第214話 事件の後。掲示板12


 事件現場からうちに帰った俺は着替えてちゃっちゃと宿題を済ませた。

 いちおう間違いがないか見直していたら、1階から母さん。

『お父さんの帰りは遅いから、用意はできてるから先に風呂に入ってちょうだい』

 俺は着替えを持って一階に下り軽く体を洗って湯舟に浸かった。

 最近はいつもフィオナが風呂についきて、大抵は俺の頭の上に座っている。


「ふー、生き返る」

 なにも死んでたわけではないが、生き返るんだよなー。


 俺が独り言をいつものように呟いたら頭の上で、『ふー、ふふぃふゅふ』ってかわいい声がした。

 フィオナがしゃべった!


 妖精女王のフェアは俺の頭に直接語りかけてきたのだが、フィオナは声で話ができそうだ。

 なんだか、生き返った上に元気モリモリだ。

 フィオナの声には絶対癒し効果がある。

 この次なんかのはずみでレベルアップだか進化すればちゃんと言葉が話せるようになるはず。

 もし母さんが知ってしまったら、俺が学校に行ってる間にフィオナに自分のことを呼ばせようとするはずだから、俺のことを「イチロー」と呼ぶまでは母さんには絶対秘密だ。

 夕飯を食べたらフィオナと特訓だ。



 風呂から上がって部屋に戻ってニヤニヤしてたら、しばらくして夕食になった。

 今日の夕食はトンカツだった。フィオナにはハチミツ。

 厚いトンカツに大盛りのキャベツの千切りとトマト。それにカボチャの味噌汁とナスビの塩もみ、そして白飯。

 ナスビの塩もみもご飯にあうんだよねー。

 今日もまた食べ過ぎそうだ。


「いただきまーす」つい語尾が伸びてしまった。

 トンカツソースをトンカツとキャベツにかけてまず端からトンカツをひと切れ口に運ぶ。

 サクサク熱々。うんまい!


 食事中、学校の話なんかしてたら、コンビニ強盗の話になった。

「コンビニ強盗が無事逮捕されたって、さっきニュースでやってたわよ。さいたま高校の校舎がちょっとだけ映ってた」

「そうなんだ」

「高ランクの冒険者が警察の犯人逮捕に協力したそうよ。

 冒険者ってすごいのね」

「その冒険者について何かニュースで言ってた?」

「そうねえ、詳しいことは何も言ってなかったと思う」

 あの警察の偉い人は約束を守ってくれたようだ。

「たまたま通りかかった遊び人の金さんってわけじゃないんでしょうけどね」

「何それ?」

「今再放送でやってる時代劇の話」

「母さんそんなの趣味なんだ」

「時代劇って何だか見てると癖になる面白さがあるのよ。

 そういえば一郎はSランクって言ってたけど、高ランクというのはSランクなんかよりずっと上のランクのことなんでしょ?」

 今の俺はSSランクなのでずっとではないかもしれないがSランクより上である。

「そうなんじゃないかな」

「そうだよね。そうじゃないと一郎でもコンビニ強盗捕まえられちゃうものね」

 これについては何とも答えられなかった。


 なんだか、秘密が増えていくのだがそのうち決壊したらエライことになりそうだ。決壊する前に自分からちゃんと話をした方がいいような。


 食事を終えてフィオナの手と顔をウェットティッシュで拭いてやり、食器を流しに運んで肩に止まったフィオナを連れて2階の自室に戻った。


 さーて、これからフィオナと特訓だ。

 犬の訓練ならご褒美に何か食べさせるのだろうが、フィオナは今現在ハチミツでお腹いっぱいだろうし、ご褒美としてなにが適当か有効なのかちょっとわからない。

 俺が頭を撫でてやれば少しくらい喜ぶかもしれないから当面それでやってみよう。


「フィオナ、とりあえず自分のふかふかベッドの上で寛いでくれるか?」

 フィオナは一度うなずいて、自分のふかふかベッドに飛んでいきその上で羽を畳んで横になった。

 これでは寝てしまいそうな体勢だがまあいいだろう。

「フィオナ、言葉の練習するぞ。いいか?」

 ベッドの上で横になっているフィオナが起き上がってうなずいた。

 これなら、勉強できる雰囲気だ。

「まずはイチローだ。『イチロー』って言ってみてくれ」

「ふぃふぃふょー」

 おー! 聞きようによっては一郎に聞こえるじゃないか。

「偉いぞ、フィオナ。もう一度『イチロー』」

「ふふぃふょー」

 おー、さっきより良くなった。ような?

