第154話 2年生。要塞補強。掲示板10
春休みが明けて今日は新学年初日。
校門前まで来ると『祝・さいたま高校入学式』という看板が置いてあった。
今日は入学式だったな。
まだ時間は早かったが校庭の掲示板の前に人だかりができていた。
クラス分けが発表されていたんだった。
俺の学校では2年生から理系と文系に分かれる。
俺はどっちに進むか悩んだのだが、文系にしておいた。
なぜかというと大学に入った後、理系の方が必修科目が多いと聞いたからだ。
別に大学生活をエンジョイしようとか考えてはいないのだが、何となく。
それで俺は文系の最初のクラス、5組となった。
なぜか鶴田たち哲学3人組もそろって同じクラスだった。
担任は1年の時と同じ吉田先生で、このままクラス替えも担任替えもなく持ち上がって3年になる。
俺たち2年生は始業式もなく普通に6時限授業だ。
だからどうってことはないけどな。
1限目の授業中教室の窓から校庭を眺めていたら、初々しいとはとても思えない新入生たちが保護者と一緒に入学式が行われる講堂に向かって歩いていく。
3年生の一部が駆り出されて彼らを誘導している。
3年生の1限は自習か何かなのだろう。
俺たちの入学式の時も3年生代表が歓迎の言葉なるものを長ったらしくしゃべっていたから3年生は大変だ。
1限と2限の間の休憩で、鶴田たち3人が俺のところにやってきて春休み中一緒に1階層を巡ってやったことの礼を言ってくれた。
この3人、こういうところもしっかりしている。
「気にしないでくれ」
何事もなく6時限目も終わって掃除当番でもなかった俺は家路を急ぐ格好ですぐに教室を飛び出た。
学校帰りに27階層の農園を見に行こうと思ったのだが、タマちゃんを連れて行った方が何かと便利なので適当なところでうちの玄関前に転移した。
玄関に駆け込んで、
「ただいまー」
『お帰りなさい』
階段を駆け上がって部屋に入り、急いで普段着に着替えた。
タマちゃんはスポーツバッグに入ってもらった。ここで気づいたのだが、半地下要塞内にこのまま転移して、向うにサンダルを置いておけば好きなときに直行できる。
向こうの床の掃除は必要になるが掃除用具とスリッパをホームセンターで揃えておけばいいだけなので今日中にやってしまおう。
俺は、ちょっと出かけてくると母さんにことわって玄関を出て、タマちゃん入りのスポーツバッグを片手にホームセンターに転移した。
ホウキとモップとサンダル、それに掃除用のバケツ、さらに目に付いた20リットル入りのポリタンクを2つカートに入れて精算した。
ポリタンクは大きいし、ホウキとモップは長いので邪魔だった。
階段横のエレベーターがちょうどやってきたのでそれに乗って駐車場のある屋上階に行き、そこで移動しながら荷物をスポーツバッグの中のタマちゃんに収納してもらった。
カートを屋上のカート置き場に返して、そのまま27階層の農園の前に転移した。
畑は予想通り大繁盛?
リンゴの木にもミカンの木にも立派な実が生っていた。
今日もしっかりイチゴを摘んで、リンゴとミカンもそれなりの数摘んでタマちゃんに預けた。
その後俺は半地下要塞に入って、買ったサンダルからタグを外して靴から履き替えた。
先ほど買いそろえた掃除道具をタマちゃんから出してもらって、簡単に部屋の中をホウキで掃いた後モップ掛けをした。
最後にサンダルから靴に履き替えて、桟橋からバケツで汲んだ水を漏斗をつけた20リットルのポリタンク2つ満杯にしてタマちゃんにしまってもらった。
バケツと漏斗は学校帰りなどでタマちゃんを連れてきていない時も使うことがありそうなので地下要塞の部屋の入口に置いてからうちに転移した。
これでいつでも好きな時に半地下要塞に跳んでいける。
その日の夜。
ダンジョン管理庁の河村さんからメールがあり、26階層のゲートキーパー撃破の件については当分発表を見合わせると書いてあった。
俺以外の冒険者には26階層の渦は関係ない話だものな。
まあ、26階層で迷子になって遭難しないでくれればいいだけだ。
翌日(4/7火)
学校から帰ったらハンモックが届いていた。
母さんがこれ何って聞いたので、ハンモックと答えたんだけど、うちではハンモックなんか吊れないから不思議に思ったようだ。
「ハンモックって?」
「ダンジョンの中に生えてる木の間に吊って一休みしようかと思ってるんだ」
「ふーん。そうなんだ」
俺は2階に駆けあがり部屋に戻って荷物を下ろして制服から普段着に着替え、ハンモックの入った箱とタマちゃん入りのスポーツバッグを持って半地下要塞内に転移した。
部屋の中は窓も扉もないのに砂埃もなくきれいなものだった。
それでもテーブル用の台ブキン程度は必要だろうから、そのうち準備しよう。
サンダルを履いて階段を上り畑を見たら、イチゴがまた増えていた。
食べきれないほどのイチゴが生っているのだが、どれも傷んではいない。
ダンジョン仕様なのか新世界仕様なのかわからないが不思議なものだ。
