第260話 時計仕掛けの桃太郎と円卓の騎士2
激怒しながら電動スクーターでひた走る桃太郎の呼び出しに応えて最初に桃太郎に追いついたのは、桃太郎の第一の子分を自称する
出入りの時はクロスカウンター狙いで相手のストレートを待っているのだが、相手のストレート一発で沈んでしまうため幻のクロスカウンター男と呼ばれている。
ふたりめは、真空跳び膝蹴りを得意とする沢邑忠、若干7歳ながら頭髪にパンチパーマをかけ鼻の下にちょび髭を生やしている。
3人目は、自称湖の騎士ランスロット、本名は泉らん子12歳。彼女が勝手に桃太郎と自分を含めた子分11人のことを桃太郎と円卓の騎士と言っている。
しかし桃太郎を含めらん子以外の11人がアーサー王の話を知らないという冷徹な現実に彼女はさいなまれている。しかし、らん子はみんなからウザがられること気にすることなく日々布教活動を行なっている。
4人目は、
5人目は、
6人目は、
7人目が
8人目が夢野ソリー。全然ふくらみのない棒のような不思議な脚をしている。本人は自分の体型についてまったく気にしていない。そして、いつも口の中で呪文を唱えている。その呪文がいったい何の呪文か誰にも分からないが『てくまく……』と周囲には聞こえている。
9人目は鬼塚ひろし。デフォルメされたカエルの絵が描かれたTシャツをいつも着ている。着替えがないのか、着替えないのか、そのTシャツはいつも汚れてそして臭い。
10人目は伊藤
最後の11人目が
彼ら11人が桃太郎配下の円卓の騎士なのだが、湖の騎士ランスロットこと泉らん子以外その名で呼ぶものはいない。
全員揃った時、最初に走り出した桃太郎はスペースコロニー『サイドスリー』の内側を一周してアパートの前に戻ってきていた。
「やろうども、これからかんりセンターにカチコミかけるぞ」
「「ヘイ!」」
管理センターと先ほどの激怒は何か関係があるらしい。
何を考えても無駄そうなので、ただスクリーンを見ているだけだ。
管理センターは逆回転するふたつのシリンダー型住居区画を結ぶハブ部分に設けられており、内部は無重力である。
そこからすったもんだの大立ち回りのあげく、桃太郎は管理センターの中央管理室前にたどり着いていた。
この辺りの微重力下でのすったもんだはハリウッド仕込みでかなり迫力ある映像だ。
彼らが管理センターの中央管理室にたどり着いた時には、桃太郎のほか残っていたのは3人の子分だけだった。
3人の名は
桃太郎は管理センター中央管理室の扉をけ破り室内に突入したところ、正面の大型モニター画面にテロ組織によって破壊されつつある『サイドスリー』の姿が映し出され、中央管理室にも異音や振動が伝わってきていた。
「テロだ。マズいぞ!」
「桃太郎、どうすればいいんだ?」
「おれたちの『サイドスリー』を守るためおれたちでれんちゅうをたおす!」
「俺たち4人で、どうやって?」
「さぎょうようワーカーがはんにゅうされていたはずだ。アレをつかってテロリストをたおす」
「桃太郎、操縦できるのか?」
「AIアシストがあるからしょしんしゃでもかんたんにそうじゅうできる」
「わかった、じゃあ作業用ワーカーの駐機場にいこう。
桃太郎、場所はわかっているのか?」
「だいたいわかる。こっちだ」
彼らは無重力状態の中央管理室からでて、通路をたどり、回転シャフトエレベーターに乗り込んでコロニーの地面まで下り、近くに乗り捨てていた電動スクーターに乗り込んだ。
「行くぞ!」
「「おう!」」
桃太郎がここだとにらんだ倉庫の中に新品の作業用ワーカーがちょうど4機並んでいた。
「乗り込むぞ」
「どうやって乗り込めばいいんだ?」
「あしのわきにはしごがついてるだろ、それをつたってよじのぼればコックピットだ。
コックピットにはいるにはどこかにスイッチとかレバーがあるはずだからさがしてみろ」
「分かった」「さすがは桃太郎」「俺たちのボスはやっぱ違う」
作業用ワーカーの胸辺りまで梯子を上って行き、この辺りだろうと目星をつけたところを詳しく見たら、思った通りレバーがあった。レバーには『左:開、右:閉』と書かれていたのだが学校に通っていない桃太郎に漢字は読めなかった。
それでも勘でレバーを捻ったら、作業用ワーカーの胸の部分が一部開いた。
「おーい、ここにレバーがあったぞ」
「「みつけた」」
桃太郎は開いたハッチの中に入って行ったところ、シートが1つとモニター、計器類、ボタン類が並んだコックピットだった。
桃太郎はシートに座って周囲を見回したが、コックピット内のボタンや計器に書かれた『漢字』が読めなかった。
この時桃太郎は『少年革命家』の限界を思い知った。
「学校に行っとけばよかった」
ひょっとして、これがこの問題作のテーマだったのか?
桃太郎はコックピット内で途方に暮れていたら、モニターが明るくなり、周囲の状況を映し出した。そして合成音声で、
『作業用ワーカーWW2にようこそ。
パスワードを音声入力してください』
「わかるわけないだろ」
『「わかるわけないだろ」をパスワードとして登録しました。パスワードを忘れた時のために秘密の質問を設定します。
あなたの大好きな食べ物は?』
「きびだんご」
『これで秘密の質問の設定は終わりました。お疲れ様です』
そう言い残してモニターは暗くなってしまった。
「おい、おきろ!」
モニターが明るくなって『はい』と返事が返ってきた。
「テロリストがコロニーにしんにゅうしてはかいかつどうをおこなっている。
テロリストをたおす」
『テロリストにも人権があります。むやみにたおすことはできません』
「もしコロニーのがいへきがテロリストによってはかいされたらコロニーのぜんいんがしぬんだぞ!」
『もしそうであったとしても、テロリストにも人権がある以上たおすことはできません。話し合いで解決を図るのが最善の手段です』
外部の音がコックピット内にも流れてくる。今のは爆発音だ。
「グズグズしてたらみんなしんでしまうんだぞ。はやくうごけ!」
コックピットの中をめったやたらと叩いていたら、AIが悲鳴のような声を上げた。
『それ以上、コックピット内で不適切な行動をとった場合、当ワーカーは動作不良を起こします』
「ならいうことを聞け!」
『了解しました』
作業用ワーカーは何とか桃太郎の指示に従って爆発音のする方向に移動を開始した。
子分たちの乗る3機の作業用ワーカーも桃太郎の作業用ワーカーに続いた。
そこからは大乱戦が続き、最終的に満身創痍に成りながらも桃太郎たち4機の作業用ワーカーでテロ組織のアーマードソルジャーを殲滅ができた。
しかし、駆け付けた警備ロボットたちによって桃太郎たち4人は包囲されて、結局全員逮捕されてしまった。
12人には簡易裁判で刑が言い渡され、桃太郎は懲役12年を宣告された。
そして12年後。
桃太郎が出所して前山さん夫婦が住んでいたアパートに帰ったところ、アパートの住人は前山さんたちではなかった。
その時桃太郎の顔が大写しにされたが、ニヒルに笑っているだけだった。
そしてエンドロールが流れ始めた。
これで終わったの? 内容がなかった割に終わるのも早すぎないか?
早く終わっていいんだけど。
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