探せ!ノラワラシ

ばあちゃん家の市松人形を参考に書いた手配書を掲げて、エルマはあらゆる生徒に聞いて回る。


数名のおかっぱ頭の女子を紹介されたが、背が高すぎたり、目が大きすぎたりして別人だった。


その他心当たりがあると言った者は、やはり放課後に遊んでいると勝手に増えていたと証言した。

そして皆一様に、彼女のことを知らないのだと言う。


「座敷童子でもいるのかな」


担任の先生はそう言った。どうにも埒が開かずに、最後の手段とばかりに手配書を見せた時のことだ。


「座敷童子?あの有名な、出てきた家には幸福が訪れるという妖怪ですか?」


「そうそう。あれも遊んでいたらいつのまにか一人増えていたって話だろ。きっと君たちと遊びたかっただけで、悪いものじゃないんだよ」


楽しそうだったから、と答えた彼女を思い出す。

そう言われると一理ある気もするが、エルマにはあれが妖怪の類には見えなかった。どう見ても人間の女の子だった。


黙り込んだエルマに対し、先生はまた口を開く。彼女を妖怪と決め込んでいるせいで、別のことに気を取られているようだ。


「でもここ最近畳の家は少ないし、今や家も座敷って感じじゃない。リビングワラシ、カーペットワラシ。いまいちピンとこないね。

それに学校に出てくるんだ。一体ナニワラシになるんだろう」


学校ワラシ、教室ワラシ、校庭ワラシ、グラウンドワラシ。色々と案が出たが、しっくりくるものがない。子どもたちもうーん、と腕を組む。


「野良ワラシかも」


友人の一人が控えめにボソッと呟いた。その言葉を先生は聞き逃さなかった。


「野良ワラシ!いいねえ。なるほど、そうかもしれない。君たちの楽しそうな声に誘われて、ふらりと忍び込んだのかもね。


もし次も見かけることがあったら、何も言わずに遊んであげなさい。きっと彼女もそれを望んでいるよ」


先生は結論が出たとばかりに微笑んだ。野良ワラシの名付け親は注目と脚光を浴びて頬を赤らめた。


エルマもそう言われると、彼女を野良ワラシにするしかなかった。手配書を覗き込んで首を傾げる。


お前、妖怪だったのかよ。


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