第288話 28階層8。シュレア屋敷9
あまりグータラしていてはマズいと思って、この日は真面目に28階層で稼がせてもらった。
フィオナに下り階段を見つけてくれと言っていないので下り階段に到達してはいないのだが、28階層も広い。
1日かけて核の数は96個。石室の中で見つけた宝箱から手に入ったアイテムはこれまで手に入れたアイテムの重複がほとんどだったが、金の宝箱から真っ黒な液体の入った少し変わったポーション瓶と真っ黒なダーツが手に入った。
瓶の中の真っ黒な液体を鑑定したところ、
名称:『
種別:毒薬
特性:
少し変わったポーション瓶と言ったのは、ふたの底に瓶の底まで届く細い棒が付いていたからだ。その棒で武器に毒を垂らすのだろう。そこらの武器だと武器自身が毒に侵されてボロボロになりそうな気もする。
真っ黒なダーツは、
名称:『黒鋼のダーツ』
種別:投擲武器(黒鋼製)
特性:投擲すると、投擲速度に見合った距離だけ対象を追う。わずかな可能性で対象は即死する。不壊。
ダーツだけでは攻撃力などたかが知れているが『暗黒の涙』をダーツの先端に付ければかなりエグイ武器になる。
このセットが2セット手に入った。
暗殺者からすれば、重宝しそうだが俺が使うことはまずないな、準備が面倒だし。
買い取り所での96個の核の買い取り総額は76億8000万円。査定してくれた担当の係りの人にはいつものような顔をされた。
累計買い取り額は466億1126万円+76億8000万円=542億9126万円となった。
今日1日頑張ったのは確かに頑張ったんだけど、たった1日で7、80億円。
俺ってある意味大丈夫なのだろうか?
翌日。
この日は注文していた本が午前中届くということで、俺は受け取りのためうちで待機していた。
待機中は、当然コミックの続きを机に向かって読んでいたのだが、インターホンの音がしたので俺が2階から下りて行ったときには玄関の下り口に段ボール箱が2箱置いてあった。
結局母さんが宅配便を受け取ってくれていた。中身が本だから相当重たいので、宅配便の人に中まで運んでもらったようだ。
「母さんありがと」
「一郎、書籍とか書いてあるけど、たくさん買ったのね」
「うん、勉強の本ってわけじゃないんだけどね」
「本を読むのもほどほどにね」
「分かってる」
母さんが居間に戻っていったところでタマちゃんを呼んで段ボール箱を収納してもらった。
まずは新館に転移だ。
「母さん、夕方まで出てくる」
『そう。気を付けて行ってらっしゃい』
昼食は朝の段階で母さんに要らないと言っているので、タマちゃんにスポーツバッグに入ってもらった俺はフィオナを連れて玄関を出て、新館の書斎に転移した。
タマちゃんに科学技術関係の本が入った段ボール箱を机の上に出してもらい、呼び鈴でアインを呼んだ。
「アイン。科学技術関係の資料を揃えてきた」
「はい。それではさっそく研究を始めます」
「あれ? 研究員ってもう揃っているの?」
「はい。今のところ10名ほど製作しています」
「頼もしいな」
「研究範囲が広くなれば随時研究員は増やしていきます」
「じゃあ、任せていいな」
「はい。マスター、お任せください」
力強いアインの言葉だ。これで俺は左うちわだ。アッハッハ。
「マスター、昼食はどうされます?」
「シュレア屋敷で摂ろうと思うから、いいよ」
「了解しました」
そう言ってアインは重い段ボール箱を抱えて書斎から出て行った。
さて次はシュレア屋敷だ。
今は勉強中だから、邪魔しないようコミックルームに箱を置いておけばいいだろう。
面倒だから直接コミックルームに転移してやろうかと思ったのだが、いきなり変なところに現れると警備員たちや準警備員の電気作業員たちが警戒するかもしれないのでいつも通り玄関ホールに転移した。
居間に入ってタマちゃんに出してもらった段ボール箱をリビングテーブルの上に置き、上面のテープをはがしてフタを開けておいた。
これでミアたち4人がかりで手分けして運べば簡単だろう。
「ところでタマちゃん。今回の本も全部読んじゃった?」
「はい。全部読んでいます。コピーもいつでも可能です」
「科学技術本も全部?」
「はい。全部読んでいます」
「理解できた?」
「ある程度は」
天スラ恐るべし。あんな短時間であれだけの量を読み終えてしかもある程度理解できたとは。
俺自身のことを凡人とまで言う気はないが、天才とは比べるべくもないということがよーく分かった。
俺がやってきて居間にいることは、既に警備員たちには知れているだろうから、後は昼食に呼ばれるまでコミックの続きを読んでいよう。最近こういった生活を続けているような気がしないでもないが、体がなまってしまうようでもないので問題はないだろう。昨日だって何十億も稼いだことだしー。
しかし、俺って社会に出て通用するのだろうか? 別に通用しなくても問題ないからいいか。
「タマちゃん、コミックの続きをお願い」
「はい」
タマちゃんが俺が読んでいたコミックを最後に開いていたページを開いて渡してくれる。
かゆいとことにも手が届く。実際背中がかゆければタマちゃんに頼めば背中を
現在俺の読んでいるコミックなのだが主人公が体から生えた『チェンソー』を振りまわして周りのものを切り刻んでいるのだが、こんなの推定年齢10歳のミアやアキナちゃんが読んでいいのだろうか?
