第7話 登校初日の朝
――ちゅんちゅん。
鳥が鳴いている。
もう朝か。
部屋に光が差し込んでくる。
暖かい日差し。
もうちょっとだけ寝てたいけど、遅刻しちゃうから起きないと。
あれ、目覚まし時計付け忘れちゃったっけ?
あれ、あれ、携帯電話はどこだ?
時間が分からないじゃん。
どこだどこだ。
ん……?
皓君の寝顔が、横に落ちてる。
落ちてるってなんだ?
何で、私の隣に皓君が寝てるの?
はっ……。わかった……。
コレは、私が望んだとおりの夢なんだな。
ここは夢の中。
夢の中で自意識を持つと、それはもうじき目を覚ます前触れだよね。
夢の中で、なんでもできる自由な時間は少しだけなんだ。
皓君が隣で寝てるっていう夢の中。
こんな状況だったら、することは一つだけだよね。
寝ている皓君に覆いかぶさる。
私は、この顔に、キスがしたい。
そう思って顔を近づけると、皓君がぱっと目を開けた。
「……おい、全部聞こえてるんだぞ」
「へ……?」
皓君が起き上がって、私はベッドの横に落とされた。
「いたた……。ひどいよ落とすなんて。……あれ、痛い? これって夢じや」
「夢じゃねぇよ。現実だよ」
良く見れば、皓君は薄い衣を一枚だけ羽織っている。
温泉で見る浴衣みたいな。
こんなすぐ脱げちゃうような服装で、一緒に寝て……。
「えええ! 皓君これはどういうこと!!」
「まだ、記憶が戻り切らないのかよ。夢でもなんでもなくて、これが現実だ」
「何を言っているの、私とあなたはまだそういう関係じゃ……」
……あれ? 見慣れない部屋。
私、こんな和風なホテルに連れ込まれたの?
広い部屋に天蓋で囲まれたベッド。
そこに私と皓君が二人きり。
私は、まだ高校生なのに。
「どうしましたか、千鶴子様」
見覚えのある顔。
昨日見た顔だ。
……あ、そうだ。
私は、なんかよくわからない妖魔という怪物と戦って、それを倒して。
皓君に色々と説明をされて……。
「思い出したか?」
……なんだろう、さっきから皓君。
私の思考に入ってきている気がする。
特に声に出して喋ってないのに。
私の思考は私だけのもの。
これが夢じゃないとしても、何でだ?
どういうこと……?
「俺の光属性妖力の特性。人の考えが分かっちまうんだよ」
「……ほえ?」
「特に、光の巫女姫のお前に対しては、自動で分かっちまうみたいなもんだよ」
「……あれ?……そうだとしたら、私がさっき、皓君の寝こみを襲おうとしてる時に考えていることも……」
「それが、聞こえたから慌てて起きたんだよ」
……はぁ。恥ずかしい。
私が厚顔だとしても、好きな人にそんなことを聞かれてしまった日には。
お嫁にいけないよ……。
「……だからさ、聞こえてるんだよ。恥ずかしいからちょっと黙ってもらえるか?」
「……あ、はい」
「今日から学校だから、朝飯食って学校に行くぞ」
「はい。あれ? 皓君も行くの?」
「もちろんだ。昨日そう言っただろ? 道中も危ないし、学校で何が起こるかわからない。お前を守るのが俺の役目だ」
やっぱり、カッコいいな皓君は……。
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