第10話「記憶喪失の魔物」

第十一話「記憶喪失の魔物」


「やっと帰ってこれたあああぁぁぁあああぁあああぁぁぁ!!」




 ジョージが修行を始めてからの五年間、一度も山を下りることはなかった。久方ぶりの我が家に、ジョージはかなり興奮しているようだ。


ジョージは家の前でひとしきり叫んだあと、家の中へ入った。


「ただいま~」


扉を開けた先では、一人の老執事が玄関を掃除している様子だった。


物音に気付いた執事が、ジョージの姿を見た瞬間、彼は持っていた箒を手放して、すぐさまジョージの元へと駆け寄った。


「ジョージ様!!ジョージ様でございますか!!??」


「うん、ははっ、ジャック、苦しいよ」


気が付けば、老人はジョージを力いっぱい抱きしめていた。


「こんなに大きくなられて…。ああ、ジョージ様…」




「どうやら、私はお邪魔蟲のようだな・・・。」


後ろの男が微笑んで言う。


「ジョージ、明日になったら最初の任務を預ける。それまで体を清めておくんだな」


「はい!師匠!!」ジョージは元気よく返事をする。


「おいおい、お前はもう一人前だ。もう俺の弟子じゃねえよ」


そして、ジーザスは家の中から出ていった。




 しばらく抱きしめあったあと、ジャックが口を開く。


「さて、まずはお風呂にでも入りますかな」


「お!お風呂か~!最ッ高!」


バンスの道場にも風呂はあったが、厳しい修行で風呂に入るのは月に一度ほどだった。


ジョージは着ているものを投げ捨て、浴場へと直行する。




「うわ~、やっぱり広いや!」


道場の風呂は、大人ひとり入るのがやっとといった大きさだった。しかし、屋敷の風呂はどうだろう。


お風呂で泳ぐこともできるし、なんならバタフライだって可能だ。


遅れて、ジャックがやってきた。以前は、ジャックに背中を流してもらっていた。


「ではジョージ様、お背中流しますよ…」


「いや、いいよ!自分でできる。」




「・・・・・・これも成長ですね…」




「ところでジョージ様」


「ん?」


「この5年で何か大きく学んだことはありましたか?」


「そりゃあ、たくさんあったよ!まず、技をたくさん覚えたんだ!」ジョージは嬉しそうに話す。


「おお!それはそれは」


「やっぱり、これは師匠の教えが良かったおかげでもあると思うな~」とジョージが言うとジャックが尋ねる。


「師匠というのは?」


「ジーザスさん。とっても優しい人だよ。この5年間僕が傷つかないようにいつも考えてくれたんだ!」


「ほ~あのジーザスさんが。」


 二人はしばらくの入浴を楽しみ、寝床に着いた。


「今まであったことは、明日の朝、お話しください。今日はお休みください。」


そういって、ジャックはジョージの寝室から出ていく。


「お休み~!」ジョージが言うと、彼は瞬く間に眠ってしまった。…ジョージは幸せだと感じていた。




一方そのころ、とある暗闇の森で、怪しいスーツ姿の男が何者かに追われているようだった。


「はあ・・はあ・・くそ!どこまでもしつこい奴らだ!」すると、その男は足を滑らせ、崖から落っこちてしまった。


「ぐは!」崖に落ちて思いっきり頭をぶつけて血反吐を吐いた。


「このまま・・・俺は死ぬの・・・か・・」そして、男は気絶した。




・・・明くる日の朝・・・




「はあ~おはようジャック」


「おはようございます、ジョージ様」ジョージが目を擦りながら言う。するとジャックは紅茶を入れてジョージに渡す


「ありがとうございます」とジョージは言う。そして二人はお茶を飲み朝食を食べた後、ジャックが話し出す


「先ほどМABの方々が来て『任務の内容は昼ごろにお伝えする』と言って出ていかれましたよ」


「へ~そうなんだ。どんな任務かな~」ジョージは嬉しそうに言う


「それより、久々に市場の方に出かけてみますか?」


ジャックはジョージに尋ねる


「え!いいの!」とジョージは目を輝かせながら言う。


「はい、今日の昼食の材料も買わないといけないですし」そして、二人は市場に向かう


「楽しみだな~!!」ジョージとジャックはいつも通りの市場の行く道の森の中に歩いている


「ジョージ様、そこは急な崖なのでお気を付けください。」


「は~い!」そして、ジョージが崖を気を付けようと下を見た時


「ん?・・ねえ、ジャック。あそこに人が倒れてない?」


ジョージが指をさして言う


「え?」ジャックはジョージが指をさす方を見ると確かに人が倒れている


「おかしいですな・・・」とジャックは言うと、その倒れている人のもとに走っていく。そして、その人に声をかけようとすると二人は驚愕する


「ま・・魔物だ」その人は黒いコートや黒いズボンなど全身が黒く覆われており頭のシルクハットの下の顔には顔全体に包帯が巻き付かれており手や足にも全身にかけて包帯で綺麗に巻かれていた。


