第146話 地下要塞


 タマちゃんの優秀さが光って土台の木材が穴にぴったりはまってしまった。

 次は柱だ。


 そこではたと困ってしまった。柱を立てつつ土台に釘打ちしたいのだが、手が足りない。

 それについてはタマちゃんに頼めば何とかなりそうだが、その後の天井のことを考えると足場なんかも必要になる。


 こうなったら半地下にしてしまうか?

 柱も土塀に沿って立てるから立てやすいし、天井部分の作業も楽だ。


 そうは言っても、建設現場は池が近いから水が湧いてくる可能性もある。

 試しにタマちゃんに穴の底からから1メートルほど30センチ径の穴を掘ってもらった。


 しばらく上から水が湧いてこないか見ていたが、幸い水は湧いてこなかった。

 ならば半地下要塞だ。


 一度土台の枠を外してからタマちゃんにもう1メートル掘り下げてもらった。


 穴の底はある程度湿ってはいたが、水が湧き出てくる感じではない。

 これならいける。


 俺はまず外に出るための階段を段差20センチ、奥行き30センチ、横幅90センチで作ってくれるようタマちゃんに頼んでみた。

 階段、20センチ、30センチ、90センチ、どれもタマちゃんは理解しているようであっという間に土で出来た階段ができてしまった。

 土の階段なので補強は必須だが建設作業中なら十分だろう。


 再度穴の底に木材を運び入れて土台の枠を作った。

 長方形の枠があるだけで何かでき上った感じがしてしまう。


 次に俺は長めの釘を2本とトンカチをタマちゃんに出してもらい、土台の角に2.7メートルの柱を立てた。

「タマちゃん、この柱が動かないように支えてくれ」

 土塀に柱を沿わせているのでひとりでも釘打ちできそうだったけれど、タマちゃんに頼んでみた。


 そしたら、タマちゃんから数本偽足が伸びて柱はしっかり動かなくなった。

 俺は柱の下端の少し上に斜めに釘を当ててトンカチで打ち付けた。

 釘は曲がることなく下の土台まで突き抜け食い込んだようだ。

 今度は横から釘を打ちつけて、柱は何とか固定できた。


 同じような感じで4隅に柱を立てて、残りの柱も立てて全部で10本の柱が立った。


 次は天井の枠組みだ。


 上に上がって枠用の材木を並べ、タマちゃんに動かないようしっかり持ってもらって斜め下から柱1本に2本ずつ釘を打っていった。


 まだ天井の枠は柱に固定されているだけで、枠としては固定されていない。

 なので、枠の4隅からこれも斜めに釘を打って固定した。


 ここまでやって、天井の枠組みの短い方の枠木が真ん中の柱1本と釘だけで支えられているのでは弱いと思い、補強することにした。

 もう4本2.7メートルの柱を作ってもらってその枠木の両端を支えるように下の土台から立てた。


 ここまでの作業で時間を見たら10時だった。

 緑茶のペットボトルをタマちゃんに出してもらって、ごくりと一口飲んだ。


 次は天井に横木を渡すことにした。厚さは6センチ、幅は12センチ、長さは294センチでタマちゃんに4本作ってもらった。


 その4本を順に天井枠の上に置いて両端から釘打ちし、次に内側の2本を釘打ちして梁にした。

 これでだいぶラシクなってきた。


 こうなってくると壁が欲しくなってくるな。せめて土塀は隠したい。

 あと床も欲しい。


 そろそろ最初の大木も無くなってきたころ合いだろうと思ってタマちゃんに聞いてみたら、まだ大丈夫のようだった。

 元の大木は、幹も太い枝もそれなりに曲がっていたのでまっすぐな部材はそれほど採れないと思うのだが、タマちゃんの体内は謎空間だからあの大木を原料になにがしかの加工を行なっているのだろう。

 木目がしっかりしているので集成材的につぎはぎしているのではなさそうだが、やっぱり謎だな。

 


