第270話 電気2。ドライブ
翌日。
午前中、注文していた本を受け取るためにうちで待機した。
11時近くになって荷物が届いた。全部で段ボール箱3箱あった。
その3箱をタマちゃんに収納してもらい、まずはシュレア屋敷に転移した。
「おーい。注文していたコミックが届いたから持ってきたぞー」
勉強中だったかもしれないが、2階に向かって玄関ホールから大きな声を出したらミアたちが階段から駆け下りてきた。
アキナちゃんも一緒に階段を下りてきた。ミアたちと溶け込んでいるようで結構なことだ。
「コミックを置いているところを教えてくれるか? そこに置いておくから」
「わかった」
先頭に立ったミアに続いて階段を上がり、廊下の先の部屋に案内された。
案内された部屋は窓にカーテンと棚が2つ並んだだけの殺風景な部屋で、片方の本棚にこの前買ったコミックが並べられていた。
「タマちゃん、今日届いた荷物を出してくれるか」
タマちゃんが段ボールを3箱床に並べた。
アキナちゃんがポカンとした顔をしてそれを眺めていた。
アキナちゃんが溶け込んでいたから、アキナちゃんがタマちゃんのことを初めて見ることをすっかり忘れてた。
アキナちゃんの顔は見た感じ驚いてはいるが怖がっているようには見えないので問題はなさそうだ。
段ボールの中からコミックを全部出して、一緒に入っていた電気関係の本を1つの段ボールに入れ直してタマちゃんに収納してもらった。
「ミアたちはもうちょっと待っててくれな。
タマちゃん、コピーお願いな」
10本ほどの偽足がタマちゃんから伸びて本棚に並んだコミックを一度収納し、すぐに元に戻していく。
1冊3秒もかからずコピーができているようだ。10本の偽足で同じ速さで作業しているから、3秒で10冊だ。
あっという間にコピーが終わってしまった。
「次は今日持ってきたコミックを頼む」
「主。今日受け取った荷物は段ボールごとコピーしています」
なんと。
天スラタマちゃんに抜かりと死角はなかったようだ。
「作業は終わったから、ミアたちは今日のコミックを片付けてくれ」
「わかったー」「「はい」」「?」
俺の言葉を理解できなかったアキナちゃんは首をかしげたが、すぐにミアがフォローして通訳してくれたようでアキナちゃんもみんなに交じってコミックを手にしていた。
アキナちゃんはまだ日本語は読めないので、結局それをミアに渡していた。
子どもたちがワイワイ言いながらコミックを片づけをしている姿を見てて飽きないのだが、俺がいても仕方ないので、そろそろ新館にいくからと言って新館の書斎に転移した。
書斎では机の上の呼び鈴でアインを呼び出し、電気関係の技術書の入った段ボール箱をタマちゃんから手渡した。
「アイン、これでとりあえず電気のことを研究してみてくれ。他に必要な本があってその本の名まえが分かるなら教えてくれ」
「了解しました。
マスター、昼食はいかがします?」
「ここで食べようかな。俺とタマちゃんとフィオナの分を頼む」
「はい。すぐに食事の準備は終わりますから食堂でお待ちください」
「分かった」
段ボール箱を抱えたアインと書斎を出た俺たちは途中でアインと別れて食堂に入った。
俺が席に着き、タマちゃんは俺の左前の定位置の席についた。
すぐに16号がワゴンを押して食堂に現れ、料理と箸を並べていった。
タマちゃんの前にも箸が置かれたのだが、タマちゃんが箸を使って食事できるかどうかはわからない。
天スラタマちゃんのことだからきっと箸も上手に使えると思う。
今日の昼食は天丼となめこの赤だし、そして柴漬けだった。柴漬けの中にはちゃんとミョウガも入っていた。ミョウガなど俺は買ってはいないのでここで栽培したものなのだろう。
もう何でもありと思っていた方がいいな。
フィオナにはハチミツ、イチゴジャム、そしてブルーベリージャムの小瓶が用意された。
