第239話 シュレア屋敷5、引っ越し
シュレア屋敷の料理人の名まえを決めて机の椅子にふんぞり返って座っていたらミアたちがやってきた。
「イチロー、おはよう」「「マスター、おはようございます」」
「みんなおはよう。
まずはシュレアの屋敷でミアの食事を作るヴァイスだ」
「ヴァイスという名まえを先ほどマスターから付けていただきました」
ヴァイスが作られた時から何日か経っているはずだから、ミアたちはもう名まえ以外のことは知ってたんだろうしな。
俺はタマちゃんの入ったスポーツバッグを左手で持って、
「それじゃあ、行くか。俺の手というか腕を適当に持ってくれ」と、5人に言ったところ、俺の空いていた右手にミアが手をつないで、残りの4人がそれぞれ俺の腕を持った。
フィオナが肩に乗っかていることを確かめて転移。
玄関ロビーに転移したら作業員たちが工具箱のようなものを足元に置いて立っていた。
「ご苦労さん」
「おはようございます。食糧庫は完成しています」
「了解。先に4人を館に返そう」
「マスター、まだ作業が発生するかもしれないのでわたしと隣の自動人形はここに残るようアインに言われています」
「そうか。了解。
じゃあ、ふたりはここに残して、こっちのふたりを館に届けてくる」
作業員2名が俺の手を取ったところで新館の書斎に転移し、ふたりを残してとんぼ返りでシュレア屋敷に戻った。
俺が玄関ホールに現れたら、残った作業員のひとりが、
「マスター、荷物の中にカーテンとカーテン用資材が入っていたと思います。出していただければカーテンを取り付けていきます」
「了解。
タマちゃん、分かるならここに出してやってくれ」
「アインから聞いていますから大丈夫です」
そう言ってタマちゃんが大き目の箱をいくつも玄関ホールに積み上げた。
「随分あるな」
これだけの屋敷だものカーテンの量も相当なものなのだろう。
「それではマスター、わたしとヴァイスは拭き掃除をします。
タマちゃんさん、荷物の中に掃除道具があると思いますからお願いします」とソフィア。
「了解」
それなりに大きな木箱がホールに現れた。ホウキやモップ、雑巾にバケツとかがはいっているんだろう。
「さっそくだが、大きなものから置いておこう。
タマちゃん。ミアたちのベッドとかが荷物にあるならそれからだ」
「はい。あと大きなものは3人の机、食堂のテーブル、居間のソファー。そういったものになります」
「となるとまずはミアの部屋と勉強部屋だな。
ミア、2階の部屋のなかで好きな部屋を3人の部屋にしてその隣を勉強部屋にしてしまおう」
「分かった」
ミアが先頭に立って階段を上って行き、南向きで階段から一番近い部屋を使うことにしたようだ。
俺は部屋の中に入ってタマちゃん入りのスポーツバッグを床に置いた。
どこかの変人が屋敷の中をのぞいている可能性がないではないが、タマちゃんがスポーツバッグの中から出てきても差し支えないだろう。
「タマちゃん、バッグの中から出てきていいぞ」
スポーツバッグの中からタマちゃんシュルルと這い出て床の上にその雄姿を現した。
スポーツバッグは俺が何も言わなくてもタマちゃんが収納してくれた。
「タマちゃんのすがたはじめてみた。
かわいー」
そうだろう、そうだろう。
「イチロー。タマちゃんさわる、いい?」
「もちろんいいけど、タマちゃんに聞いてから触ってみな」
「タマちゃん。さわる、いい?」
「もちろん構わない」
ミアがタマちゃんに手を伸ばしてサラサラ、スリスリした後少し押したりして感触を楽しんだようだ。
「#B&*、&&=#」
白銀のヘルメットを被っていなかったのでミアの言葉は分からなかったが、すべすべ、ぷにぷにとか言ったんだろう。
「じゃあ、そろそろミアはベッドの位置とかを決めて、決めたらどんどんタマちゃんに教えてやってくれ。タマちゃんが荷物を置いていくから」