リンゴの木と梨の木の間にハンモックを吊るそうと考えたのだが、幹の太さは十分そうだけど枝がかなり低いのでちょっと無理そうだ。
半地下要塞の奥の柱と柱の間に吊るす分には問題なさそうなので戻って吊ってみた。
うーん。
見た目だけはいいのだが、どうも柱を支えているのが釘だけなので俺の体重を横向きに支えると大事故が起きそうな気がした。
そういうことなので天井下に梁を渡して柱を補強することにした。
資材はすぐにタマちゃんに作ってもらい、タマちゃんに梁を支えてもらってテーブルの上に立って釘打ちしようとしたのだが、柱と天井の枠の接合部を見たところ釘を打ったはずなのに釘が見えなくなっていた。
その代りなのかどうかわからないが、柱と枠の木が融合しているように見える。
反対側の柱の頂部を見てみたが同じように釘は見えなくなって柱と枠木が融合していた。
ほかの部材も融合しているのではないかと思って調べてみたら、天井板にも床板にも継ぎ目がなくなって見た目は1枚板になっていた。
壁板も見たら1枚板だ。
さらにテーブルも椅子も部材同士が融合していた。不思議なことにテーブルも椅子も床とは融合していない。
ダンジョンだか新世界恐るべしなのか? タマちゃんの作った木材恐るべしなのか?
とにかく補強は必要なさそうだったので、テーブルと椅子を出口の方に移動してさっそくハンモックを試してみた。
運動神経には自信があったのですんなりハンモックに乗れると思ったのだが結構難しかった。
何度か床に落っこちた後ちゃんと乗れるようになった上、体を横にすることもできた。
ハンモックは実に快適だ。
そうやってしばらくハンモックに横になっていたのだが、宿題があったのを思い出し、ハンモックから下りて自分の部屋に戻った。
自室から直接行き来できるって実に便利だ。
俺の部屋が実質2倍になったようなものだ。
母さんがペットボトルの『
新学期最初の今週は土曜日まで授業がある。
木曜日、うちに帰ってスマホを見たらダンジョン管理庁の河村さんからメールが届いていた。
内容は、新たな冒険者ランクとしてSSランクとSSSランクが設けられたこと。
SSランクは累計買い取り額で100億越え。SSSランクは1000億越え。
特別なメリットはなく称号的なものとのことだった 。
俺がSSランクに相当するので、週明け後、サイタマダンジョン研修センターでいつでもSSランク冒険者証に切り替え更新できるという内容だった。
新ランク創設については、翌日正午にダンジョン管理庁のホームページで公式発表される予定とのこと。
金曜日。うちに帰ってダンジョン管理庁のホームページを見たらちゃんと新冒険者ランクについて発表されていた。
SSランクの冒険者証はプラチナ、SSSランクはブラックのラインが付きネックストラップもその色になる。
プラチナラインはホログラム処理がされて7色に輝くようだ。
残念ながらネックストラップはホログラム処理されていないようでDランクのネックストラップと見た目はそんなに変りない。
学校がない来週の土曜に切り替えだな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
1.名無し
サイタマダンジョンCランク冒険者用情報スレその2(43)。マナー厳守!
次スレは>>970を踏んだ人。ヨロ。
……
115.名無し
ダンジョン庁のいきなりの新ランク発表どう思う?
20XX年4月10日 20:18
116.名無し
>>115.1000億プレーヤーはないだろうが100億プレーヤーが近々誕生しそう、ないし誕生した。そういうことだろうな
20XX年4月10日 20:19
117.名無し
対象は誰だと思う?
20XX年4月10日 20:20
118.名無し
>>117.順当に考えて『はやて』のリーダーじゃないか?
20XX年4月10日 20:22
119.名無し
>>118.そうだろうな
20XX年4月10日 20:23
120.名無し
>>119.そうかなー?
20XX年4月10日 20:24
121.名無し
>>120.ほかに誰かいるのか?
20XX年4月10日 20:25
122.名無し
>>121.フィギュア男はどうだ?
20XX年4月10日 20:26
123.名無し
>>122.さすがにそれはないだろ。Sランクに上がってまだ3カ月だろ?
20XX年4月10日 20:28
124.名無し
さすがにそれはないか。
20XX年4月10日 20:29
125.名無し
来月ダンジョン庁のHPで全てわかるだろ?、16歳か17歳のSSランカーがいればフィギュア男確定だが、俺もそれだけはないと思うぞ
20XX年4月10日 20:31
126.名無し
>>125.それだけはない。ないんじゃないか?ないだろ?ないよな?
20XX年4月10日 20:31
127.名無し
>>126.しらん
……
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