俺はその小瓶からスプーンですくって小皿に入れてやった。
「「いただきます」」「ふぉふぉふぉーふゅ」
丼には大き目のエビ天が2本と、カボチャとナスビの天婦羅、それにシシトウとシイタケの天婦羅がのっかっていた。
醤油色のタレのかかったカボチャの天婦羅を摘まんで口に入れた。
タレのしみ込んだカボチャの天婦羅はカボチャの甘みが甘じょっぱいタレで引き立てられて美味だった。
カボチャの天婦羅がなくなってタレのかかったご飯が現れたので、そこを箸で摘まんで口に運んだ。
うまい。
それからは天婦羅とご飯を交互に食べて気が付いたら丼ぶりの底のご飯つぶを箸で摘まんでいた。反則級だな。
なめこの赤だしを飲むのを忘れて天丼を食べてしまったので、今度は赤だしだ。
さすがの俺もなめこは箸で摘まめないので赤だしと一緒にズズズズーと飲んでから咀嚼した。
そしたら柴漬けを食べていなかったので、今度は柴漬けを摘まんだ。
「マスター、お代わりもありますが」
天丼はおいしくて一気に食べてしまったが結構なボリュウームがあった。
「ありがとう。でももういい」
「はい。タマちゃんさんはいかがします?」
「わたしももういいです。おいしかった」
一度書斎に帰った俺は、書斎で待っていたアインに明日の昼食に以前一度連れてきた氷川をまた連れてくるので食事の準備を頼んでおいた。
翌日8時。
朝食をうちで取った俺は防具を身に着けて、ダンジョンセンターの一般駐車場の入り口近くに転移した。
ダンジョンセンターの駐車場はかなり広く、3割がたのスペースが空いていた。
氷川はどこかなと見回したら、駐車場の奥の方に立っていた。
手を振ったら氷川も手を振ったのでそっちに向かって歩いていった。
「おはよう」
「おはよう。中古を買ったと言ってたけれど、なかなかいい車じゃないか」
俺は氷川の車の周りを一回りしてみた。
そしたら車の左側のドアの少し先が潰れていた。
「氷川、この車のここ、傷ついてるしかなりへこんでるぞ」
「昨日車庫入れに失敗して門柱にぶつけたんだ。門柱も傷が付いたが車より門柱の方が強かったみたいだな」
初心者ならではのアクシデントってことかも知れないが、車庫入れってそんなに高難易度な種目なのだろうか?
そこでふと英語のフレーズを思い出した。
「修理しなくてだいじょうぶなのか?」
「中古だし、そのうちでいいんじゃないか?」
「そりゃあ氷川の車だしな」
「ホントは新車が欲しかったんだが、今注文しても納車は早くて2年先だと言われてしまった。それでなるべく早く納車できる中古を見つけてくれと言ったらこの車を勧められた。
「運転好きなんだな」
「ああ、面白いぞ。
それでタマちゃんに収納してもらうということだが、外に出ていればいいんだよな」
「うん。それじゃあさっそく収納してもらおう」
リュックの中のタマちゃんに目の前の赤い車を収納してくれるように頼んだ。そうしたらタマちゃんが「主、この車のへこみと傷は直せます」と言った。
「おい長谷川、今の声はタマちゃんだったのか?」
「言い忘れていたかなー? タマちゃん言葉をしゃべれるようになったんだ」
「なんと!」
「なにせタマちゃんは天才スライムだからな」
「天スラだったな」
「その通り。じゃあタマちゃん、直してくれ」
「いちど収納して体内で修理します」
その方が簡単なんだろうな。
タマちゃんから金色の偽足が伸びてそれが薄く広がって金色の膜になり氷川の愛車を覆ったかと思ったら、氷川の愛車が消えて、偽足の膜も細くなってタマちゃん本体に戻っていった。
「うわっ!」
初めて見たら驚くよな。まるでマジックなんだもの。
「車はタマちゃんに預けたままで転移してしまおう」
「了解」
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