 ということなので、材料がなくなったら適当な木を収納してそれを使ってくれとタマちゃんに言っておいた。


 次は床だ。

 12センチ角で長さ2.7メートルの材木を2本作ってもらって、土台の枠の内側に1間間隔で入れて斜め横から釘打ちした。

 厚さ2センチ、幅30センチ、長さ540センチの板を12枚作ってもらい、床になるように土台の上に並べていった。

 柱に当たる部分はすっぽりはまるよう俺がのこぎりで加工してやった。

 釘打ちもそうだが、のこ引きも武術の心得のおかげか、すんなりできた。


 床ができ上ったら見違えるようになった。

 次は天井だ。

 今度は厚さ1センチ、幅30センチ、長さ540センチの板を12枚作ってもらって天井の梁の上に並べていき釘打ちした。


 とうとう天井ができてしまった。


 時間を見たら11時。

 時間が経つのがやけに速い。


 昼までに壁板を打ち付けてしまおう。


 床から30センチ幅の板材を5枚並べて柱に釘付けしていった。

 外から見ると地面から30センチほど上まで届いている。

 天井まで1メートルちょっと間隔がある。

 窓枠はないが、窓代わりだ。


 天井の上にテント用帆布を張れば完成なのだが、ここまで作って屋根が帆布だと寂しい気がしてきた。

 よし、午後からは屋根づくりだ。


 午前中の作業はここまでにして、昼にすることにした。

 もちろんガスコンロにヤカンをのっけて湯を沸かし、緑茶を淹れてからおむすびを頬張った。


 温かいお茶はうまい!

 午後からの作戦を立てつつおむすびを食べお茶を飲む。


 ここだともしかすると雨が降るので、やはり屋根は三角形だ。


 垂木を組み合わせて3角形を作り屋根が落ちないように梁からつかを立てる。

 垂木に沿って板を張り、その上に瓦代わりの板を下から上に少し重なるようにして打ち付けていく。

 ちょっと釘が足りなくなりそうだが、足りなくなったら買ってくればいい。


 方針は決まった。


 コップの中のお茶を飲み干し、後片付けを終えた俺は午後からの作業を開始した。

 と言っても、主役はタマちゃんで、俺はタマちゃんに指示を出して部材を作ってもらいそれを釘で打ち付けるだけだ。

 天井と屋根の上に登らないといけないので最初の作業として2メートルほどの梯子を作った。

 タマちゃんに部材について細かい指示を出して出来上がった部材を釘で打つけていく。


 まずは屋根の一番上から庇に向けて取り付け屋根板を支える垂木たるきを取り付ける棟木むねき

 梁に立てた60センチほどのつかの上に棟木をのっけて釘でつかに固定する。


 天井枠の横木には垂木たるきがすっぽりはまる斜めの切り欠きをタマちゃんに作ってもらった。

 垂木を並べていき、垂木の真ん中にも梁から束を立て釘で固定した。

 これであとは横板を張ってその上から瓦代わりの板を下から張っていく。

 屋根の両側の瓦板は棟木の上で合わさるわけだが、雨が降るとして、合わせ目からはどうしても雨水が入ってしまう。

 タールか何かを塗っておけば水は防げると思うが、明日だな。


 そろそろ短めの釘が底をついてきたので、太めの釘も合わせてホームセンターに買いに行くことにした。


 ホームセンター△□はウィークデーなのに結構混んでいた。

 釘を買うだけなので、買い物かごに釘を入れ、レジに5分ほど並んで精算した。


 20分ほどで買い物を終えた俺は、現場に転移して作業を再開した。

 資材はタマちゃんが作り終わっていたので俺は板を張っていった。


 そこで思いついたのだが、せっかく買ったテント用の帆布を板の上に張ってその上から瓦板を張っていけば雨が降っても雨漏りしないはずだ。


 俺は帆布を屋根の上に広げて要所を釘打ちしてから、しっかり伸ばして垂木の上にも釘打ちした。


 見た目はちょっと変だがこんなものだろう。

 それから今日最後の作業の瓦板を張り始めた。


 時刻は4時半。

 俺の半地下要塞がほぼ完成した。

 5時には帰ると母さんに言っているのでそろそろ帰ろう。


 荷物を整理した俺はタマちゃんに入ってもらったリュックを背負い、フィオナを肩に乗せて専用個室に転移した。


 そこで思い出して、再度半地下要塞前に転移した俺はスマホで写真に撮っておいた。


 再度専用個室に転移した俺は武器類をあずけて、カードリーダーに冒険者証をタッチしてうちの玄関前に転移した。


 この3日間は、非常に有意義な3日間だった。

 タマちゃんがいなかったらこんなに簡単じゃなかったことは確かだ。

 タマちゃん、さまさまだ。

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