「ジョージ様、この者が目を覚ましたら危険です。ここは、逃げましょう」実際、ジョージ自身も逃げたかったんだが目の前の魔物はどう見ても息をあまりしておらず全身に無数の傷があり血を流していた


「ねえ、この魔物を助けてあげようよジャック・・」


「何を突然」するとジョージが魔物の手を握りながら言う


「僕・・・この魔物あまり悪い人じゃない気がするんだよね」


「ですが・・」


とジャックが言いかけた時、ジョージは突然魔物を肩に担いだ


「ジョージ様!何を?」


「いいから、行くよ」するとジョージは


「・・・分かりました。」そして、ジャックはジョージの後をついて行った。・・その後、その魔物は家の中でジャックの応急処置を受け命を何とか取り留めた


「しばらく寝かしときましょう。私は市場の方へ行ってきますのでお留守番をお願いします」とジャックは言うと市場の方に出かけて行った


「うん、分かったよ~」とジョージが返事をする。そして、ジャックが家を出るとジョージは魔物の方を向く


「一体、君は何者なの?」・・・そうしてしばらくすると魔物は目を覚ます


「こ・・・ここは?」


ジョージが顔を覗き込む


「目を覚ましたね・・・ここは僕の家だよ。」


「き・・君は誰だ?」魔物は尋ねる


「僕はジョージ!君の名前は?」とジョージが魔物に聞く


「名前?・・・俺の名前か・・・」魔物は少し考え込むと言い出す


「・・・すまない、分からないみたいだ」


「どこから来て、なんで倒れていたかもわからないの?」魔物は首を縦に振る。なんでも分かっているのは自分自身が魔物ということだけらしい


「すごいや、記憶喪失っていうやつだよ、それ・・・初めて見たな~?」


ジョージは興味津々だ


「君はなぜ、驚かない。俺は魔物だぞ」


「う~ん、まあ5年間もあるあなたと同じ人と一緒にいたからそんなに驚かないかな~」


とジョージは笑って答える。すると魔物は言う


「そうか・・・君はいいやつだな」ジョージが照れながら笑う


「へへっ、ありがとう」


「長居をさせてしまったな。私はここでお暇させていただくよ・・・」と言いながら魔物は立ち上がるしかしジョージが言う。


「もう少し安静にしてなきゃだめだよ~」と言うと玄関の方からジャックの声が聞こえた「ただいま~ジョージ様、ただ今戻りました」


「ジャック!ちょうどいいところに」とジョージは言う。そして、ジャックに今までのことを話した


「なるほど、これは一度医者に見てもらったほうがよろしいでしょう」とジャックが提案する


「分かった」そして、ジャックは魔物に言う


「あなたはしばらく安静にしといたほうがいいでしょう。まともに走れるようになるまでここにいるといい」


とジャックは言いジョージもそれに賛成する


「うん!それがいいよ」


「すまない、こんな見ず知らずの魔物をかくまってくれありがとう。感謝する・・・」


「いいんだよ。困ったときはお互い様だよ」とジョージは言う。そして、その日のお昼は魔物も一緒に三人で食事をした(ジョージは人参嫌い)その日の夜・・・


「今日は、昼ごろМABの方々が小規模の魔物のグループの討伐の任務をジョージ様に依頼しようとしましたが忙しそうなので私が終わらせてきました」


「え!市場まで行ってついでに任務まで終わらせるなんて早すぎじゃない」


「大丈夫ですよ・・・それでは、ジョージ様は先にお休みください」


「うん、お休みジャック!」


「お休みなさい」そう言ってジョージは寝室に行ってしまった。すると魔物はジャックに言う


「あなたのところの子供は実に素晴らしい子だな」


「まあ、私の子ではありませんが・・・本当にいい子です」


「しかし、本当に良かったのか?こんな俺を助けてもらって魔物だぞ」すると、ジャックは微笑を浮かべる


「実は、ジョージ様が修行の時そこの師匠が言っていたそうです。『みんな、命を持っている生き物だからみんな一緒だって』」


「そうか」すると、またジャックが言う


「それに、もともと私自身は助けるつもりはあまりありませんでした。しかし、ジョージ様は私に向かってこう言いました『誰かを助けるのに理由がいるのか』と・・私はそれを聞いてびっくりしました。ですが、同時に嬉しくもあった。ジョージ様がここまで成長してくださっていたとわ」すると、魔物も少し笑う


