第201話 中村結菜2。掲示板11


 ミアとおいしく昼食のスパゲティを食べた。

 食後のデザートはプリンアラモードだった。

 館のシェフの腕前が恐ろしい。

 スパゲティでお腹いっぱいだったが、プリンアラモードは完食できてしまった。

 お腹パンパンだ。

 ミアも出されたものは完食したようだ。偉いぞ。


「「ごちそうさま」」最後も揃ってごちそうさまが言えた。

 16号から渡された濡れた布巾、おしぼりでフィオナの手と顔を拭いてやりミアと揃って食堂をでた。

 その時ミアを見たら、手足は細いけどお腹だけぷっくり膨れていた。

 おそらくミアはその日暮らしだったろうから、ちゃんと時間で食事できることに幸せを感じているんじゃないだろうか。

 最初のころの厳しい顔つきはもう全然なくなって穏やかな顔つきだ。しかも今はちゃんとした女の子の服装なので立派なお嬢さま、マドマーゼルだかマドモアゼルだ。

 親代わりの俺としてはうれしい限り。

 勉強の合間にカリンとレンカと3人で運動になるような遊びでもしていればこれから先無駄に太ることはないだろう。


 

 言葉の意味はまだ理解できないだろうが、励ましたって気持ちが伝わればいいと思った俺は、ミアと並んで階段を上っていったあと、別れ際にミアに向かって「勉強頑張れよ。いつかきっと役に立つから」と、日本語で声をかけた。

