第227話 ボール遊びとミアの学校のこと
俺の不手際から、夢の遊園地は夢に終わってしまい、あいにくの雨にもたたられてしまった。ハンバーガーショップで休憩したあと結局新館に戻ることにした。
背に腹は代えられなかったのでハンバーガーショップの庇の下で転移だ。
庇の下は防犯カメラで録画中だったかもしれないが、事件事故が起きない限り再生されるはずもないし、大抵1週間くらいで上書きされて消えてしまう。ハズ。
なので問題ない。
「3人とも俺の手を取ってくれ。俺の書斎に転移する」
3人が俺の手を取ったところでフィオナが俺の肩に止まっていることを確かめ、俺は防災無線の『迷い人のおたずね』をバックに3人を連れて新館の俺の書斎に転移した。
書斎の窓から見える空は快晴だった。
「昼まで時間があるから、動きやすい服に着替えて体育館に集合だ」
「「はい」」
3人が返事をして書斎から出ていった。
着替えに10分くらいかかるだろうと思い俺はリュックを背負いフィオナを肩に止めたままうちの隣街のデパート近くに転移した。
もちろん雨が降ってはいたがデパートの壁のおかげで濡れずに出入り口に駆け込むことができた。
デパートの中ほどにあるエスカレーターまで駆けて行った俺はエスカレーターを駆け上って行きスポーツ用品売り場にたどり着いた。
そこでドッジボール2つとボール用空気入れを買い、階段の踊り場まで駆けていき、そこで屋敷の体育館に転移した。時間にして9分弱。
いい線いったと思ったのだがミアたちは服を着替えて体育館の真ん中あたりに立っていた。
体育館の入り口にリュックを置いてドッジボールの入った箱と空気入れを取り出し、ジャケットを脱いでリュックの上に畳んで置いた。
箱から取り出したドッジボールは空気が入っていないので、空気入れの針をボールに突っ込みヒコヒコ音をさせ空気を入れながら、
「昼まで4人でボールで遊ぼう」
ミアはきょとんとした顔をしているし、カリンとレンカは無表情だ。
まあ、やっていれば自ずと楽しくなるだろう。小学校の体育の授業の延長だ。
ドッジボール2つがパンパンに膨れたところで、空気入れをリュックの横に置いて、
「このボールを投げて受ける練習だ。
最初は5メートルほど離れて投げてみるか。
ミアたちは5メートルってわかるか?」
「わかる」「「分かります」」
ほう。そっちの方もちゃんと教育されているようで何より。
「最初はミアとカリン、俺とレンカで始めよう。
5メートル離れて向き合ってボールを投げ合って受け合うんだぞ」
「分かった」「「はい」」
俺はカリンにボールを渡した。
「それじゃあレンカ行くぞ」
「はい」
俺は俺のペアのレンカに向かって、ボールを投げた。もちろん山なりの緩いボールだ。
そのボールをレンカは受け損なって後ろにこぼしてしまった。
自動人形だからというのも変だが、簡単にレンカがボールを受けるものと思っていたがそうでなかったことに逆に驚いた。
「マスター、済みませんでした」そう言ってレンカが謝った。
「レンカ、気にするな。そしたら今度はレンカが俺に向けてそのボールを投げてくれ」
隣のミアとカリンもレンカと同じようなもので、カリンの投げたボールをミアが弾いてしまい前の方に転がってしまった。
「むずかしい」と、ミアが呟いているのが聞こえた。
最初からうまくいくとそれはそれで面白くないからな。
「マスター、いきます」そう言ってレンカがボールを俺に放って寄こした。さっきの俺と同じように山なりの緩いボールだ。
もちろん俺はそのボールをうまくキャッチした。
数回ボールを投げ合っていたら、カリンとレンカはボールを弾くことはなくなった。その代りミアはボールを弾いてばかりだった。
ボールが飛んでくるのに合わせて手を前に出しているのだが、手先で受けようとして弾いているように見える。
「イチロー、ボールうけられない」ミアが俺に訴えてきた。
「ボールをよく見て受ければいいだけだが、ミアは最初から手を伸ばしてるから動きが硬くなるんだ。肘をまげて胸で受けるようにしたらうまくいくかもしれないぞ」
「わかった」
ミアがその場で肘を曲げた姿勢を取った。チョット違うような気もしないではないが、まあいいだろう。
「カリンはもう少しミアに近づいて。そうだなー、3メートルくらいからミアに向かってゆっくり投げてみろ」
「はい」
カリンがミアに近寄ってそこからゆっくり山なりのボールをミアに放った。