アニメ日本昔話とのギャップがスゴイ。よくこんなのを選んだものだ。
しかし、何だこの面白さは? ミアが選んだのかどうかは知らないがグッドジョブだ。
俺がコミックに熱中していたら、ヴァイスがやってきて食事の準備ができたと告げられた。
おそらくミアたちは2階から下りて既に食堂で席についているはず。今回も気づけなかった。
タマちゃんと食堂に急いでいったら予想通りミアたちが席についていた。
「おそくなってごめん。
それじゃあ、いただきます」
「「いただきます」」
今日の昼食はある意味久しぶりのサンドイッチだった。
玉子サンド、ハムレタストマトチーズサンド、ポテトサラダサンド、そしてカツサンドの4種類が大皿に盛られてテーブルの上に置かれていた。
各人には飲み物として、オレンジジュースと水の入ったグラスが置かれていた。
ダンジョンセンターの売店でもカツサンドは売っているのだが、目の前のカツサンドのカツはかなり分厚い。
カツにはちゃんとトンカツソースがかかっていた。
発電機を簡単に作れる連中なんだからトンカツソースで驚いちゃいけなかった。
今日のフィオナには、桃をすりつぶしてペースト状にしたものが用意されていた。
時間が経てば色が悪くなりそうだが、見た感じそうでもなさそうで、フィオナはいつものようにその中に両手を突っ込んで食べていた。
わき目もふらず食べているところを見ると気に入ったようだ。
タマちゃんはみんなと同じようにいったん小皿にサンドイッチを取ってから偽足でゆっくり吸収していた。
各自好きなサンドイッチを小皿に取って食べていく中でアキナちゃんが俺に、
「おとうさん、わたしむかえにくるとき、イチローさんにおれいします。まっていてください」
「分かった。待っておくよ」
「ありがとう」
「じゃあ、通訳はソフィアに頼むからカリン、あとでソフィアに伝えておいてくれ」
「はい。マスター」
「それと、この前ミアが渡してくれたリストに載っていたコミックは居間のテーブルの上の箱に入っているから食事が終わったら持っていってくれ」
「イチロー、ありがとう」「「マスター、ありがとうございます」」「ありがとうございます」
最後のアキナちゃんの「ありがとうございます」は流れでいった言葉だろう。
「それと、円盤のカタログみたいな本も一緒に箱に入っているからそれを見て欲しい円盤があったらまたリストに書いて渡してくれ。そしたらすぐに注文するから」
「「はい!」」
みんなのうれしそうな顔を見ると俺もうれしくなる。
カツサンドが重かったようでサンドイッチはだいぶ残ってしまったが、食料庫に入れておけばパンが硬くなることもなくいつでも食べられるだろう。
この日の食後のデザートはイチゴとバニラのアイスクリームだった。
おいしゅうございました。
デザートを食べ終えたところで、ミアたちは俺たちを残して居間の方に駆けて行った。
注1:暗黒の涙
ご存じ『闇の眷属、俺~』https://kakuyomu.jp/works/1177354054896322020に登場する暗殺用猛毒。非常に高価。作中では妖精フェアが特殊武器インジェクターに塗って使用。
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