第152話 大台突破。春休みの終わり


 河村さんを案内した翌日。


 普段着などもだいぶ古くなってきているので、午前中は買い物に出かけることにした。

 27階層?の畑が大成功だったので、今日の買い物の後は畑を拡張することにした。


 近くのスーパーの上の階でもそういったものを売っているのだが、ちょっと遠出して隣の駅前のデパート辺りで買い物することにした。

 デパートの開店は10時からなので、朝食をうちで食べてから時間があった。

 やることもなかったので、畑を見てくることにした。

 格好は普段着のまま。

 玄関でサンダルを履いて畑の前に転移した。

 

 昨日イチゴをだいぶ収穫してしまったのでだいぶ数が減ったはずなのだが、今日は同じくらい実がなっていた。

 イチゴは成長が早い分傷むのも速いのかと思ったのだが、全然そんなことはなかった。

 しかもイチゴの本体からつるのようなものが伸びて新しいイチゴの株が増えていた。

 これは嬉しい。


 イチゴに限らず昨日生っていた他の実も傷んだようなものはないようだ。

 これは嬉しい仕様だ。


 次に向かったのは半地下要塞の中だ。

 昨日作ったテーブルと椅子の接着剤も乾いたはず。

 当たり前だが昨日と見た目は変わらない椅子に座ってみた。

 しっかりした椅子だ。

 ちょっとだけ力を入れて腰を動かしてみたが何ともなかった。

 これなら大丈夫。


 安心してうちに帰り、そろそろ昨日の買い取り価格が更新されているかなと思ってスマホで確かめたところ、ちゃんとデータは更新されていた。


 盾と刀と宝箱で5738万円。


 クロ板の売却で132億7500万円、合計で133億3238万円が総買い取り額で、累計買い取り額は78億9254万7000円+133億3238万円=212億2492万7000円になっていた。

 一気に100億の大台をすっ飛ばして200億を超えてしまった。

 高校生長者番付というのがあれば、かなり上位は間違いない。


 これ以上お金を稼ぐ意味合いはあまりないのだが、もし稼ぐとするなら基本的にお金にはならない27階層ではなく26階層でクロ板だな。

 あと、先日の仕分けの手数料100万円が当座預金に振り込まれていた。こっちは当然累計買い取り額には入っていない。


 俺は服を買って昼は外で食べると言ってうちを出た。

 お金を渡すから持っていきなさいと母さんに言われたけれど、もちろん断った。

「ダンジョンってそんなに稼げるの?」

 とか言って驚く母さんに、

「稼いだ範囲で買い物するから大丈夫」と、答えておいた。

 隣の駅近くにあまり行くことはなかったので転移できるか心配だったのだが、試したらうまく転移できた。


 人も多かったのだが誰からも注目されていなかったようなので、結果オーライ。

 何食わぬ顔をしてデパート方面に歩いていき、中に入ってエスカレーターで上の階に上がっていった。


 男物売り場を回って、ズボン2つとシャツ2枚。それにシューズを1つ買った。

 意外と値段がする物だと驚いた。

 いままで親任せで服を揃えていたんだけれど結構負担だったんだろうな。


 服をそれなりの手間暇かけて買った俺は、デパートの紙の手提げ袋を持って上の階にある食堂街にいきファミリー食堂のショーケースの中をみてトンカツ定食が食べたくなったので、そのままファミリー食堂に入った。

 

「おひとりさまですか?」

 見ればわかるだろ! とかいう人がいるらしいが、向うはマニュアル通り仕事で聞いてるんだから。

「はい、ひとりです」と、ちゃんと、しかも明るく答えた。

「テーブル席でもカウンター席のどちらでもご案内出来ますが」

「じゃあテーブル席で」


 窓際の4人席に案内され、その場でトンカツ定食を頼んだ。


 それほど待たされることなくトンカツ定食が運ばれてきた。

 飲み物は最初に水が置かれていたがちゃんと定食にはお茶が付いていた。

 ただ、お茶は薄かった。


 トンカツの豚肉はそれほど厚くはなかったが、衣がサクサクでおいしかった。

 キャベツの千切りが細目の千切りで大盛り。トンカツのキャベツは細目の千切りに限る!

 キャベツとソースたっぷりのトンカツを一緒に食べると絶品だ。

 ご飯も進む。


 ごちそうさま。

 あっという間に完食してしまった。


 きっとリーズナブルな値段なのだろう。俺は満足して代金を払って店を出た。

 これで、用事は終わったのでうちに帰って着替えてからホームセンターにいって苗木の購入だ。



 うちに帰った俺は買ってきた荷物を置いて、防刃ジャケットの上下だけ着替え、タマちゃんをリュックに入れてホームセンターの階段の踊り場に転移した。


 今回も誰にも見とがめられなかったみたいだ。

 非日常の事柄が目の前で起きたとしてもたいていの人間は目の錯覚、思い過ごしと頭の中で辻褄合わせするのだろう。


 俺は1階に下りて、裏側の出入り口の先の園芸売り場に向かった。

 レモンはいいから今度はミカンかオレンジ、リンゴにブドウが欲しいと思っていたのだが、ミカンとリンゴはあったもののブドウはなかった。

 残念だ。

 そのうちネットで取り寄せてもいいしな。


 ミカンとリンゴの苗木を1本ずつ買った俺は、そのまま畑の横に転移した。


 畑では、朝つぼみだった花が今見たらちゃんと咲いていて、ハチが何匹も花にくっ付いていた。


 今日買ってきた苗木用にまずは畑づくりだ。

 梨と桃の時と同じようにスコップで土を耕して苗木を植えて、上からヤカンで池の水をたっぷりかけてやった。


 ミカンとリンゴも梨や桃と同じように成長してくれれば明日には実ができているだろうから空恐ろしくなるな。


 俺はイチゴを20個、トマトを10個ほど料理ばさみを使って摘んで、タマちゃんに預けた。

 ここなら学校帰りに寄って収穫してもいいな。


 一度うちに帰った俺はリュックの中でタマちゃんから手渡してもらって母さんにイチゴとトマトを渡しておいた。

「一郎、イチゴはいいけどトマトはもうそんなにいらないからね」

「いくらでも手に入るから、要る時は教えてくれればいいよ」

「なくなったらね」

「空のペットボトルないかな?」

「ゴミに出そうと思っていたから納戸の中にまとめておいてあるわよ?

 何かに使うの?」

「うん。

 おいしい湧水を見つけたから」

「飲んで大丈夫なの?」

「大丈夫。

 昨日の果物なんかより体にいいと思う」

「沸かして飲む分には問題ないでしょうから、試してみてもいいかな」

 そういえば沸かした後の治癒の水って治癒効果があるのか分かんないな。

 水を汲みに行ったついでに沸かして鑑定してやろう。


 納戸に行ったら空の2リットルのペットボトルが6本まとめて置いてあったのでそれをリュックに入れて「ちょっと出てくる」と断ってから玄関を出て池の前に転移した。

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