今度はミアはちゃんとボールをキャッチできた。
「今の要領だ。慣れたら少しずつ距離を取って投げてみろ」
「「はい」」
「それじゃあレンカ、俺たちはもう少し離れてもう少し速いボールでいくぞ」
「はい」
10メートルくらい離れてレンカにちょっとだけ速い球を投げてやった。
レンカは危なげなくボールをキャッチして、俺が投げたのと同じくらいの速さのボールを放って寄こした。
「レンカ、なかなかいいぞ」
「はい」
それから俺はレンカとドッジボールでキャッチボールをしながら、隣でカリンとボールを投げ合っているミアに将来の希望を聞くことにした。
「ミア、これから先ミアは何かに成りたいとか希望はあるか?」
「うーん、わからない」
「そうか。
いま一緒にいるのはカリンとレンカのふたりだけだけど寂しくはないか?」
「ざびしくない」
「そうか。
そのうち、ミアをシュレアに戻して学校に通わせようかと思っているんだが、学校に通うのはどうだ?」
「カリンとレンカといっしょがいい」
「そのときはふたりをつけてやる。それにソフィアも一緒だ。いまやってる勉強も続けないといけないからな」
「それならがっこういきたい」
「わかった。俺自身あの街の学校のことはよく分からないから調べてからになるがそのつもりでいてくれていいからな」
「わかった」
「ここからだと俺が送り迎えするしかないから向こうに家を買うんだろうな。学校に寮だか寄宿舎があるかもしれないが家があった方が便利だろう」
「イチロー、いえをかうだいじょうぶ?」
「だいじょうぶ。あそこのお金は今のところあまり持っていないが、売れるものは沢山持っているから。ミアはお金のことは気にしないでいい」
「イチローはどうしてやさしい?」
「俺の独断でミアをこっちに連れてきた以上、ミアを立派な大人にする責任があるからだ」
「イチロー、ありがとう。わたしイチローのためがんばる」
「じゃあ期待してるよ」
「はい」
それから、相手を変えながら30分ほどボール投げをしたところでアインが体育館に現れた。
「マスター、昼食の準備ができています」
「分かった。
ボール投げはここまでだ。
ボールはここに置いておくから自由に使ってくれ
ミアは汗をかいているだろうから着替えてこいよ。」
「「はい」」
空気入れはリュックから出してカリンに渡しておいた。
空気入れの説明はしなかったが、俺がボールに空気を入れているところをカリンとレンカも見ていたし、使えないということはないだろう。
「じゃあ解散」
3人が体育館から出ていき、俺とアインも体育館を出た。
食堂に向かう間にアインに向かって、ミアたちは昼からも自由時間にすることと、俺が昼食を終えたらソフィアを書斎に寄こすよう言っておいた。
俺が背負っていたタマちゃん入りのリュックはアインが書斎に運んでくれるというのでアインに渡し、俺はアインと別れて直接食堂に向かった。
今日の昼食はクリームシチューで他にポテトサラダとご飯だった。
なんだか、和洋折衷っぽくなってきた。
コメの補充をした方がいいから忘れないようにしないとな。
着替え終わったミアが食堂に入ってきたところですぐに「「いただきます」」
シチューに入っている肉は鶏肉かと思っていたのだが、色も少し赤いしちょっと違うような気がしないでもない。
「16号。シチューの中に入っている肉は何だかわかるか?」
「それは
「そうなんだ」
鶏肉に近いと言えば近いのだが何かが違う。うーん。鶏肉よりも少し歯ごたえがあって味がある? そんな感じだ。
カモに近いカモ?
シチュー自体もドラゴンのダシが出ているのか濃厚な感じがする。そして体が温まる気がする。
今現在鑑定指輪をつけていない関係ではっきりしたことは分からないのだが、なにがしかの効用があるに違いない。
何であれプラスの効用だろうから、鶴田たちを招待する時までに鑑定すればいいだろう。
ドラゴンも部位によって味も口当たりも違ってくるのだろから焼肉にしてみたくなった。
ドラゴンの肉は数十トン単位で保存しているのだろうからいろいろな食べ方を堪能しても俺が寿命で死ぬまでに食べ尽くすこともないだろう。
なお、俺たちの午前中の行動を誰かが監視していたのか、今日の食後のデザートはフローズンシェイクだった。
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