不穏な炎天下

 あの日から明里と私は度々授業をサボるようになった。

 保健室が空いていなければ空き教室、そこも空いていなければトイレ。

 クラスで目立つ明里と空気のような私との関係を疑う者は居なかった。

 触れる息、視線、熱。みんなが知らない明里を知るのは私だけだ。

「二人だけの秘密だね」と明里は言った。

 その言葉を思い出す度口元が緩んだ。



 午後の体育。炎天下の校庭。立っているだけで目眩がした。厳しい体育教師も普段より声に優しさがあるような気がした。

 準備体操の途中、吐き気がしてきて座り込み、私はそのまま吐いた。周りの生徒は笑い声にも似た悲鳴を上げている。頭がぼんやりする中、私はフラフラと一人で保健室に向かった。


 養護教諭に言われるがままスポーツドリンクを飲み、氷枕に頭を乗せた。

 気付けば眠りに落ちていた。

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