第202話 中村結菜3
木曜日に学校から帰ってスマホでダンジョン庁のホームページを見たら、河村さんのメールにあった通りSSランクの欄が新設されて、16歳のところに数字が1つ付いていた。デヘヘヘ。
そっちはいいけど、個人的な要望で恐縮だが、SSランクの冒険者証とネックストラップについてもう少し世間に周知させていただきたい。俺は誰に言ってるんだ?
その週はそれくらいで終わり週末を迎えた。
土日の2日間で館での食事は朝食和食、昼食洋食、朝食洋食、昼食和食だった。
その間俺は28階層でモンスター狩をして、核の数で92個手に入れた。
全部アインに渡している。これだけあれば十分だと言われてしまった。これから先は換金していこう。
手に入れたアイテムは、
銀の宝箱から、
万能ポーション
レビテートの魔法盤
スローの魔法盤
スリープの魔法盤
暗殺者のナイフ。刃以外は黒錆びで覆われていて目立ちにくい。不意打ちが成功すると即死が発動するらしいが、そもそも不意打ちが成功すればたいていの敵は即死するから微妙だ。
切り裂きナイフ。これは、切り裂きに特化したナイフなのだが、試しにモンスターの死骸でためしたところ骨も簡単に切断できた。これは核の回収用に最適なので結菜にやろう。
ただ結菜に直接渡してしまうと、武器預かり所での登録時、答える必要などないのだがナイフの出所などを聞かれて素人の結菜では面倒になるかもしれない。
結菜と一緒に武器預かり所に行って譲渡手続きした方がいいだろう。
それにベズレ金貨が見つかった。これって、鑑定では分からなかったのでただの推測だが、何か売る以外に他の使い道があるのかも?
1つだけ手に入れた金の宝箱から銀色の『祈りの指輪』が手に入った。鑑定したところ呪い無効の効果があるという。これで幽霊関係に出くわして手足が腐って落ちることも、それ以外のヤバい呪いも受け無くなる。一撃死回避ではなかったがありがたいアイテムだ。
ミアについては片言ではあるが日本語で意思の疎通ができるようになってきた。
幼児なら言葉を覚えるのは速くて当たり前なのかもしれないが、ミアも相当頭がいいようだ。この分なら夏までにはかなり日本語が使えるようになっているような気がする。
新館の工事は土台の工事が終わって柱などが立ち上がっていた。
こうなってくるとすごく大きく見える。
運河の方もだいぶ進捗している。
アインに聞いたら、あと45日から50日で完成するという話だった。
工事については問題ないようだ。
そして、週が明けて俺の高校では中間試験が始まった。
月、火の2日間。
水曜日から採点された答案が返ってきた。
今回の試験も簡単だったので、全科目満点だった。
学年を探せば俺の他にも全科目満点がいるかもしれないが、少なくとも同率1位確実だ。
実社会はこれほど簡単ではないのだろうが、冒険者以外でもそこそこやっていけるだろう。
それから月末までに2度28階層でモンスター狩をしたわけだが182個の核を手に入れて、それについては換金した。
ひとつ8000万円で買い取ってもらい、総買い取り額は145億6000万円となった。
累計買い取り額は224億9523万7000円+145億6000万円=370億5523万7000円となった。
核は専用個室で買い取ってもらったわけだが、ゲートキーパー並みの核がゴロゴロ出てきたので係の人は目をむいていた。
係の人も、このところご無沙汰だったのだが、顔を見せたかと思ったらこれだ。とか思ったんだろうな。
金の宝箱は見つからなかったが、万能ポーションとベズレ金貨をかなりの数手に入れた。
手に入れたアイテムは今まで通り、魔法盤が数枚ずつで新しいものは見つからなかった。
なんどか幽霊に遭遇したが、何気に『祈りの指輪』の呪い無効が役立ったと思う。
月末。この日は秋ヶ瀬ウォリアーズの面々と1階層に潜った。午前中にクロ板(魔法盤)のオークションが行なわれたはずだ。
この日は20個の核を手に入れて、4人で割ってひとり2万3000円となった。
累計買い取り額が370億5523万7000円+2万3000円=370億5526万円となった。やっと端数がなくなった。