「じゃあ、もう一回『イチロー』」

「ふぃふぃふょー」

 ん? 最初と同じに聞こえるが。

「『イチロー』」

「ふふぃふょー」


 千里の道も一歩から。

 とにかくこういうものは根気が大事。

 赤ちゃんだって生まれて最初に言葉をしゃべれるようになるには何カ月か分からないが何カ月もかかるはず。


 10分ほど訓練したところで、フィオナがあくびをした。

 教育は大事だがスパルタはよくない。今日はこれくらいにしておこう。

「今日はここまで。最後にもう1回だけ『イチロー』」

「ふふぃふょー」

 それだけ言ってフィオナは目をつむり、バタンとふかふかベッドに横になってしまった。

 なかなか道は遠いようだ。

 だが、千里の道へとにかく踏み出せたことは大きい。

 そういえば、やかたのミアはあんなに言葉が上手になっている。ソフィアは一体どういった教育をしているんだろうか?



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


1.名無し


サイタマダンジョンCランク冒険者用情報スレその2(54)。マナーは大事です。くれくれもお忘れなきよう。


次スレは>>970を踏んだ方、お願いします。


20XX年6月11日 22:15


2.名無し


>>1.スレたてありがとう。クレクレ決して忘れません


20XX年6月11日 22:17


 ……


426.名無し


今日のコンビニ強盗の件、どう思う?


20XX年6月16日 19:32


427.名無し


>>426.どう思うとは?


20XX年6月16日 19:33


428.名無し


>>427.高ランクの冒険者が犯人逮捕に協力したってニュースにあっただろ?その時その冒険者について何もなかったろ?


20XX年6月16日 19:34


429.名無し


>>428.それが何かおかしいのか?


20XX年6月16日 19:35



430.名無し


>>429.普通なら冒険者のランクとか名まえとか出ると思わないか?出なかったということは出さなかった。または出せなかったということだろ?


20XX年6月16日 19:36


431.名無し


そういえばサイタマダンジョンでの高ランク冒険者と言ったら『はやて』が移動した今、フィギュア男だけだよな?


20XX年6月16日 19:36


432.名無し


>>431.コンビニ強盗事件のあったコンビニの近くにさいたま高校がある。フィギュア男は高校生で文字通り高ランク冒険者。事件があった時間はちょうどさいたま高校の下校時間だった


20XX年6月16日 19:38


433.名無し


>>432.ということは


20XX年6月16日 19:39


434.名無し


>>433.ということなのだろう。ニュースに名まえが出なかったのは未成年者だから。つじつま合うだろ?


20XX年6月16日 19:41


435.名無し


なーる


20XX年6月16日 19:42


436.名無し


なーる。それはそうとして、相手は未成年者だ。そっとしておいてやろうぜ


20XX年6月16日 19:42


437.名無し


それはそうだ


20XX年6月16日 19:43


428.名無し


異議ナーシ


20XX年6月16日 19:43


……


435.名無し


おとついだったか、フィギュア男のコスプレしてた高校生っぽい冒険者見たぞ


20XX年6月16日 20:10


436.名無し


>>435.俺も見た。痛すぎて目を背けてしまった


20XX年6月16日 20:11


437.名無し


フィギュア男のコスプレはフィギュアだけだからまだいいが、俺は赤い稲妻のコスプレ女を見たぞ。正確には赤い稲妻をまねたわけではないかもしれないが、太目の体型に横に伸びた赤い縦縞。あれはない


20XX年6月16日 20:13


438.名無し


>>437.それは太め体型女性への蔑視発言だ!


20XX年6月16日 20:15


439.名無し


>>438.余裕のない防具を着てちゃだめだろ?見た目もよろしくないがそれ以上に危険だ。


20XX年6月16日 20:15


440.名無し


>>439.それは言えてる

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