 そしたらミアが「はい」と答えた。

 かなり難しい日本語だったはずだが、意味が分かったのだろうか? まさかな。



 書斎に戻ったところ、壁に立てかけていたメイスが見えないと思ったら、棚の上に置かれたメイス用に作られたらしい台に載っていた。

 アインが用意してくれたんだろうが実に気が利く。

 さしずめアインはこの館の家令だな。


 時計を見たら午後1時。ここでの仕事は終わっているので俺はアインを呼んで次にここに来るのは6日後の朝になると告げてうちの玄関の前に転移した。



 うちに帰ると父さんは留守にしているようで母さんだけがうちにいた。

「一郎今日は早かったのね」

「うん。やろうと思っていたことはできたから」



 2階に上がって防具から普段着に着替えた俺は、下に下りていき食堂でテーブルの椅子に座ってお茶飲んでいた母さんの前に座った。

「なに一郎?」

「実は今日結菜にあったんだよ。そしたら結菜テニス止めるって言ってた」

「あら、あんなに打ち込んでたのに」

「学校のクラブで面白くないことが続いてたんだって」

「そうなんだ」

「それで免許取って冒険者になるって言ってた」

 いちおうお隣の娘さんの近況を母さんに報告しておいた。


「それなら一郎が結菜ちゃんの先輩になるわけだから手伝えることがあるなら手伝ってあげなさい」

「うん。そういうふうには言っておいた。

 結菜が結菜のおじさんおばさんにそのことをいつ言うのか分からないから、母さんはそのことをおばさんにというか誰にも話さないようにね」

「大丈夫。母さん口だけは堅いから。

 一郎がSランクの冒険者だってことも父さん以外には言ってないからね」

 父さんには言ったんだ。

「それで父さんはなんて言ってた?」

「なんでだか分からないんだけれど『それはよかった』って笑ってた」

 それはよかった。父さんはSランクがどういうものか知ってたんだろうな。真面目な顔してそんなこと言われたら笑うよな。


 今の俺はもうSSランクなんだけど、もしそれを母さん経由で父さんが聞いたら大爆笑だな。

 そう言えば、あのSSランクの冒険者証、偽物っぽいの何とかならないかなー。あれを父さんに見せたら笑われそうだよ。


「一郎、羊羹あるけど食べる?」

「今お腹いっぱいだからいい」

「そう。お昼何食べたの?」

「今日はスパゲティ」

「大盛り?」

「そんなところ」

 自分の館で料理人に食事を作ってもらっていると言ったら、今度は母さんも笑うと思う。



 その日の夜。

 夕食を終えて部屋に戻って机の椅子に座ってスマホでweb小説を読んでいたら、電話がかかってきた。結菜からだ。

「なに?」

『お父さんとお母さんにテニス止めて冒険者の資格取るって話した』

「おじさんたちなんて言ってた?」

『自分で考えたことならそれでいいんじゃないかって』

「なら良かったじゃないか」

『うん。

 それで冒険者の資格試験の予約しておいた』

「いつになった?」

『5月の末の土日』

「となると6月の最初の日曜がデビューだな」

『うん』

「そしたら、その日は一緒に1階層に入ろうか」

『ありがと。その時はよろしくね』

「ああ。

 待ち合わせの場所とか時間はもう少し後で決めればいいだろ?」

『時間はそうだけど、待ち合わせ場所はあんたのうちの前かうちの前でいいじゃない』

「そうでもないんだが、ならそれでもいいや。

 じゃあ、8時半におれんちの門の前でいいな?」

『8時半だと遅くない?』

「武器屋が開くのが9時だから。試験に通った当日に武器を買うなら待ち合わせを早くしてもいいぞ」

『一郎に見てもらって買いたいから、当日には買わない。

 6月最初の日曜、えーと、6月7日の朝8時半に一郎のうちの門の前』

「それでいいな」

『じゃあね』


 今の電話からして、友達とどうこうではなく完全にソロだ。

 女子高生のソロとなるとモンスターはたぶん問題ないとおもうけど対人トラブルがきついだろうなー。

 数回嫌な思いをすればソロは諦めるかも知れない。

 その先どうする?

 秋ヶ瀬ウォリアーズに頼んで結菜をメンバーにしてもらう?

 それはないな。

 いくら斉藤さんと結菜が同窓生だからと言っても、学校は違うわけだしお互い気を使うことになるだろうからちょっと厳しいよな。

 俺には直接関係ない話ではあるが、悩ましい。


 なんであれ初日を見てもいないのにあれこれ考えても仕方ない。

 結菜はもう何年もラケットを振り回していたわけだから意外と冒険者の才能あるかもしれないし。まっ、結局は成るように成るだろ。



 週が明けた。

 今週俺の学校は金曜日まで5日間。土日は連休だ。

 連休が明ければ中間試験。試験については準備しなくてもどうとでもなる。はず。


 その日。学校から帰ってスマホを見たら河村さんからメールが届いていた。

 内容は今週の木曜にダンジョン庁のホームページの年齢・ランク別人数表が4月末時点のものに更新されるとのことだった。

 また目立ってしまうなー。イヤー、コマッタ、コマッタ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


1.名無し


サイタマダンジョンCランク冒険者用情報スレその2(46)。マナー厳守!誹謗中傷絶対反対!


次スレは>>970を踏んだ人


 ……


316.名無し


Sランク16歳ゼロ、SSランク16歳1名。笑った


20XX年5月14日 19:32


317.名無し


>>316.われも笑った。そうはいうものの相手はソロでゲートキーパー撃破できるバケモノだし


20XX年5月14日 19:33


318.名無し


フィギュア男、バケモノ説


20XX年5月14日 19:34


319.名無し


ここのところフィギュア男センター内でも見てないな。


20XX年5月14日 19:35


320.名無し


>>319.一時期メディアが追っててそれ以来じゃないか?それでもちゃんと稼げてるわけだ


20XX年5月14日 19:36


321.名無し


25階層のダンジョンキーパーを撃破してから撃破報告はないということは26階層で手こずってるってことだよな?


20XX年5月14日 19:38


322.名無し


>>322.そうだろうなー。27階層への階段位置が分からないのか、階段前のゲートキーパーがとんでもなく強いのか。俺たちには関係ないがな


20XX年5月14日 19:40


323.名無し


>>321.いや、考えてみろ。26階層のゲートキーパーもすでに撃破済み、それどころか27、28階層も撃破してたらどうなると思う?ほかの攻略チームのことを攻略チームって呼べなくなるぞ。本人たちもやる気なくなるだろ?その辺りを考慮してダンジョン庁が公表していないんじゃないか?


20XX年5月14日 19:42


324.名無し


>>323.確かに一理あるな。数カ月で100億の壁を越えてSSランク。なにがしかの大物を複数たおした可能性を裏付けてる


20XX年5月14日 19:43


325.名無し


>>323.324.なるほど。可能性としてはありえる。何であろうとフィギュア男は異常だってことだ


20XX年5月14日 19:44


326.名無し


フィギュア男バケモノ説に1票!


20XX年5月14日 19:45


327.名無し


われも1票!


20XX年5月14日 19:46


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 学校から帰ってダンジョン庁のホームページを見たらびっくりした。

 長谷川くん、SSランクに成ってた。

 Sランクの10億から3カ月か4カ月で100億のSSランク。

 何がどうなって90億円も儲けたのか想像すらできないけれど、ダンジョン庁が間違えるはずないから事実は事実なんだよね。

 しかも1年の学年末試験全科目満点。来週の中間試験もおそらく。

 わたしなんかがそんな生徒の担任してていいのかしら?

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