いつものハンバーガーショップでの話で、斉藤さんに結菜が冒険者になることを話そうかと思ったけれど、斉藤さんに気を使わせても悪いと思って黙っておいた。
その代り、すっかり忘れていたレモンの木のことを話しておいた。
当然のごとく驚かれてしまったのだが、その先のことは話さないでおいた。
その日、俺がハンバーガーショップから帰ってきて服を着替えていたら結菜からスマホに電話がかかってきた。
『講習終わって冒険者になった』
「おめでとう。武器はまだ買っていないんだろ?」
『武器は買ってないけど防具は今日講習の帰りに買った』
「核の抜き取り用のナイフは余分に持ってるのがあるからそれをお前にやるよ」
『ほんと、ありがとう』
「武器預かり所で結菜の名まえで登録しないといけないから、一緒に武器預かり所に行ってそこで手続きすればいいだろう」
『意外と面倒なんだね』
「いちおう刃物だからな」
『とにかく分かった』
「そうだな」
俺が電話している間にタマちゃんは段ボール箱に入って四角く伸びていた。お留守番だったフィオナは俺の頭の周りをうれしそうに飛び回っていた。
こういうところがかわいいんだよな。
結菜からの電話を切ったら、ダンジョン管理庁の河村さんからメールが来ていた。
内容は魔法封入板のオークションが午前中に無事終了したということと、来月中旬までには魔法封入板の買い取り価格が正式に決まるとの連絡だった。
オークションでの価格が最低価格ってことはないだろうから、正式買い取り価格は幾分か暫定価格より高くなるだろう。
またお金持ちになってしまう。
自分が怖い。
そして翌週の日曜日。
結菜との約束の日だ。
「行ってきまーす」
『行ってらっしゃい』
準備を整え約束の8時半の5分前に玄関を出たら、家の前に防具姿にリュックを背負った結菜が立っていた。
もちろん今日も荷物持ちとして俺のリュックの中にはタマちゃんが入っている。
結菜が身に着けた防刃ジャケットは明るいグレーでブルーのラインが要所に入っていた。白に近いグレーなので汚れは目立つし、防刃ジャケットは特殊なものなのでクリーニング代も高いのだが、個人の好みだ。
内側のケブラー部分を外せるものもあるが結菜の防刃ジャケットがどういったものかは分からない。
女子の場合センターの更衣室で着替える人が大多数のようだが、結菜は違うようだ。俺に合わせてくれているのかもしれないが。
時間前にいるとは珍しい。
「おはよう、一郎」
「おはよう。
それでどうやって行く?」
「それはバスに決まってるじゃない。
一郎はどうやってセンターまで行ってるの?」
「いろいろ。最初のころは歩いたり、走ったり」
「荷物持って?」
「そりゃそうだろ」
「何をしようが一郎の勝手だけど、今日はバスで行くでしょ?」
「ああ」
ふたりそろって一番近くのバス停まで歩いていき、やってきたダンジョンセンター行きのバスに乗り込んだ。
そこから乗り込んだのは俺と結菜のふたりだけだったが、バスの中は結構込んでいて座れなかった。
道が混んでなければ15分ほどで到着するはずなのでどうってことはない。
「すごく混んでるよー。途中で降りる人少なそうだから座れないよー」
とか言う人が隣に立っていました。
結局20分ほどバスに揺られて、ダンジョンセンターに到着した。
ほかの乗客と一緒にバスからぞろぞろ下りた。
俺を張り込んでいるメディア関係の輩のことをすっかり失念していたが、バスから降りた俺は何事もなくそのままダンジョンセンターの改札を抜けて玄関ホールの中に入った。
「それじゃあ、まずは武器屋だな」
「うん」
俺が先に立ってエスカレーターで2階に上がり武器屋に。
武器屋はちょうど開店したところだった。
[あとがき]
宣伝:『幼馴染(おさななじみ)』(全11話17000字)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054921948888
作者ただひとつの恋愛小説。幼馴染に思い入れのある方はぜひ。
最初はラブコメっぽいのを目指して書き始めたんですが、途中で路線を変更して悲恋モノにしてしまいました。そういったものが苦手な方はご注意ください。
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