第251話 真・27階層ゲートキーパー
当たり前だが目の前のスイッチをじーっとにらんでいても何の変化もなかった。
仕方ないので、7個目から12個目までの並び、青、黄、緑、赤、紫、白の順にスイッチを押してやることにした。
まずは青。
押し込んだ位置で止まっている青板に右手の人差し指を当てて力を入れてみた。
そしたらもう一段階押し込めてしまった。
ただ、これが正解なのかどうかは不明だ。
そこから順に黄、緑、赤、紫、白のスイッチを押し込んだところ6つのスイッチが全部台の上からへこんだ位置で止まってしまった。
うまくいったような気がするのだが、依然として何の変化も起きない。
この前の石像みたいのが並んでいたらそれっぽいのだが、台が1つあるだけでは何にもならない。
どうすればいいんだよー。
「フィオナ、どう思う?」
右肩に止まったフィオナに聞いたらフィオナがニッコリとほほ笑んだ。
癒されたのはいいのだが、フィオナのニッコリにはそれ以上の効果はなく部屋の中は何の変化もなかった。
「タマちゃんはどう思う?」
リュックの中のタマちゃんに聞いたところ、
「
確かに。
振り返ってみたら、俺が扉を押し開いたときのまま扉は半開きのままで、そこから見える通路は何の変化も見えない。
それでも何かが変わっているかもしれないと思って部屋から通路に出たところ、通路に面した12個の扉は俺が扉を開けた時と変わった様子はなく開いたままだ。
そのかわり、通路の先の階段部屋の扉が閉まっているように見える。俺はその部屋を出た時、扉を閉めた覚えはない。
何か変化はあるのか?
念のためディテクター×2を発動してみたが、反応はなかった。
ということは100メートほど先の扉はモンスター由来で閉まった可能性がないわけではないが、あの扉は外側に押し開いた扉なので内側からモンスターが閉めたとは考えにくい。おそらく何か別の理由があるのではないか?
さっそく確認だ。
俺は通路を駆けて扉の前に立った。転移でもよかったことに扉の前に立ってから気付いてしまった。
まあ最初から転移で部屋の中に入ってしまえば風情がないからなー。
閉まっていた扉に手をかけて思いっきり押し開いたら、扉の先は最初の部屋ではなかった。
そこは縦横100メートル四方。天井の高さは50メートルはありそうな広大な石室だった。
そして、その奥の方に黒というより緑がかったモンスターが鎮座していた。
「タマちゃんの予想通りだ」
そうタマちゃんをほめたら、右肩の上のフィオナが「エッヘン」と、確かに言った。
知らぬ間にレベルアップでもしたのかな?
転移で飛び込まなくてよかったというか、これだけ内部が変化していたら俺の覚えていた階段下の部屋とは言い難いので転移できなかっただろうからいずれにせよ同じ結果か。
どうして転移できないのか? とか考えずに済んでラッキーだったと思っておこう。
それはそれとして、目の前で鎮座するモンスターの背の高さというか大きさはこの前のドラゴンの1.5倍はある。そして、こいつにはトゲトゲの頭を付けた長い首が3つ付いていた。
どのトゲトゲ頭もこの前のドラゴン並みの大きさがある。
こいつの3つの頭に付いた合計6個の赤目が一斉に俺を見た。
イベントが先に進んだことはありがたいのだが、こいつは相当ヤバそうだ。
ブレスの3連撃もありそうだし、こいつにすれば天井はそれほど高くはないが、それでも天井近くまで舞い上がってしまえば、俺の
そのかわり、ここはかなり広いので、部屋の中で転移が使えるから回避は容易だ。
ヒドラが仕掛けてくる前にスピードとストレングスを意識して発動。これで俺の準備は完了。
まずは小手調べでスリープをヒドラに向けて発動した。
さすがにスリープは効かなかったようで、ヒドラは俺を睨んでいる。
次にスローを発動してみたが、効いているのか効いていないのか俺では区別できなかった。
俺が小手調べしていたら、ヒドラは3本の首をもたげた。