「わかった。
タマちゃん、まどのちかくにベッドをおいて」
「了解」
窓際に偽足が伸びてそこにベッドが現れた。
伸びていったのは太くもない偽足なんだがその先の宙にいきなりベッドが現れる。偽足伸ばす必要ないんじゃないか? 本人の自由だけど。
ベッドの後は寝具がベッドの上に現れ、それからミアの指示通り室内に3人分の荷物が並べられた。
最後に大き目の木の箱が数個置かれた。ミアたちの衣装と勉強道具、細々した私物が入っているという。
「ミアたちはベッドを作ったり、荷物を整理しておいてくれ。
俺とタマちゃんで勉強部屋から順に荷物を置いてくる」
俺自身はタマちゃんの荷物の内容について分からないので後はタマちゃんにお任せだ。
隣の勉強部屋にタマちゃんと入って行きそこでタマちゃんが勉強机と椅子を3つ置いた。
「主、ソフィアやそのほかの自動人形たちの荷物も預かっていますから、隣の部屋に置いておきましょうか?」
「そうだな」
隣の部屋に移動してタマちゃんは木箱を並べていった。
「主、次は1階に下りて居間に行きます」
俺が付いて歩く必要もないみたいだ。
それでもタマちゃんの後についていき、テーブルと椅子と食器棚を食堂に置いた。
「次は食料です」
「となると、すぐに食糧庫に入れた方がいいよな。
ヴァイスを呼ぼう。
おーい、ヴァイス、食料を出すから食糧庫の中に片付けてくれー!」
厨房から大声でヴァイスを呼んだらしばらくしてヴァイスとソフィアがやってきた。
「手を洗って少し遅くなりました。片付け作業はふたりで行ないます」
俺だったらおそらく手を洗わなかったな。
扉を開けてその先の食糧庫の扉をヴァイスが開けたら、食糧庫の内壁は見た目ステンレスで、棚などが取り付けられている。
これならかなりの量の食料が貯えられる。
基本的に消費するのはミアひとりだけなので食糧庫一杯食料を貯め込んでおけば一生モノになりそうな気もしないでもない。少なくとも学校を卒業するまでに足りなくなることはなさそうだ。
俺が感心して食糧庫の内側を見ていたら、俺に構わずタマちゃんは厨房の台の上に食料を置いていき、それをヴァイスとソフィアがふたりがかりで食糧庫の中に置いていく。
食糧庫への食糧の搬入整理は15分ほどかかった。
その後、食器棚、厨房機材、食器類をタマちゃんが台の上に並べていった。
「主、厨房関係が終わったので、後はその他の雑貨類になります」
「納戸が近くにあったからそこに置いておこう。扉を開けておけばソフィアたちは気付くだろう」
タマちゃんが納戸の中へ雑貨が入っているという箱を何個か置いて作業終了。
館から物品を運んできたが出してみたら相当な量だった。タマちゃん運送がなかったら不可能だった。
みんなが真面目に作業してくれている中、俺は居間のソファーに座って一休み。マスター特権というやつだな。
タマちゃんは俺の足元でスライムスライムした格好をしている。やはり段ボール箱がないと四角く寛げないようだ。
フィオナはめずらしくタマちゃんの上に座っている。
時計を見たら時刻は8時45分。だいぶ時間が経っているかと思っていたが思っていたほどではなかった。
屋敷の中が片付いたら、屋敷の周辺をみんなして散歩して土地勘を養うとしよう。
ミアにこの辺りの土地勘があればいいのだが、小僧、小僧していた頃のミアじゃこの辺りでは完全に浮いてしまうから土地勘ないだろーな。
天気もいいようだしハイキング気分でいいだろう。この辺り住宅街なので近くにある程度の商店街があってもおかしくないがどうだろう。
9時ごろまでそうやってふんぞり返っていたらミアたちがやってきた。
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