第171話 ゴールデンウィーク11、坑道の奥
[まえがき]
3月25日夜、不評だった傍点「●」を「*」に変更しました。自己主張が少し減ったと思います。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ドラゴンをたおした俺はスマホでドラゴンの写真を撮った後、リュックの中のタマちゃんにドラゴンをそのまま収納してくれるように頼み、ドラゴンから核を抜き出せるようなら、抜き出してもらうよう頼んだ。
一度リュックの中でタマちゃんが震えるのを背中で感じたと思ったら、リュックの中からタマちゃんが這い出て、すぐにドラゴンの頭に取りついた。
ドラゴンの頭はあっという間にタマちゃんの中に消えていった。
次にタマちゃんはドラゴンの胴体を膜で覆うよう広がり、膜が小さくなったと思ったらタマちゃんの姿が元に戻り、ドラゴンは消えていた。
そのあとタマちゃんは俺の足元まで這ってきてボウリングの球ほどもある真っ黒な核を残して俺の体を這い上ってリュックに収まった。
とにかく核はゲットしてミッションクリアなのだが、大きすぎてどう考えても
俺は再度タマちゃんにその核を預け空洞内を見回した。
フィオナは相変わらず俺の頭の周りをグルグル回っている。
ドラゴンがいなくなった空洞はさっぱりしたかと思ったのだが、ドラゴンがいたその先にキャップランプの明かりをキラキラ反射する
フィオナはこのことが言いたかったのか?
ドラゴンは光物が好きだといううわさだけは聞いたことがあったのだが、実際これほどの量の光物を集めているとは知らなかった。
ひとつ手に持ってみたところ金?のゴブレットだった。脚の裏側になにか分からないが模様も入っている。
戦利品としては悪くない。
こういった工芸品をドラゴンが集めていたということは人に類するものがこの27階層世界に存在しているということではないだろうか?
とはいえ、ここはダンジョンの中なのだから、ダンジョンが生んだアイテムの可能性を否定できないのも事実。
いずれにせよお宝には違いない。
「タマちゃん、そこのガラクタみたいに見える小山を全部収納してくれるかい?」
リュックの中から偽足が数本伸びて、光物の小山はあっという間にタマちゃんの中に消えていった。
どの程度タマちゃんの体内の謎空間に物を蓄えられるのか見当もつかないけど、さっきはドラゴンを丸飲みしたし今回も光物の小山も丸飲みした。
とりあえず際限なしと思っていて良さそうだ。
小山のあった先は空洞が狭まってまた坑道が奥につながっていた。
せっかくここまできたので、奥がどうなっているのか確かめようと思ったのだが、アインを外に待たせたままなので迎えに行くことにした。
なぜか頭の周りをまだ飛んでいたフィオナに肩に止まるように言っておとなしくさせ、アインの待つ洞窟の入り口に転移した。
「アイン、中にいた敵性生物はたおした。
それで、そいつの体の中からこれを見つけたんだ。
タマちゃん、ドラゴンの核を出してくれるか?」
リュックの中からタマちゃんの偽足が地面に伸びてそこにボウリングの球が置かれた。
「これ、ちょっと大きいと思うんだが、これで間に合うか?」
『マスター。
申し訳ありませんが大きすぎです。
この半分の直径で十分です』
ボウリングの球の半分の直径と言うことは大きさ的にはソフトボールだな。
ゲートキーパーの核で何とかなりそうだけど、ゲートキーパーもういないしなー。
サイタマダンジョンでなければゲートキーパーは健在だからそのうちトウキョウダンジョンに回ってみるか。
そこらのゲートキーパーなら武器を持っていかなくてもどうとでもなるし。
核についてはここではどうしようもかったが、せっかくだから坑道の奥を探検してみるか。
「アイン。せっかく坑道の中に入って敵性生物をたおしたんだから坑道の奥を調べようと思う。
アインをひとりここに残しておくのは心配だから、一緒に中に入ろう」
『マスター、心配していただきありがとうございます』
「それじゃあ行くぞ」
『はい』
タマちゃんに再度ボウリングの球を預けて、アインが俺の手を取ったところで先ほどの空洞に転移した。
いままで肩に止まっていたフィオナがまた飛び上がって俺の頭上を回り始めた。
なんだ?