「見る限りはまるで赤子のようなのに反面、そんな人を思いやる気持ちもあるのか・・世の中は面白い人もおるのだな」


と魔物は言った。そして、ジャックは話を続ける


「あのお方は、ジョージ様は近いうちにきっとこの国を救う英雄になるでしょう。それまで・・・ご面倒を見るつもりです」そう言ってジャックは笑う


「うむ・・・私もそう願っているよ、おっと紅茶がなくなってしまった」


「あ~それならこのティーストレーナーに・・」そして、ジャックがティーストレーナーを取ろうとすると・・・魔物が言う


「その、ティーストレーナーの持ち手部分外れて床に落ちるよ気を付けて」


「え?」ジャックは首を傾げティーストレーナーの持ち手をゆっくり持つと確かに持ち手部分が外れた


「なんでわかったんですか?」すると、魔物も首をかしげる


「さあ、なんか本能的に外れると思っちゃたみたいなんだよね~」


「はあ・・・・あ!それより名前を決めないといけませんね。」


「名前?」


「はい、ジョージ様が言うには名前がないと不便だそうです。」そして、ジャックが首をかしげながら考える


「そうですね・・・いつも黒い服を身にまとっているので『ブラック』という名前はどうでしょう?」


「いい名前だ。ありがとう」そして二人が笑っていると、突然寝室の扉が開いてジョージが叫ぶ


「いい名前だね!『ブラック』って・・」そして、二人は驚いた顔でジョージを見る


「ずっと・・・聞かれていたんですか?」


「てへへ!」ジョージはベロを出しで笑う・・・一方その頃・・ここは、海の深いところに存在する帝国その名も『海洋国』。そこの王宮の廊下を一人の召使いが泳いでいた


「海深王様!!海深王様!!」その召使いは下は魚の姿上は人の体をしておりそして、先ほどから呼んでいる『海深王』というのはここの海洋国の王の名だ。


「なんだ・・うるさいぞ!」すると、王室の扉の向こうから野太い低い声で言う者がいた


「海深王様!お話があり参上いたしました」


「騒がしいぞ!」


「申し訳ございません。しかし、緊急事態ですので・・・」と召使いが言うと海深王が言う


「分かった、入れ」召使いが王室に入っていくと、そこには玉座に座る魔物がいた。その魔物は、右手が巨大なカニのはさみをしており全身に鎧を身にまとい顔はイカの姿をした巨体がそこにいた


「それで、緊急事態というのはなんだ?」海深王が聞くと召使いは話し始める


「はい、実は・・・MABの者たちがまた我が国に襲撃しにくるということが分かりまして・・・」そして、それを聞いた海深王は鼻で笑う


「ふん!そんなこと知ったことか!いつも通り追い返せ!」


「そ・・・それが、我が国のよりすぐりの戦士のグループを近くにある村を襲うように指示をしたのですが向かってそれっきり連絡が途絶えてしまって・・」


「なんだと、もしかしてやられたとでも申すのか・・」


「実は、その現場に居合わせた戦士が一人だけしかもボロボロの状態で帰還しまして何があったのかと聞くと『強すぎる、老人と戦ってきた・・』と言い残し気絶しまして・・」


「貴様、ふざけておるのか?」すると、海深王は凄まじい眼光で召使いを見下ろす


「め!滅相もございません!」


「もうよい!それより例の薬はできたのか?」そして、召使いは頭を下げて言う


「はっ!・・それは、まだ試作段階ではありますが調合の方はあとの三帝国より進歩が格段に速く明日にでも本格的に始めるつもりでございます」


「そうか・・・」海深王はニヤリと笑う


「なら、良い。例の薬を早めに完成させておけ」


「はっ!」そして、出ていこうとする召使いに海深王は呼び止める


「待て、それとガリウスを呼べ」


「ガリウス様ですか・・・」


「そうだ、今すぐにここに呼んでこい」すると、召使いは王室から出ていくそして、しばらくして王室に魔物が入ってくるその魔物は爪は鋭く長身で背中にヒレがある姿は魚人だった


「お呼びですか?」


「ガリウス、お前に任務があるすぐにでも近くの村を崩壊させて来い!我が国の戦士最強のお前ならできるはずだ」


「仰せのままに・・」


「頼んだぞ、我が国とそしてこの薬のためにも・・」そして、海深王の左手には小さな瓶がありそこに紫色の液体があった。それは、МABが追っている『モンスターエキス』だった。


「これで、この国は安泰だ」海深王はニヤリ!と不敵に笑った。そして、また新たな戦いが幕を開けることになる


・・・つづく・・・


今回のイラストは、新キャラのブラックさんです。

https://kakuyomu.jp/users/zyoka/news/16818023212946440824

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僕の最強執事は命令に絶対服従 大魔王 @zyoka

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