

そんな悠長な思考はさせてやらないと言わんばかりに、僕の体には魂が離れていく感覚が襲ってくる。

「才斗くん?!…人くん!?」

…櫻良の声が遠くなってきた。

視界にはもう、虚空が映し出されていた。

その瞬間、また誰かが倒れる鈍い音がした。

僕という名の抜け殻は、今をもって意識が停止した。


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ムクスラーフィッシュについて

ただの"おいしい魚"って意味です。

繫殖数も多く、よく市場に出回りますし、みんな大好きな食材です。

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