そしてその口がゆっくり開いた。口の中が光っている。
来る! そう思った時にはヒドラは俺に向けてブレスを吐いていた。
こいつはこの前のドラゴンよりかなり素早い。
ヤバそうに白く輝く3本のブレスが俺に迫る中、俺はヒドラの足元のすぐ後に転移してクロちゃんを抜き放ちヒドラの右足の足首の腱に切りつけた。
クロちゃんはヒドラのウロコを断ち切って肉まで食い込んだものの固すぎて振り切れず、足首に食い込んだまま抜けなくなってしまった。
それでもその一撃には効果はあったようで、ヒドラは絶叫し傷んだ足を上げ、そのまま翼をはためかせて飛び上がった。
そこ結果、ヒドラの足首に食い込んでしまったクロちゃんを両手で引き抜こうとしていた俺まで持ち上げられてしまった。
俺はクロちゃんから手を放して着地し、腰のシロを右手に持ったものの、ヒドラは天井近くまで舞い上がっていてシロも届かない。
仕方ないのでシロはベルトに戻してストーンバレットをヒドラに向けて連射してやった。
下から質量を持った石つぶてを撃ち上げた関係で、ストーンバレットはあまり威力はないようでヒドラには全くダメージを与えていない。
ファイヤーアローに切り替えようかと思った矢先ヒドラは上からブレスを吐き出した。
氷の壁も上からの攻撃には役に立たないので防御は止め、部屋の四角のひとつに転移した。
そして、そこからファイヤーアローをヒドラに向けて連射してやった。
ヒドラまでかなりの距離があるせいか、ヒドラの防御力が高いせいなのか、ファイヤーアローは何の効果も上げていないようだ。それでも連射していたのだが、ヒドラはまたブレスを吐いてきた。
遠距離攻撃ではらちが明きそうもないので、今度はヒドラの後方に転移して、腰のシロを右手に持ってヒドラの真ん中の首の付け根を見上げてそこに向けて転移した。
転移した先は空中だったので落下しながら思いっきりシロを振ってやったらヒドラの真ん中の首の付け根がパックりと消えてなくなりそこから赤黒い血が噴き出てきた。
2メートルほど落下したところで俺はまた部屋の角に転移した。
これまでやったことはなかったのだが、運動エネルギーを持ったまま転移したようで、実害はなかったが転移先で不意の衝撃を受けた。
先ほどの俺の攻撃で首は断ち切れなかったが首の骨は断ち切ったようでヒドラの真ん中の首はブランブランだ。
同じ攻撃をあと2回すればこいつをたおせる。
ヒドラが部屋の中をぐるりと見渡して部屋の角に立つ俺を見つけて、残ったふたつの首をもたげてまたブレスの体勢に入った。
俺にはまるっとお見通しだ!
俺は先ほどと同じようにヒドラの後方に転移して今度はヒドラの右の首の根元近くの宙に転移した。
そこでシロを振って右の首の根元を大きくえぐってやったのだが、先ほどえぐり取ったはずの真ん中の首の根元が盛り上がって元に戻りそうになっていた。
そこまで見たところで俺は部屋の反対側に転移して着地した。
「しぶとい」
「
「確かにそうだな。
もう一度飛んで俺が左側の首の根元をえぐり取ってやるから、タマちゃんは残りの2本の首を刈ってくれ。
しかし、タマちゃんはどうやってアイツの首を刈るんだ?」
「モンスターの足に食い込んだままのクロちゃんを先に収納してしまい、それをわたしが振るいます」
「なるほど。じゃあその作戦で行くか」
「はい」
「ヒドラがこっちを向いたら、さっきみたいに反対側に転移してそこから作戦開始だ」
「了解」
ヒドラがこっちを向いた。真ん中の首は生き返ったようで2本の首が俺を睨んで口を開けようとしている。
同じ攻撃を繰り返すだけで何の捻りもないところは戦い慣れしていないのか?
それともここぞという時を狙って敢えて同じ行動をとっているのか? これで決めてやるから、おまえにはそんな余裕なんてないぞ。
「タマちゃん、行くぞ!」
「はい!」
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