よくわからないなー。
「アインは俺の真後ろをついてきてくれ」
『はい』
ディテクター×2。
ディテクターには何も反応はなかった。
ドラゴンが陣取ってた場所だ。これは予想通りではある。
俺はアインを連れて坑道の奥に向かって歩いていった。
フィオナは俺を先導するように俺の前を飛んでいる。
しばらく歩いたところで時計を見たら午後3時だった。
あと2時間近くはこの坑道内を探検できる。
坑道の広さは少しずつ狭くなってきていたが、それでもかなり広くドラゴンが十分行き来できるくらいの広さがあった。
30分ほどフィオナの後を追うような形で坑道内を歩いていたのだが、フィオナも疲れたらしく俺の肩に戻ってきた。
それからさらに30分ほど歩いていたら100メートルほど先に壁らしいものが見えてきた。
結局坑道内には何もなかったようだ。
そろそろ帰ろうかと思っていたら、またフィオナが肩から飛びあがりまっすぐ正面に向かって飛んでいった。
俺はフィオナを追って壁まで歩いていったところ、正面の壁は岩壁ではなく石組みされた壁だった。
そしてその壁の真ん中にカギ穴があった。
これのことをフィオナは言いたくて飛んでたのか?
カギ穴をよく見ると、26階層のカギ穴そっくりだ。
あの金色のカギはタマちゃんに預かってもらっていたので、タマちゃんに排出してもらった。
見た感じこのカギ穴にもぴったり入りそうだ。
試してみたらピッタリ入り、回してみたらちゃんと回ってしまった。
そして後ろを見たら、アインの後ろに黒い渦ができていた。
こう来たか。
ということは、あのドラゴンはゲートキーパーだったということか?
それともゲートキーパーを撃破してあそこに居座っていたのか?
ゲートキーパーだったとすると、これまでのゲートキーパーと比べ段違いに強かったし核の大きさも段違いだった。
その辺を考えると、ゲートキーパーを撃破してあそこに居座っていた可能性が大きいか。
いや、アインを作るために前の主人がゲートキーパーを撃破してそのあとゲートキーパー不在をいいことにあのドラゴンが居座った可能性もある。
前の主人も坑道の奥のカギ穴は見つけたのだろうが、金の鍵は持っていなかったのだろうから何もできなかったのだろう。
ダンジョンができたのは16年前だから、その推理もちょっとおかしいか。
正確にはダンジョンの出入り口ができたのが16年前で、ここは少なくとも600年は存在しているわけだからダンジョンそのものは、はるか昔から存在していた可能性もある。
何が何だかわからなくなってきた。
真相を知ったところで何の意味もないし、今さらどうでもいいか。
時計を見たら午後4時。
カギ穴から金色のカギを抜いても26階層の時と同じように渦は消えずに残っていた。
抜き取ったカギはなくさないようタマちゃんに預けておいた。
26階層の渦と目の前の渦が同じなら、こっち側から抜けるとダンジョンセンター、向う側から抜けるとおそらく新しい階層だ。
ダンジョンセンターにアインを連れて行くわけにはいかないので、一度アインは館に戻そう。
「アイン。俺はこの渦の中に入ってみるけれどお前は館に戻ってくれ。
今から連れて行く」
『はい』
フィオナが俺の肩に止まり、アインが俺の手を取ったところで自動人形たちが待機している部屋の前に転移した。
「アイン。俺はあの渦を調べる。
明日の7時ごろここに戻ってくるから朝食の用意を頼む。
おっと、その前に今の時刻を教えてくれるか?」
『現在時刻は16:02分です』
腕時計を見たら4時3分だった。
不思議なことではあるが地球の1時間とここの1時間、元の主人の1時間はほとんど同じ長さだったようだ。
「それじゃあ」
『マスター、お気をつけて』
俺たちはアインを残して渦のある坑道の奥に転移した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます